夏目の日常

連鎖

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二人の日常

饗宴①

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 煌々と部屋の全ての照明をつけ、
 夏目はお風呂から出た格好のまま、縁側の椅子に座っていた。

「ハアハア。ご。。ごめんなさいカイト。ごめんなさいぃいい。」
「見ていましたよ。ここから、ハッキリ見ていました。」

「挨拶よ。挨拶だったって。それ以外に何もないわ。ただの挨拶なのぉ!」
「ハッキリ見ていました。唇に。。。三秒以上、触れていたよね。」
「ガチャん。違う違うのよ。。浮気と違うって。違うのよ!」

 夏目は、いつもの黒縁メガネではなく真っ黒な目隠しをしていた。

 目隠しをされているため動けないのか、暖かい部屋の中にいても、
 立て付けの悪い窓から隙間風が入り、その場所では寒いはずなのに、
 部屋の明かりがついている縁側に座っていた。

 その場所は外から全てが見られているのに、
 夏目はそこから逃げようとせず、さっきの格好のまま椅子に座っていた。

 もちろん、さっき夏目が見上げた時と一緒で、
 その恥ずかしい姿を、今度は彼女が風呂場にいる男達から覗かれていた。

「へぇぇぇ。明るい海の家でもしていたよね。したぁああ。バチャン。」

 この男も何かをする時には見た目から入るのか、
 手に持った折檻用のバラ鞭を床に叩きつけて叫んでいた。

「そ。。それは知らないのぉ。本当よ。本当に、覚えていないのぉ。」

「バチャン。その時に追加で飲むなって言ったよね。言ったんだよ!
 ブン。バアアアァン。飲むなって言ったでしょおおぉお!」

 夏目がビールを飲んだ時の事を言っていると思うが、
 言われている本人も微かに覚えているだけなので、
 その微妙な反応が気に入らない男は、
 彼女の膝下辺りの高さしか無い、小さな机を思い切り鞭で叩いていた。

「ひゃぁああ。こ。。怖いの。。やめてって。カイト、もうやめてぇえ。」
「ゴッン。。。ゴンゴン。。」

「もし、もしよ。。もし、していたら謝るからァァァァ。
 だから、テーブルをもう叩かないでぇえ。ブルブル。こ。怖いのよぉ。」

「バチャン。。それで?」
「覚えていないけど、していたのなら謝るから。もう許して、も。。
 もう許して。ご。。。ごめんなさい。ごめんなさい、カイトォオぉ。」

 目隠しをさせられて責められているだけでも怖いのに、
 目の前にある机を鞭で叩いたらしく、顔のすぐ前を何かが通った風と、
 その後に破裂したような轟音が響いたのに怯えて、
 許してもらおうと、震えながら必死に謝っていた。

「その時は、十秒。十秒だよ夏目さん。し。。か。。も。。

 ブン。ばァッチャァアン。ブン。バチャァアアン。

 舌まで入れていたよねぇえ。
 挨拶と言っていいの?舌まで入れたのを、挨拶ってねぇえええ!」

 夏目が、これだけ謝っているのに許す気が少しも無いのか、
 答えはテーブルを叩く音らしく、その音だけが部屋に響いていた。

「ガタガタッン。ごっ、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」

 夏目も、あまりにも本気で怒っているカイトに驚いて、
 椅子から降りて、床に正座をして謝っていた。

 。。

 この状況になった理由を説明する為に少し前に戻そう。

「バタン。カイトぉおおお。ひ。ひどいのおぉお。うぅうう。ひどいのぉ。
 あ。。あの男がぁあ。あの変態、覗き男がぁあ。うぅううう。」

「。。。」

 夏目のプライドが原因で、受付前で恥ずかしい事をしてしまったが、
 それを許して慰めてくれるはずの海斗は、部屋にいなかった。

「ガチャ。カイトぉおおお。どこぉお、もお帰ろうよォ。ガチャ。
 もうイヤあぁあ。こんな旅館から、早くかえろおおぉお。」

 ついさっき海斗を見た縁側にもいないし、
 部屋にあるトイレか、お風呂にでもいると思って探してみたが、
 やっぱり彼は何処にもいなかった。

 なんど部屋の中を見渡しても、誰かがいる気配もしないので、

「かいとぉお。バン。どこ、どこにいるの?どこぉお?かえろうよぉお。」

 全裸だと言うのに窓に近づいて、
 お風呂の周りや、何処か部屋の外にいないか確認していたが、
 やっぱり、何処にもいないようなので、
 浴衣でも着て探しに行こうと、浴衣を探し始めると、

「ギッギギギッギィ。バタン。。ダダダダダ。」「えっ。。あ。。海斗?」
「捕まえたぁあ。」「えっ。。何よ。何をするの?」

 扉が突然開き、誰かが部屋に入ってきて、
 イタズラをする子供のように、背後から夏目の目を手で覆ってきた。

 夏目も、突然誰かに視線を塞がれて焦ってしまったが、
 相手の声を聞いて、誰が来たかわかったので優しく反論しようとすると、
 その口は、すぐに誰かに塞がれてしまい、

「ちゅううぅ。。」「う。。うググ。うっぐぐ。ゴクン。ゴボッ。」
「じゅぅう。」「ごく。ごくごく。ゴクン。ごくん。」

 その後に何かの液体が、口移しで流し込まれた。

 最初は得体の知れない物を入れられて嫌がっていたが、
 香しい匂いとさっきの声に安心して、注がれた液体を飲み干していた。

「ぎゅっ。。ぎゅうううう。ぎゅっぎゅ。」
「ゴホ。ゴホゴホ。海斗。ちょっと乱暴よ。ゴホっ。ゴホゴホ。」

「夏目さん。」
「えっ。海斗。ごっほ。。コレ。お酒よね。これってお酒でしょ?」

「ぎゅうううう。グイグイ。こっち来て。こっちだよ!」
「ちょっと見えない、見えないって。何をしているの?
 やめてよ。もぉお、これを取っていいでしょ?これだと見えない!」

 目の周りに布を巻かれて、周りが見えない事よりも、
 アルコール度数の高いお酒を、無理やり飲まされた事よりも、

「ギュ。ギュ。。夏目さん?。。君は、何をしているの?

 取っちゃダメに、決まっているでしょ!目隠しをとるなぁああ!
 あと、部屋で見ていたよ!ジックリ見ていたよ!僕は見ていた!

 君は、混浴で嬉しそうにしていたよねぇええ。ぼくは見たんだァあ!」

 もちろんそれ以上に、海斗が混浴に入っていた所を見て、
 その事に怒っている事に驚いていた。

「ご。。ごめんなさい。。ち。。。」
「ガダン。座れ。なつめぇええぇえ!グイグイ。グいいぃい。座れぇえ。」

「どしんぃん。いつぃ。やめてぇ。カイトぉおおお。」

「さあ、なつめぇええ。僕が苦しんでいた椅子に座って、
 君はどう思っているんだ!どう思うんだ!」

 目隠しをされたまま、縁側にある椅子に無理やり座らされ、
 どちらを向いていいか分からない夏目は、

「あ。。あれは、違うのよ。ねえ、カイト違うったら。アレは違うの!」

 誰がどちらにいるのかも分からず、
 どちらを向けばいいのか迷いながら、ただ声のする方向へ謝っていた。

 。

 床に座って謝っても、カイトの怒りは収まらないようで、

「夏目さん。ぐい。。椅子から降りないで下さい。
 グいい。ちゃんと座って下さい。座ってください。」

 すぐに腕を引き上げられ、再び椅子に無理矢理座らされていた。

「ギッ。。はい。ごめんなさい。」「グイグイ。カチャ。ぐい。カチャ。」
「何をしたの?」「もう逃げないように、繋いだだけだよ。」

 椅子に無理やり座らされること自体に驚いていたが、椅子に座った直後、
 カイトが手首に何かを巻き、その先をどこかに繋ぐ音が聞こえてきた。

「ガッチャ。。いやぁあああ。
 逃げない。もう逃げないから外して。。ねえカイトぉお。
 ガチャン。。ガチャ。ガチャガチャ。もうヤメてぇえ。カイトぉお。」

 手首に感じる違和感から逃れようと手を動かすと、
 肘掛けに繋がった鎖が許さずに、夏目の腕を椅子に固定していた。

「だまれぇえええ。ブゥウン。。。。ガバッチジャャン。。。」

 ガチャガチャと腕を振って逃げようとする夏目に男が怒ったのか、
 鞭の衝撃がテーブルを揺らし、作られた風が夏目の身体を襲っていた。

「コクコク。コクコク。。。こくこく。」
「そうだ。こうすれば良かったんですね。なつめぇええ。
 こうやって繋げば、二度と浮気なんて出来ないし。。。そうだ。。。」

 無言の圧力なのだろうか、
 混浴から縁側でしている行為が丸見えなのは知っているし、
 この行為も、そこから丸見えなのも知っていたので、
 誰かが助けに来て欲しいと、つい願っていた。

 そんな夏目の願いが叶ったのか、

「カチャ。。」

 視線を奪われ、自由も奪われて、
 聴覚と触覚が敏感になった身体に、部屋の扉が開く音が響いていた。

「ああ、こんばんわ。君は、そこで見てくれればいいよ。」
「トントントン。。トントントン。ギィイイ。」

「だれ?誰が来たの。誰なの。」

「あはは、夏目さんは、近くで覗かれるのが大好きな女でしょ。
 さっきも見ていましたよ。嬉しそうに泣いて、
 オマンコを広げていましたよねぇえ。。バッチャァアン。」

「ひっ。。」「あっ。ワリイ。」

 バラ鞭で机を叩いた時に、
 数本が相手の方へ近づいていたようで、目の前から焦った声が聞こえた。

「ち。。違うの。あの気持ち悪い。うぇぇぇ。げぇええ。うげぇえええ。
 キモイ男が。木之下が悪いんです。うぇっうぇえ。うええええ。」

 完全に木ノ下のことを嫌いになったらしく、
 名前を呼ぶのも、考えることさえも嫌らしく、
 何度も吐きそうになりながら、夏目は彼について話していた。

「ああ、キノシタぁああ?ああ、海で見た覗き男ってヤツかなぁあ。

 ペラペラ。いーちまい。ペラペラ。にーまい。

 はぁああ。これが夏目さんのオマンコの値段なんですねぇえ。
 これが、オマンコで稼いだお金かぁ。沢山あるんだな。ギャハハハハ。」

「だから。あれは変態が言ったことで、わ。。わたしは騙されただけ。。」

 浮気をしていたわけではなく、
 自分の無駄に高いプライドのせいで起こった結果なのだが、

 プライドのせいだとはいえ、オマンコを広げて見せていた事と、
 それをしたことでお金を貰ったという事実は変わらないので、

 夏目は答えに困って、ただ木ノ下に騙されていたとだけ答えていた。

「ああ、そうだ。夏目さん。この枚数を当てたら、許してあげますよ。

 さっきフロント前で、マンコを広げていたのは浮気じゃなくて、
 報酬を受け取ったタダの、ア。。ル。バイトだって認めてやるから、

 客からオマンコで受け取った、お金の枚数を教えろよ!」

 普通の男なら、
 意味もなく全裸で歩き回ったり、意識がない時や病院なら仕方ないが、

 女性器を知らない男達に広げて見せている女などゴメンだし、
 浮気以前に、そんな行為を行っていた姿を見ていたのに、

 それもアルバイトだと許そうとしているこの男も、ある意味変態だった。


 饗宴①
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