夏目の日常

連鎖

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二人の日常

報告②

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 まだ朝が早く薄暗かった部屋も、朝日が登り始めて日差しが差し込み、
 まるで海斗を祝福するかのように、部屋と彼を照らしていた。

「あ。。そうだ。アイコってキャバ嬢が、アイコって女がです。

 ひつこく、ひつっこく僕に抱きついてきたからです。
 キョロキョロ。僕は嫌がって逃げようとしたんです。キョロキョロ。

 でも、アイコってのが、無理やり。無理やり抱きついて来たんです。」

(アイコさん。すみません。アイコさん。ごめんなさい。
 今度会ったら話ますから、口裏を合わせてください。お願いします。
 すみません。知らないんです。あの子の事は何も知らないんです。
 ごめんなさい。絶対に口裏を合わせてくださいぃい。お願いしますぅ。)

 店でアイコと飲んでいた事も本当だし、
 名前も覚えていない女に、色々と抱きつかれていたのも本当だった。

 もし香水の匂いが混じっていれば、店で抱きつかれたと言えるが、
 身体から漂う強烈な香りは一つだけで、その言い訳は出来なかった。

 もちろん、さっきまで横に寝ていた女の残り香だと思うが、
 その女の名前など、新人さんとだけしか覚えていなかったし、
 キャストの中で、口裏を合わせて嘘を言って貰えるとすれば、
 アイコという、優しい人の名前が出てくる事は仕方がなかった。

「へぇえええ。アイコねぇエ。ふぅうん。アイコぉおお。アイコちゃんね。

 今度お会いして、挨拶してあげるから安心してね。ウフフフ。
 もう二度と、私のカイトにまとわりつくなって、強く言ってあげるわぁ。

 これで打ち合わせだって、社長に。。無理矢理ぃいい。
 キャバクラにぃいい。。。連れて行かれても。。ねっ。大丈夫でしょ?」

「うっ。。うううん。」

 笑いかける夏目の顔は、とても幸せそうな天女のようの見えたのだが、
 海斗の身体が硬直するように固まっていたのは、仕方がなかった。

「もちろん、笑ってアイコさんとお話をするから、
 これで、その不快な匂いが海斗さんからしてくる事は、
 もう二度と無いと期待しているわぁああ。アハハハ。ねえ。カイくん?」

「あ。。そんな、それは、ぼ。僕から言うから。いいです。ぼ、ぼくが。」

「ねえ。カイトぉおぉお。ちやぁあんと、アイコちゃんに言っておくから、
 アナタが心配なんて、しなくていいわよ。あは、あははは。」

「キョドキョド 。な。夏目さんは。あの。その。だ。。だいじょおぶ。」

(しっしょぉ。ありがとうございます。このまま行けそうですよォ。
 しっしょぉおお。行けましたぁ。やったぁあああ。行けましたァ。)

 山崎を犯人に仕立て、アイコを餌として差し出し、
 猛獣のような顔をした夏目からの執拗な追及が、
 これで終わりそうで、海斗も少しだけ気が緩んでいた。

「あと、あのさぁ。カイトぉおお?」「んっんんんっ!」
「その唇。そう、その唇よ!その触っている。ク。。チ。。ビ。。ルよ。」
「あっ。ぶぅぅぅ。うっ。。。。ぶふぃいぃいっ。。」

 海斗の気が緩んだせいもあるが、
 冷や汗を拭うように顔を触っているので、夏目も何かに気づいたらしく、
 しきりに触っている場所の事を聞いていた。

「あなたって、化粧をしていたっけ?」「ぶぅぅ。」「そこよ。そこ。。」
「いや。。あの。。ぺろ。」
「もう、ちょっとぉお、舐めないで!だから、近づいて口を見せてよ!!」
「。。。。えっ。」

 匂いのことは、
 海斗が嫌がっているのに、無理やり抱きつく女がいることは、
 彼がカッコイイから仕方ないと、夏目も無理やり納得していた。

 しかし、唇に残っている跡については、許せないと思ったようだった。

「あの。キョロキョロ。えっと、そのですね。がしィイ。うぇぇえん。
 ゴシゴシ。夏目さぁぁあん。がしぃい。ゴシゴシ。さびしいよぉおお。
 ヒック。うぇ。。うぇええん。寂しかったよぉお。さびしいよぉおお。」

(えぇええええ。ヤバい。ヤバいヤバい。もうだめだァあ。ダメぇええ。)

 もちろん、自分で確認はできていないが、いつものようにしたのなら、
 全身に女が残した跡や臭いが残っているので、
 近づいて顔を見られるのも、服を脱がされるのも、臭いを嗅がれるのも、
 絶対に無理だと思い出していた。

「きゃっ。。何よ。何をするの?ここ、まだ玄関の外よ。カイト?
 ど。。ドアも開いたまま。ドアが開きっぱなしよ。海斗!何をするの?」

「夏目さん。夏目さぁあん。グイグイ。グイグイ。ナツメさぁああん。」
「離してカイト。ちょっとダメ。だめよ。。何をするの!ちょっと、
 早く離しなさい、まさかここで、何かするつもりなの?なにをするの!」

 師匠に言われた通りに、オラオラと押し倒せという言葉だけが心に響き、
 何をすればいいのかもわからなくなって、
 扉が開いたままなのに、夏目を強く抱きしめていた。
 
「ググググ。ご。。ごめんなさい。ヒック。ごめんなさい。寂しいよォ。」
「離して、離しなさい。カイト!カイト。イヤァ。離してってぇえ。」

「うぇぇえええん。ググッ。夏目さん。さびしかったぁあ。ググぐうぅ。」
「いやぁああ。だめぇええ。グラグラ。グラッ。いやぁ。どしいぃいん。」

(しっししょぉおお。いきますよ。いっちゃいますよぉお。
 いって大丈夫ですよねぇ。ししょぉお。いっちゃいますよぉおお。)

 夏目よりも身体が大きく力も強い海斗が、
 身体を預けるように覆いかぶさって抱きついてきたので、
 バランスを崩した夏目が、床にお尻を着けるように後ろへ倒れていた。

「ご。。ごめんなさい。」
「カイト、もぉお。痛いぃい。お尻を打ったじゃないの。いたいぃいい。」

(ししょぉおお。やっちゃいましたぁああ。やりましたあああァ。)

(じゃあ、失敗した時は、どうしたらいいですか?)
(そのままいけ。。そういう気が強い女には、愛しているだ。いいか!
 オラオラ系で、そのまま襲ってしまえ。愛してるって言えばいいんだ!
 そのままセックスに持ち込んで、全てを有耶無耶にしてしまえばいい。)

 もちろん、ここまで来たら引くことはできない海斗は、

「な。。なつ。夏目さん。あ。あいしている。あああ。あいしてりゅ。」

 夏目に愛を囁き、師匠の言う通りの事をしようとしていた。

 たしかに海斗が近くにいなくて寂しかった夏目も、
 山崎が言う通りの気持ちだと思うが、押し倒されている彼女の目には、

「げ。。。げんかんなのよ。イやめてぇえ。ど。。ドア。ドアぁああ!」

 人が起きてきそうな明るさになってきたのが気になっているらしく、
 必死に今の押し倒された場所と、扉の事ばかりを気にしていた。

 そんな言葉など聞いていないのか、

「あ。。あいしている。。。愛してる。夏目さん。ぐいぐい。」

 言葉に詰まりながらまっすぐ夏目を見て、海斗が愛の言葉を囁いていた。

「ちょっと。ちょっとダメよ。カイトダメったら。ダメよ!」

 海斗の視線に耐えられなくて、違う場所ばかりを見ていた夏目が、
 自分が正常位の姿勢で、脚を開いている事に気がついて焦っていた。

「いや。ひゃ。ミエてる?。。バサン。いやぁああ。いやぁあ。いやよ!」

 夏目の格好は、お尻から後ろに倒れて膝を左右に広げていたので、
 スカートが脚に沿って持ち上がり、付け根まで魅せていることに気付き、
 慌てて手で押さえて、めくれた場所を隠そうとしていた。

 もちろん、そういう仕草というのは、男を喜ばせるだけで、

「ガバッ。。愛している。ぶちゅ。ブチュゥウ。大好きです。夏目さん。」

 その必死に隠そうとする、可愛らしい姿に興奮した海斗は、
 一段と身体を預けるように覆いかぶさり、そのまま唇を奪っていた。

(しっしょぉおおお。お。。おれ、出来ましたぁあ。いけそうですぅう。)

「ドン。。ハアハア。だから、ドアが開いているって。だからドアぁあ。」

 海斗の身体を思い切り押し返しながら、扉を閉めるように頼んでいた。

「あ。。愛してる。夏目さん。だから、ハアハア。愛してる。
 君を愛している。欲しいんだ。今すぐに欲しいんだぁ。愛してるぅぅ。」

 こういう時のオスが、メスを諦めることなど出来なくて、
 もっと近づこう、もっと近くに行こうと覆いかぶさっていた。

「いやぁあ。ぐぃいい。やめてぇ。もういやぁあ。ぐいぐい。
 海斗。。まさか玄関で何をするつもりなの?
 今から、何をしようと思っているの?
 いやよぉおお。嫌いになっちゃうから、今はやめてよォお。いやぁああ。
 だから、もうやめてぇえ。もうやめてェエエ。今はダメぇえええ。」

 さすがに二人の体格差があるので、夏目が必死に突き飛ばしても、
 海斗は少し後ろに下がる程度で、そのまま顔が近づいてきたが、
 夏目は頭を左右に振って、唇を合わせる事を嫌がっていた。

「あ。。ご。。ごめんなさい。夏目さん。。。んっ!。。んっんん。」

 このまま押し倒して、セックスまでいくのだから、
 夏目が隠そうとしている場所を、愛撫しようと手を持っていくと、
 触ってはダメな場所まで、指が触れているように感じて焦っていた。

「グイグイ。見ないで。グイグイ。だぁめぇえええ。
 やめてぇええ。いやよぉお。かいとぉお。いやぁああ。見ないでえぇ。」

 夏目がスカートの裾を押さえて隠していた手も、
 海斗が近づかないように身体を押さえていたので、

「えっ。。な。。夏目さん。。ぱ。。パンツ。え。。。ぱんつ?」

 スカートの裾が海斗の身体で押し上げられてしまい、
 生脚が根元まで剥き出しになり、
 何時もならショーツで隠されている場所が、海斗の視線に晒されていた。

「見ないで。。いやぁあああ、見ないでカイトぉおお。

 あなたが突然、家に戻って来たから慌てたからよ。だから慌てたダケよ!

 だから、はっ。。早く退けなさい。いっ。いまなななら。
 いま。。許してあげてもいいから、今なら許してあげるからァァ。

 は。はやく。ど。。どけてぇえ。海斗どけてぇ。グい。退けてええぇ。」
 
 床に背を預けて寝ている夏目と、
 脚の間に腰を置いたまま、覆いかぶさろうとしている海斗。

 もちろん、脚を大きく広げて男を迎え入れるような格好は、
 夏目の力では変えることが出来なくて、海斗の視線を奪っている場所は、
 片手でスカートを引き下ろそうとしても、
 相手の身体が邪魔をして、腰より先に下ろせなかった。


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