機械の森

連鎖

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①バラ(あなたは私のもの。アパート。)

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 アパート(上下4部屋づつの、二階建てアパート)の前で、
 背の高い女が、道路の側溝を掃除していた。

 女(主人公)の名前は、

 山田 花子。28歳。
 身長180cmバスト91cm ウエス 58cmヒップ 86cm。

 視線の隅に写っただけで、気を引いてしまう女が、
 肩まで伸びた黒髪を、だらしなく後ろで結んで仕事をしていた。

「ゴメンねぇ。はなこやぁぁぁ。この腰が。。イタタタ。。」

 この男の名前は、
 花子も住んでいるアパートのオーナー兼、管理人。

 山田 甚八。年齢は、70歳超え。
 身長は年齢的には高いが、花子よりも低い170cm。

 服の上からでも分かるほど、全身が引き締まった筋肉で覆われ、
 顔は優しい目と、笑った時に現れる優しいシワで、
 大きく通った鼻と、意志の強そうな口の印象を柔らげていた。

 髪型は、頭頂部まで続く広い額と、
 それ以降は、短髪の綺麗な白髪が襟首まで続いていた。

 服装は、柿色のスラックスにポロシャツなので、
 年齢的には、ひなたぼっこをしているように見えるが、
 この少し湿ったアスファルトの上で、楽しそうに座っていた。

 普通に考えれば、花子がミニスカート姿で掃除をしているので、
 ボケたふりをして、中身を覗いているのかもしれないが、
 残念ながら、相手は少し汚れた青い綿混の作業着で、
 下着を確認できるのは、
 お尻を突き出した時に、表面に浮き出るズボンのシワだけだった。

 少し気になるのは、作業着が花子のサイズに合っていないためか、
 ファスナーを胸元まで降ろしているようで、
 膨らんだ胸元と、地味なピンクのブラジャーが見え隠れしていた。

 もちろんブラジャーを見せているのは、花子が露出狂ではなく、
 部屋で寝ている所を、無理やり起こされて着替えた結果であって、
 下着を覗かせて喜ぶような、変態ではない。。。。はず。。かな。

「ジャバン。。ズルズル。お父さんも、年なんだから。ゆっくりして。」
「何を言っている。花子ぉぉぉ。
 お父さんじゃなくて、甚八でも。もちろん、じんくんでもいいゾォ。」

 孫と言ってもいい年の差なのだが、花子は相手をお父さん。
 甚八は若いつもりらしく、あだ名で呼んで欲しいと話していた。

「何を言ってるの?お父さん。アハハハハハ。」

 いつものやり取りなのだろうか、
 こんな変な事を言うボケた老人に、笑って彼女も返事をしていた。

「(本気なのになぁあ)あなた。。で、妥協しようか。さあ、花子。
 あーなァあたぁあ。だ。はやく呼んでおくれ。ハナコやぁあ。」

 孫と話せて嬉しいのか、それとも名前が花子で古風だからか、
 昔の女と勘違いしているのかもしれないが、
 両眉を下げて嬉しそうに、彼女に名前を呼んでくれと頼んでいた。

「お父さん。冗談ばっかりィイイ。
 少し風も出て来たから、
 風邪をひかないように、部屋に戻って暖かくしてね。
 ねえ。。。お。。。とぉぉおおお。。さん。」

 甚八が言っている冗談か本気かよく分からない言葉にも、
 花子は嬉しそうに笑っていたので、このやり取りが普通の事だった。

 甚八に笑いかける彼女の顔は整っていた。
 シャープな輪郭に、
 一重の目と通った鼻筋が相手に冷たい印象を与えるが、
 ポッテリと柔らかそうな唇と、
 笑うと顔や身体全体で笑顔を表現するその姿は、
 花が開花する時のように、美しく輝いていた。

「本当にすまないなぁあ。こんな事を頼んでしまって。」

 そんな可愛い顔で見つめられると、
 相手のためとはいえ、自分の嘘をつきつけられたような気持ちになり、
 つい視線を外して、本当の気持ちを伝えてしまった。

「いいんですよ。だから、少しは身体を。。。。」

 そんな甚八の気持ちなど、最初から分かっていた花子は、
 相手に気持ちを伝えるように、優しく答えていた。

 そんな優しく答えていた花子も、何かを思い出しているのか、
 さっきまで、嬉しそうに笑っていた口は垂れ下がり、
 それでも前に向こうとしているのか、
 必死に何かを堪えようと、薄暗い空を見上げていた。

 今すぐ感情を爆発させそうな彼女を、見続けている事など出来なくて、

「ハアハア。。そう言えば。暑くなってきたなぁあ。
 ほんっとうに。暑いなぁああ。もう夏になるなぁあ。」

 朝方は雨が降って、今も雲が広がっている空を見ながら、
 ただ。時間が過ぎている。もう、戻らないんだよ。と、だけ伝えていた。

「。。。」

(わかってる。もうわかっているの。お父さん。わかっているの。
 でも。。でも。。ごめんね。お父さん。)

 この心配してくれている友に、私の事を愛してくれるこの人に、
 泣いている姿を見せたくないと、必死に涙を堪えていた。

「じゃあ、続きをお願いな。花子。ちゃーんと、最後までするんだぞぉ。
 俺が監視していないからって、サボるんじゃないぞ。わかったな!」

 空元気でもいいから笑って欲しいと、必死に彼も話しかけていた。

「はいはい。お父さんは、元気で。
 げん。。。。。き。で、お。。。。。お。。ねがい。」
「わかっている。ああ、わかっているって。
 俺は、元気だから心配するな。俺は、とっても元気だぞ。あはは。」

 もちろん自分の方が年上で、
 先に逝ってしまうことは避けられないとしても、
 それでも一日でも長く、この忘れ形見を見守っていこうと祈っていた。

 その男の願いを知っている花子を、
 あの寒い季節から、この暑くなった世界に連れ出して、
 時間が経ったと、笑ってくれる事を願いながら、
 甚八は部屋に戻っていた。

 。

 花子のやっている仕事は単純な作業だった。
 側溝のフタを開けて、暖かくなって腐ってしまう前に全てを掻き出し、
 暖かい日差しに当てて乾かした後に、

 全てを。すくい。つみ。かわかし。。すくい。つみ。すくい。。
 まとめて。。捨てる。

「ジャブン。。。ゾリゾリゾリ。。。ベチャン。ふぅぅぅ。」
「ペタん。ペタん。。」

 鼻を突く異質な悪臭でさえも、
 自分が何かに生かして貰っていると、実感していた。

「ジャブン。。。ゾリゾリゾリ。。。ベチャン。ペタ。ペタん。。」

 掃除をするのは、目の前だけでよかったが、
 必死に動いているだけで、心が軽くなったように感じて、
 全てを忘れられるように、身体を動かし続けていた。

 。

「続ければ、必ず終わりが来る」と思いながら掃除を続けていると、
 見える場所が全て綺麗になり、少しだけ気持ちが軽くなっていた。

「ふうふう。。はあはあ。」

(そう言えば、もう春だっけ?アハハハハハ。もう春よねぇえええ。)

 春に入り、曇り空でも気温が上がってきたので、
 今着ている服装で身体を動かしていると、
 身体を冷やそうとして、汗が吹き出してきたので、
 あの出来事から、もう時間が経ったんだと実感していた。

 そんな花子への贈り物なのか、

「キラン。。キラ。。。キラ。。。」

 少しだけ綺麗になった水の中に、光っている物を見つけていた。

「んっ。。。チャポン。。キラキラ。キラキラ。」

 腐った泥の中に隠されていても、
 輝きが失われないものを見つけて、汚れる事など気にせずに取り出すと、
 その物は、とても華奢ですぐに壊れそうな指輪だった。

 その華奢な指輪を見続けていると、とても不思議な気持ちになっていた。

 。

「はなちゃーーーん。指輪ァアア。ありがとおおおおォ。」

 この子は、美代ちゃん。五歳。
 彼女は、同じアパートに住んでいる三人家族の子供で、
 いつもこの辺りで遊んでいる子供だった。

 さっき突然声をかけられて、この指輪の持ち主だと話してきたので、
 すぐに指輪を渡すと、嬉しそうに指にはめて手を振ってきた。

「よかったぁああぁああ。」

 花子は二階へ登る階段の途中にいて、美代ちゃんは一階にいるのに、
 二人は大きな声でお礼を言い合っていた。

 少しだけ軽くなった心で、子供からお礼を言われるだけで、
 何故か、心が救われたように感じていた。

「カチャ。。。はぁあああ。よかったぁああ。。」

 今日の仕事が終わり部屋に戻ると、
「今日のように、生きていれば誰かを助けられるはずだ」と、
 必死に自分に言い聞かせていた。

「(もう、無くさないでね。)」

 誰かを諭すように、女が呟いていた。

 。

 そんな花子への贈り物だったのか、夜中に荷物が送られてきた。
 送り主が彼だったのと、直接手渡しの商品だったのでドアを開けると、

「カチャ。。。スゥウウ。」

 その荷物は、
 扉を開けると独特な匂いがしたので、受け取りたく無かったが、

「これ、受け取りをお願いします。」「。。。」
「山田さん?」「。。。」
「渡しました。。山田さん。こっっこれ、伝票。」「。。。」

 返事もせずに、呆然と見てくる花子の顔が怖くて、
 配達員も伝票を渡すと、すぐに部屋を出ていった。

 。

 呆然と見ていた。過去からの贈り物。。ただの花なのに、

「ガサ。。ガサガサ。。」

 夜中に、100本の真っ赤なバラが送られてきた。
 でも、光も無い真っ暗な部屋で見ているバラの色は黒く、

「花子。こんな俺と結婚してくれてありがとう。
 あれから一年。二人で楽しく過ごしているかな?
 それとも、二人で喧嘩をしているのかな?
 それとも。。。は、違うかな?
 この花を受け取っているなら、君はここにいるんだね。
 一緒にいてくれてありがとう。何時までも愛しているよ。花子。」

 花子の心を、真っ黒く染めていた。


 ①バラ(あなたは私のもの。アパート。)
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