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虚言
しおりを挟む「頂きます」
「頂きまーす」
「……頂きます」
漸く食券を購入して飯が貰えた。
席に着いて手を合わせたが、
「なんでテメーが俺の隣なんだよ。俺と佑霧が友達でテメーは初対面なんだからテメーがそっちだろうがよ」
目の前の佑霧の席を顎で指して言う。
隣にコイツが居て飯が進むわけがねぇ。
まぁ当然目の前も嫌だから妥協して斜め前だな。
もっと言えば俺の視界に入らないところで食事してほしい。
「そんなことより二人はどういう仲な訳?」
俺の不満は佑霧に“そんなこと”呼ばわりされて蹴散らされた。
こいつの適当な所は好きだけど今は嫌いだ。
「弘通、矢弘と仲良いなんて全然俺に言ってくれてなかったじゃん」
「全く酷いぜ」なんて言いながら美味そうにチキン南蛮を頬張るこいつは本当に憎たらしい。
仲良いように見えんのか?オイ。
「寮の部屋替えで同じ部屋になって仲良くなったんだよ」
「あぁ、そういう」
頭沸いてんのか。
どうしたらそんな淡々と虚言を吐けるんだ。
「なぁ?弘通」
「知らねぇ」
カレーにしてよかった。まだ食べやすい。
「なんだよ、昨日も一昨日も同じベッドで寝たのに」
「ばっ!」
馬鹿!!
咄嗟にスプーンを置いて矢弘の口を塞ぐ。
カラン、と皿にスプーンがぶつかる音が鳴った。
時既に遅し。
「え、すげぇ仲良いじゃん」
このクソ野郎……!!
「これからも一緒に飯食わない?二人が良ければ、だけど」
「無理。」と言ってやりてぇ、クソ!
「全然いいよー」
佑霧…
「……」
「……弘通は?」
矢弘が俯いている俺の顔を覗き込んでくる。
そのちょっと屈んでる感じも腹が立つ!
これから毎日コイツと昼飯食うって言うのか。
寮の部屋も一緒なのに昼まで一緒だって?
「……いいよ」
視線を上げて矢弘とかち合わせる。
お前が売ってきた喧嘩、買ってやろうじゃねぇか。
「お前と仲良くなりてぇしな。」
矢弘は少しだけ瞠目した。
「これから宜しく、弘通」
ゆっくりと瞬きをして微笑まれて俺もにっこりと微笑み返してやる。
「俺もね?」
「ああ、佑霧も」
「ついでみたいな」
絶対負けねぇ。
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