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消灯
しおりを挟む弘通が風呂から上がると部屋は既に消灯していた。
鏡で確認した痛々しい首筋の噛み跡はその内内出血して痣が出来そうだ。
腹が立ったがおあいこってことにしてやる。
そういえばまだ寝床の位置を決めてない。
既に眠いがベッドの場所は大事だ。
昨日は何故か二人して上のベッドで寝た。
意味不明だ。
矢弘は今日も上のベッドで寝ようとしており、ベッドから出ろと言っても動かないので全体重をかけて上にのし掛かった。
「お前は下のベッドだ。」
「そこまで上に拘られると絶対譲りたくなくなる。」
「眠いんだから早く退け」
「おやすみ」
どうしたらこの偏屈野郎は退くのか考えても見当もつかない。
眠いんだから頭を使わせるなよ。
「……なに?寝ないの?」
「お前がいるから寝れねぇんだろうが」
「それでずっと俺に跨って何してんの?」
「お前をどうやって退かすか考えてんだよ」
矢弘は想像してたよりも力があった。
そもそも喧嘩も好きでやってるわけじゃない。
ムカつく奴をぶん殴るのはストレス発散になるけれど、そのストレスの原因になってるのは喧嘩だ。
大体売られたのを買ってやってるだけだし。
つまり、矢弘と殴り合いなんかはなるべくしたくない。
面倒事は嫌いだ。
この部屋で穏便に暮らしたい。
「そんなに同じベッドで寝てぇならそう言えよ」
矢弘は弘通のような人間を揶揄って怒らせるのが趣味のような人間だ。
自分の上に跨る弘通の腕を引っ張って引き寄せる。
顔が接近して、真っ暗闇の中でよく見えなかった互いの目が漸く合った。
睨みつけてくるかと思えば、弘通は想像したより柔らかい目つきで矢弘を見つめ、矢弘の上から横にごろりと身体を移動させた。
「それはお前だろ。」
否定するのも面倒で弘通は巫山戯た台詞を言い返した。
結局またこれか。
狭ぇ。眠い。首痛い。と思いながら目を閉じると、数秒後には寝息を立てた。
「……夜弱すぎだろ」
矢弘は弘通に呆れた視線を送る。
僅かに口角が上がったことには気づいていなかった。
普段は見れない柔らかい表情を少しだけ観察して、布団を弘通に掛けて眠った。
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