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同族
しおりを挟む俺と矢弘は嫌い合っていた。
多く話したことがあるわけでもない。
ただ学内で見かける時の雰囲気、つるむ連中のタイプ、人から聞く話やまぁ諸々が、気に食わなかったのだ。
きっとお互いに。
そういうのって相手も同じだとなんとなく、感覚的に分かるものだ。
俺はあのあからさまに上辺だけで周りと付き合っている感じが気味悪くて嫌いだった。
苦手とも言える。
俺が嫌われる理由は、まぁ思い付くだけで幾つもある。
連む奴らは大抵柄が悪いし俺自身口も悪い。
煙草や喧嘩が原因で恋人に振られることにはもう慣れた。
つか飽きた。
女も男も付き合った事あるけど大して変わらない。
俺なんかと付き合うような物好きな奴は大体マゾが多いんだが、そういう奴らは構って欲しがる。
好きでもない奴を可愛がる趣味はないので放っておくと、いつの間にか別れることになっている。
最近ではもう懲り懲りで恋人を作るのは諦めた。
対してアイツはいわゆる爽やかなタイプで男女共に人気があるらしい。気色悪。
友人には同族嫌悪だなんて皮肉なことを言われたが、思わず笑った。
アイツと俺のどこが同族なんだ。
大学に入学して暫くはお互い関わらずに過ごせていたのだが、問題が起きた。
1つ目の問題点は、俺たちが二人とも大学に付属する寮で暮らしていたこと。
そして2つ目は、その寮の部屋替えなるものが大学2年生の夏に突如行われることになったこと。
新しい部屋割りが発表された日の夜、扉を開けると奴が目の前に立っていた。
「……うわ、マジでお前なんだ。」
そいつは俺の名前を知っていたようだった。
「……そうだけど。何でドアの目の前に立ってんの?」
……つか、なんか思ったよりデケぇな。
背同じくらいか俺の方が高いくらいだと思ってたのに。
…いやそこまでは思ってないけど、もっと同じくらいかと…、…腹立つ。
「コンビニ行こうとしてた所。つか、思ったより小せぇな。背同じくらいだと思ってたわ。」
その瞳が翠色だと初めて知った。
「……小さくねぇよ。」
何とか口角を上げた。
内心はブチ切れている。
眉間に皺は寄ってるし片頬はピクピクしてるのでどう見ても取り繕えてはいなかったが、弘通としては、これから長い間一緒に生活するルームメイトとなるべく穏便な仲で居たかった。
と同時に、
半笑いで俺を嘲たソイツと仲良くなることを、俺はその瞬間諦めていた。
まあ、内心嫌っていても生活に支障がなければ問題は無いだろう。
という俺の考えが甘い訳ではなかった筈だ。
結局俺の予定通りにいかなかったのは、全部コイツのせいだから。
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