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ある朝のことです。青空の下、草木や花が風に揺れる高原に一頭の白馬がいました。
少し痩せ細く目も細く、全体が白い毛に包まれており、顔を俯きながらコトコトコトコト、とゆっくり歩いているのであります。
そんな様子で高原を進んでいたある時、白馬は突然足をピタリと止めて俯く顔を上げると目で何かを見つめるのである。目の前には何やら人らしき者が草木に座り込んでいた。
それはこの周辺を治める国の王子様でした。
王子は軍服に似た白い礼服に赤いマントを羽織っており、何か悩むような素振りで青空を見つめているではありませんか。
白馬はそんな王子の様子を見ていくうちにあることを思いつきました。それはこの王子の家来になることです。家来になればニンジンやリンゴといったような美味しい食べ物が毎日現れて幸せな暮らしができるではないかと。そう思った白馬は顔を笑うようにしながら王子の元へ近づき、蹄をトントンと鳴らして気づかせると話しかけるのでございます。
「王子様、王子様、一体何を悩んでいるのですか?」
王子は白馬の方に振り向く。
「私にはとても好きな人がいます。その方は隣国のお姫様ですが、それは薔薇のように美しく素敵な女性で一目見た際に惚れてしまい、ついには恋に落ちてしまったのであります」
「ほうほう」
「しかし、隣国の王様はとても怖い方でして姫様と結婚させるには強く逞しい者ではないと認めないと言うのです。——私はこの国の王子でありこのような服を着ていますが、力は弱く怖がりな性格なので到底及ばないだろうと思っていくうちに悩むようになってしまったのです……」
王子は俯き頭を抱えるのである。
話を聞いた白馬は少し考えるとパッと何かを閃きこう言いました。
「では王子様、この僕を家来にして下さい」
それを聞いた王子は驚く。
「君が⁉︎ どういうことかね?」
「この僕が王子様の願い通りに隣国の姫様と結婚させましょう」
「本当にそんな事が出来るのかい?」
「はい、任せて下さい。嘘ではありません」
自身ありげに話す白馬は歯を見せながらニヤリと笑う。王子はこの提案にまた悩んでしまうのだがすぐに決断すると白馬のことを信じることにしたのである。
「わかった、君の言う通り私の家来にしよう」
「本当ですか⁉︎」
「うん」
「ありがとうございます王子様」
家来になることを許された白馬は王子に首を下げて礼をする。しかし王子はとても不安そうな気持ちでありました。
「本当に大丈夫なんだろうか……」
「まあまあ、さあ僕の背中に乗って下さい」
そう言って後ろ足を下げて人が乗れるような体勢になる。
「乗るって、一体どこへ行くのさ?」
「隣国でございます」
「隣国ってまさか⁉︎」
「はい、今から姫様と王様に会いに行くのです」
「会ってどうするのさ?」
「姫様と結婚させて下さいと言うのです」
王子はまた驚く。
「ち、ちょっと待ってくれ! 何を考えているんだ⁉︎ ——それにもし王様を怒らせたら何をされるのか分からないんだぞ!」
「大丈夫ですって、この僕に任せて下さい——」
白馬はまたしても歯を見せてニヤリと笑う。そんな顔を見てさらに不安を感じてしまうのだが、今更断ることも出来ないので仕方なく白馬の背中に跨って乗るのであった。
「では出発ー!」
嬉しそうにそう大きな声を出すと後ろ足を戻し、ゆっくりと足を動かしてコトコトコトコトと音を鳴らして歩く。
家来になった陽気な白馬と不安に悩む王子は高原を進み、隣国へと向かうのでありました。——
少し痩せ細く目も細く、全体が白い毛に包まれており、顔を俯きながらコトコトコトコト、とゆっくり歩いているのであります。
そんな様子で高原を進んでいたある時、白馬は突然足をピタリと止めて俯く顔を上げると目で何かを見つめるのである。目の前には何やら人らしき者が草木に座り込んでいた。
それはこの周辺を治める国の王子様でした。
王子は軍服に似た白い礼服に赤いマントを羽織っており、何か悩むような素振りで青空を見つめているではありませんか。
白馬はそんな王子の様子を見ていくうちにあることを思いつきました。それはこの王子の家来になることです。家来になればニンジンやリンゴといったような美味しい食べ物が毎日現れて幸せな暮らしができるではないかと。そう思った白馬は顔を笑うようにしながら王子の元へ近づき、蹄をトントンと鳴らして気づかせると話しかけるのでございます。
「王子様、王子様、一体何を悩んでいるのですか?」
王子は白馬の方に振り向く。
「私にはとても好きな人がいます。その方は隣国のお姫様ですが、それは薔薇のように美しく素敵な女性で一目見た際に惚れてしまい、ついには恋に落ちてしまったのであります」
「ほうほう」
「しかし、隣国の王様はとても怖い方でして姫様と結婚させるには強く逞しい者ではないと認めないと言うのです。——私はこの国の王子でありこのような服を着ていますが、力は弱く怖がりな性格なので到底及ばないだろうと思っていくうちに悩むようになってしまったのです……」
王子は俯き頭を抱えるのである。
話を聞いた白馬は少し考えるとパッと何かを閃きこう言いました。
「では王子様、この僕を家来にして下さい」
それを聞いた王子は驚く。
「君が⁉︎ どういうことかね?」
「この僕が王子様の願い通りに隣国の姫様と結婚させましょう」
「本当にそんな事が出来るのかい?」
「はい、任せて下さい。嘘ではありません」
自身ありげに話す白馬は歯を見せながらニヤリと笑う。王子はこの提案にまた悩んでしまうのだがすぐに決断すると白馬のことを信じることにしたのである。
「わかった、君の言う通り私の家来にしよう」
「本当ですか⁉︎」
「うん」
「ありがとうございます王子様」
家来になることを許された白馬は王子に首を下げて礼をする。しかし王子はとても不安そうな気持ちでありました。
「本当に大丈夫なんだろうか……」
「まあまあ、さあ僕の背中に乗って下さい」
そう言って後ろ足を下げて人が乗れるような体勢になる。
「乗るって、一体どこへ行くのさ?」
「隣国でございます」
「隣国ってまさか⁉︎」
「はい、今から姫様と王様に会いに行くのです」
「会ってどうするのさ?」
「姫様と結婚させて下さいと言うのです」
王子はまた驚く。
「ち、ちょっと待ってくれ! 何を考えているんだ⁉︎ ——それにもし王様を怒らせたら何をされるのか分からないんだぞ!」
「大丈夫ですって、この僕に任せて下さい——」
白馬はまたしても歯を見せてニヤリと笑う。そんな顔を見てさらに不安を感じてしまうのだが、今更断ることも出来ないので仕方なく白馬の背中に跨って乗るのであった。
「では出発ー!」
嬉しそうにそう大きな声を出すと後ろ足を戻し、ゆっくりと足を動かしてコトコトコトコトと音を鳴らして歩く。
家来になった陽気な白馬と不安に悩む王子は高原を進み、隣国へと向かうのでありました。——
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