不思議体験・外伝。

ポンポコポーン

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「キラキラが寒い」不機嫌な彼女。

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・・・・・・・・

・・・・・


・・・・微かな、人の動く気配・・・・

目が開く。


窓から東京の一面パノラマが見えた。・・・どんよりとした朝・・・



・・・・そか・・・・

明菜さんと泊まったんだっけか・・・・


パノラマの手前、

ソファーに明菜さんが座っていた。


背中を向け、外を見ている。

洋服を着終わったというところか・・・


立膝をして、

パンツルック・・・その左足、裾をたくし上げていく・・・


バッグから、サポーターを取り出して、膝下に巻いた。



・・・・ああ・・・そうなんだ・・・骨折した箇所か・・・

まだ痛むんだな・・・

でも、昨日はしてなかった・・・はずだ・・・・よな・・・



明菜さんの身繕いが終わった頃、


「う、ううん・・・・・・」


ボクは「起きたよ」の宣言の伸びをして、ベッドからモソモソと動き出した。



ホテルの朝食はビュッフェスタイルだった。

ランチ、ディナー、共にビュッフェとして・・・・それが、ひとつの営業として成り立っていた。


宿泊客だけでなく、食事だけで訪れる客も多い。・・・らしい。

このホテルの名物になっていた。



日曜日、朝。

若いカップルが目立った。・・・日本人はって意味だ・・・・3割ほどが外国人だった。


東京都心のシティーホテル。

土日は、

海外からの観光客か、若いカップルのデート使用でしかない。


出張のサラリーマンが使うホテルじゃない。・・・・ここをビジネスで使うのアッパークラスだ。土日には姿を消してしまう。

家族連れが使う場所でもない。


チェックアウト前の喧騒。

それが、そのままビュッフェの喧騒になっていた。


どこか、華やいだ雰囲気だ。



料理は、

ボクには初めて見るものばかりだった。

ファミレスすらない田舎村で育ったからな。


ホテルの一流シェフが本気で作った料理が並ぶ。

ホテルの、本格的イタリアンや、本格フレンチの「お試し」みたいな意味があるらしい。

・・・・というのは、後で知ったことだ。



ボクは、トレイを持って料理を見てまわる・・・・


それでも、
けっきょく、
選んだのは、パンと、ハム、ベーコンといった簡単なものだけだ。・・・あとは卵。


とにかく「朝が苦手」だ。


小学生。

家のドタバタから、朝起きられない子供になっていった。


高校生の頃には、

「生きるか死ぬか」といった一大決心がなければ起きられないほど、朝が苦手になった。


・・・そんなことから、朝は何も食べない。


高校生からのひとり暮らし。


もともと、食の細かったボクは、これ幸いと、朝は全く何も食べなくなった・・・・コーヒーで喉を落ち着かせるのが朝食だった。


それに・・・

さすがに、昨日は飲み過ぎた。


二日酔いというほどではないにしろ、頭は・・・

未だ、脳の半分以上は眠りについてる状態だった。


あまりにベーコンが美味しそうだったのと・・・

卵が色んな焼き方をされていて、珍しかった・・・それでトレイにとった。



・・・・テーブルに戻る。


ボクより、さらに、朝の不機嫌な顔があった。

明菜さんは、
寒いのか、コートを肩にかけていた。

テーブルには珈琲だけだ。



・・・・え・・・??・・・うそ・・???

・・・・う、旨い・・・

なんでもないパンが美味しかった。

ボクが知ってる「パン」とは別物だった。・・・・まぁ・・・ボクが知ってる「パン」なんて、スーパーで売ってる、大手メーカーのものしか知らないけどな。

高校3年間は、ずっとスーパーでバイトしてた。



カチッ・・・・


ライターの音がした。


明菜さんがメンソールに火を点けた・・・・


煙草は、どこでも吸えた時代だ。

新幹線・・・・飛行機ですら煙草が吸えた時代だ。


まして、

ボクも煙草を吸っている。

他人の煙が気になることはない。



「朝」ってだけじゃない。

明菜さんが不機嫌なのを感じた。



・・・たぶん・・・昨夜のことだろうな・・・・



・・・・痛くしちゃったかなぁ・・・



明菜さんとのSEXでは・・・

今まで、

明菜さんが主導権を握っていた。


ボクは、明菜さんのオモチャのように射精させられていた。

それが、

昨夜は、立場が逆転してしまった。


ボクが主導権を握り・・・・最後は「オス」として満足すべく、後ろから犯すようにして射精した。

・・・もちろん、ゴムは付けてた。

高校生の頃、親友の退学劇を間近で見たボクは、

絶対にコンドームなしでSEXすることはなかった。・・・それも、絶対に、挿入の最初からだ。

射精する時だけつける・・・・でも、その前に必ず漏れてる・・・滲むように精液は流れ出てる・・・

だから、挿入の最初から、必ずゴムはした。


・・・しかし・・・

わざと辱めるように、メス犬の姿勢をとらせた。

やっぱり、あれがいけなかったのか・・・


・・・・調子に乗りすぎた・・・・


明菜さんを傷つけたのかもしれない・・・

今まで「弟扱い」してた男から、抑えつけられ、後からされるってなぁ・・・


いや、

調子に乗って、痛くしてしまったのかもしれない。


朝の、
サポーターを巻いてる姿。



・・・そうだよな。

骨折で入院してたんだよな・・・

ちょっと配慮が足らな過ぎた・・・・


上目で明菜さんを盗み見しながらフォークを動かす。



パンと卵、ベーコンを平らげた。



ボクも煙草に火を点けた。


煙草と珈琲。

高校生からの朝の習慣だ。


黙って、煙草を吸い、
黙って珈琲を口に運んだ。



左の席。

若いカップル。・・・・微かに九州訛りを感じる。・・・・今日は、これから原宿に行って、その後は渋谷に行くらしい・・・

帰るのは明日・・・

なんだ、

大学生なのか・・・???


右の席は、若いスーツ姿の男女・・・・聞こえる会話から会社の先輩後輩だとわかった。

男が、
自分が、いかに上司よりも優れているかを演説している・・・・



ボクの席には、

沈黙と、紫煙が漂っていた。

華やかな喧騒の外にあった。



・・・・これまで、せっかく仲良くさせてもらってきたのに・・・・

失敗しちゃったなぁ・・・・


「明菜さんはボクのものだ」


それが、

一夜明ければ危うくなっている・・・・



明菜さんが煙草を消す。


「帰ろっか」


バッグを持って立ち上がる。



チェックアウトを済ませてエレベーターに乗った。

扉が開いて駐車場へ・・・・一気に冷気に晒される。


コンクリートの冷え冷えとした駐車場。


ベンツ、BMW・・・大型の外車の片隅、

申し訳なさそうに型遅れのスカイラインが停まってる。


二人で乗り込んんだ。



「さっむい・・・・」


明菜さんの呟き。

一晩停めた車内は冷蔵庫だ。

エンジンをかけ、ヒーターを最強にした。・・・・それでも、エンジンが暖まるまでは、ほとんど冷気だ。


明菜さんは、コートを着たままシートベルトをする・・・・さらには、コートの襟を合わせてその中に顏を埋めた。


走り出す。


地下スロープから地上に出た。

灰色の空だ。

・・・・微かに雪が舞い降りる・・・・



昨日、綺麗だと騒いだ同じ雪・・・・



フロントガラスに雪片。

東京の排ガスに汚れたガラス。・・・結晶なんか見えやしない。汚れた水跡が流れた。



「東京って・・・寒ぃよなぁーーー」


半分コートに隠れた顏。

明菜さんが吐き捨てた。


・・・・やばい・・・

明菜さんが怒っている・・・・完全に怒っている。


・・・やっぱ、


「止めて!」って言われても、し続けたのがマズかったよな・・・

「許して」って散々言われたのに止めなかったもんなぁ・・・最後までしちゃった・・・



まずい・・・マズイよ・・・・


やばい・・・ヤバイよ・・・・



・・・・どうする・・・どうする、オレ・・・・?



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