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「本物のキス」涙の心。
しおりを挟む海老と白ワイン・・・・
料理と酒。
合わせて食べれば、こんなにも美味しいものなのか・・・
明菜さんが、勝手にワインを頼んでいった。
ボクの前にもグラスが置かれる。
食べ物ごとに、酒が変わった。
「この料理には、赤でこのワインが合うんだよ・・・」
知らない明菜さんがいた。
料理が進んでいく。
赤、白・・・ワイン・・・何だかといった中国の酒も出てきた・・・
どれくらい時間が経ったんだろう・・・・
途中から時間の感覚もなくなっていた。
料理が終わり、デザートへ。
デザートも2種類。
水菓子・・・そしてケーキ。
それを珈琲で・・・
この珈琲が美味しかった。
ボクには種類はわからなかったけど、
・・・・なんというか、
ボクは、珈琲と言えば「雑」なもの・・・・西部劇に出てくる珈琲しかイメージがなかった。
しかし、出された珈琲は・・・
なんだろう、
ヨーロッパの貴族が使うような、金の縁取りがされたカップで出てきた。
・・・・そして、ひとくち飲んで驚く。
珈琲特有の「雑」さが全くなかった。
思わず、店の人に聞いたら、
「ブルーマウンテンでございます」
・・・・そうなのか、
これが「ブルーマウンテン」ってやつなのか。
名前くらいは聞いたことがある。
そうか、
お酒と同じように、
珈琲ひとつとっても、いくつもの種類・・・・そして、こんなにも洗練された・・・スッキリしたものがあるのかとビックリした。
すっかり満腹気分だ。満足気分だ。
・・・もう何ひとつ胃袋には入りません・・・
アルコールのせいか、
なんだか愉快な気分だった。・・・楽しい・・・
こんなにも人生ってのは楽しいものだったのか・・・・そんな気分でレストランを後にした。
部屋に着いたら、ドタっと倒れ込んでしまいそうだ。
「もう一杯だけ飲んでいこっか」
桜色・・・それでも、シャンと立っている明菜さんが言った。
エレベーターで、1フロア下がって「BER」に入る。
薄暗い店内。
明らかに大人の場所だ・・・そして「東京」・・・いや、ここは外国だ。映画でしか見たことのない空間が広がっていた。
奥のボックスの男女からは英語の会話が聞こえてきた。
そう言えばロビーにも外国人が多かった。
3割は外国人・・・ヨーロッパ、アメリカなのか・・・白人さんが多い。
カウンターの隅。
足が床につかない、高い椅子。
並んで座った。
明菜さんが煙草に火を点けた。・・・・待ちきれないといった感じだった。
長いメンソール・・・薄いブルー、ボックスタイプのパッケージ。
カチッとしたスーツ姿の明菜さんに似合っていた。
レストランで煙草を吸うのは気が引ける。・・・・そのために、ここへ入ったんだと悟った。
ボクも遠慮なく煙草に火をつけた。
高校生からの愛用品。SEVEN STAR
オーダーしたグラスが運ばれてきた。
明菜さんは「レミーマルタン」・・・・ブランデーという種類らしい・・・それを頼み、
「カズくん、これ、飲んでみな」
ボクの分は、明菜さんが頼んでくれた。
・・・そして、出された琥珀色の液体を口に含む・・・
旨い・・・・
なんだこれ・・・
「カルバドスっていうんだよ・・・美味しいでしょう・・・・?」
明菜さんの姉貴の笑顔だ。・・・・いや、教師の笑顔とでもいうのか・・・
優しく教えてくれる顏だった。
「カルバドス」というのはリンゴから作られた酒らしい。・・・・アルコールなんだけど・・・そして「強い酒」だというのはわかる。・・・・でも、どこか、リンゴシロップのような味で・・・
それを舐めるように味わうのは・・・・
確かに、ご飯を食べた後、
こうやって、話をする時にはもってこいだと思った。
食後酒、デザート酒って言うらしい・・・・なるほどなぁ・・・・大人の世界だ・・・・
身体が火照っていた。・・・・心地よい暖かさだ。・・・・幸せの暖かさだ。
いろんな話をする・・・・いろんな話・・・
子供時代の事・・・中学、高校・・・虐められていたこと・・・
明菜さんが水を向けて、ボクが話す・・・・的確な相槌・・・的確な話の誘導・・・・
時に喜んでくれ・・・時に一緒に憤ってくれた。
いつの間にか、仕事の話になっていた。
今の仕事の難しさを喋っていた・・・・
いかに難しいか・・・・そして、桐原先輩の凄さも・・・
ボクは、桐原先輩に心酔してるって言っていい。
「クビ」
その、崖っぷちから救われたってだけじゃない。
桐原先輩のモノの考え方・・・・「生き方」にすら心酔していた。
桐原先輩に一生ついていこうって思う・・・・ついていけるかはわからないんだけど・・・
だけど、
頑張って・・・
頑張って、勉強して・・・桐原先輩の役に・・・力になりたいって思う。
ボクは、夢中で喋っていた。力説していた・・・
「良かったね・・・・」
明菜さんが満面の笑みで言った。
満面だ。
姉貴・・・母親・・・
言葉でじゃない。
心から思っている「良かったね」だった。
一時はどうなるかと思ったけど、
お姉ちゃんも一安心だよ・・・
そんな笑顔だ。
明菜さんの、この笑顔が好きだった。・・・なんとも、落ち着く・・・・何もカッコつける必要がない。
全てを晒していい笑顔だ。
姉貴で、従姉で、母親で・・・親族の安らぎ・・・そんな笑顔。
ホテルの部屋。
重たい扉を開ける・・・
真っ暗だ。
・・・・突き当り、一面ガラス。東京・・・・赤坂の夜景が見えた。
もつれあうように部屋に入った。
夜景の明かりに明菜さんの顔が浮かぶ。・・・・そのままふたりでベッドに倒れ込んだ。
身体を起こして明菜さんの顔を見る・・・・笑顔だ・・・笑顔・・・
・・・・好きです・・・・明菜さん・・・・
真正面から言った。
今まで言ったことはない。・・・・言われることを避けられているのがわかっていた。
・・・言ってはいけない・・・それがわかっていた・・・
・・・言った後はどうするのか・・・
東北から一緒に出てきた彼氏がいると言われていた・・・それに・・・今日子さんのことは・・・
でも、もう言わずにはいられなかった。
唇を奪う・・・・
舌を侵入させる・・・明菜さんの舌をとらえる・・・・絡める・・・動かない明菜さんの舌を絡めとった。
・・・・やがて、即されたように・・・スイッチを押されたように、明菜さんの舌に意思が入る・・・
ボクの求めに応じて舌が蠢いていく・・・・
唇をピッタリと張り合わせ、
お互いの口中で、絡みあった舌が行き来を繰り返す・・・
名残惜し気に舌を離した。
・・・・やっとキスさせてくれた・・・・
明菜さんの瞳を見て言った。
もちろん、キスをしたことはある・・・いや、会えばいつもSEXしてるんだ。
キスはする。
それでも、
こんなふうに、舌を絡めることはなかった。・・・させてもらえなかった・・・ボクにはそう感じていた。
拒絶・・・・というほどじゃないにしても・・・どこか・・・微かに、本気のキスを避けられてる感じがしていた。
明菜さんは笑っている・・・いつもの笑顔だ・・・・
でも、
この時、
「わたしも・・・カズくん・・・大好きだよ・・・」
明菜さんが自ら唇を重ねてきた。・・・・明菜さんの舌が侵入してくる・・・ボクを求めて駆けまわる・・・舌が絡む・・・
舌が絡む・・・・舌が絡む・・・舌が絡む・・・
明菜さんの呼吸が荒くなる・・・視界に入る明菜さんの胸が上下している・・・閉じ合わされた両脚が左右に揺れている・・・・
でも、
この時、
微かに、眼が・・・
眼元に涙が・・・涙が零れそうに見えたんだ・・・
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