不思議体験・外伝。

ポンポコポーン

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「彼女の秘密」不思議な、

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薄いカーテンから朝陽が入っている・・・・


狭いベッド。・・・・流行っていたソファーベッド。

一度ベッドで使ってしまえばソファーに戻すこともなかった。万年ベッドになっていた。


壁に張り付くように・・・背中を向けて明菜さんが眠っている。・・・・結局泊まっていった。


・・・いや、

最初から泊まるつもりだったんだろう。


「親父さんのところに泊まる」

寮には外泊届けが出されているはずだった。



親父さんのところに行った日は、必ずのようにボクの部屋に泊まっていった。・・・なんだか、寂しそうというか・・・ひとりでいたくないって感じなのか・・・



明菜さんの親父さんは「失踪中」だった。


元々、東北で工場を経営していた。

高度成長の波に乗って創業。

朝鮮、ベトナム・・・・戦争特需にも乗って、工場は拡大の一途。

明菜さんが子供の頃には、けっこうな裕福さだったらしい。

大きな車に、大きな屋敷・・・


それがひっくり返ったのは、・・・よくある話、

親父さんが、経営者仲間の借金の「連帯保証人」になってしまったことだ。


仲間は夜逃げ。

全ての借金が親父さんの肩に乗った。


工場、機械・・・・さらには家屋敷・・・・全てが差し押さえられてしまった。



倒産騒動の最中。

取り立て騒動。


家には債権者たちが押しかけている。・・・・お母さんはその対応に追われている。


明菜さんも、入学したばかりの高校どころじゃなかった。

お母さんと一緒に債権者から罵声を浴びた。



・・・・ふと気づく。


「お父さんがいない・・・・」



明菜さんは「お父さん子」だった。



胸騒ぎ。



セーラー服のまま、明菜さんは工場に走った。



・・・・そこで、手首から血を流し・・・血まみれ・・・倒れていた親父さんを発見する。



親父さんの「生命保険」は、
自殺でも保険金が支払わられるものだった。



救急車。


・・・・入院・・・・



・・・・そして・・・

その病院から、親父さんは姿を消した。

行方不明となった。


着のみ着のまま。

まだ、春先。

東北は、まだ寒い。


その中を、ジャンパー1枚持たずに親父さんは姿を消した。


もちろん、警察に「捜索願」は出した。・・・・しかし、見つからない。



高校を卒業。

明菜さんは東京の短大に進学した。・・・・お母さんからは・・・1円の援助もなかった。


明菜さんは、

たったひとりで東京に出て・・・たったひとりで下宿を契約し・・・

全てをひとりで・・・


昼、夜・・・学校以外は全てをバイトに費やし・・・授業料、下宿代・・・全てを自分で賄って短大生活を送った。



・・・・そして親父さんを捜し出した。


親父さんは「偽名」で働いていた。


身を隠すには東京・・・・大都会が一番いいらしい。


今では、全てを飲み込んだ雇い主の元で大事にされている・・・


「大事にされている」・・・それはボクが感じた印象だ。


自分で創業するほどの人物だ。

並の「職工」とは、実力が違うんだろう。

すぐに工場での中心人物、責任者へとなっていった。



最初は「親戚」だと紹介された。・・・・偽名、苗字が違っていたしな。


・・・・そのうちに、


実は・・・・


と、話を明かされた。



「おはよ」


明菜さんが目を開けた。

微笑む。



「カズくん、モスバーガー食べたい」


姉の笑顔で言われた。


明菜さんが泊まっていった翌朝は、モスバーガーと決まっていた。・・・・当然のように明菜さんの奢りだった。


その代わり、ボクが買いに行く。


初めてモスバーガーを食べさせてもらった時に、



こんなに旨いものがあるのか!!!



衝撃!!・・・・そんな、目をパチクリさせながら食べていたんだろう。


そんなボクを、
明菜さんはニコニコしながら見ていた。


以来、

ふたりでの、「休日の朝」はモスバーガーと決まっていた。



ベッドから降りて着替える。


「バイク借りるよ」


明菜さんのキーホルダーを持ってアパートを出た。


原付スクーターに跨る。

エンジンをかけ走り出す。


スクーターは明菜さんのだ。


いつも、明菜さんの寮に、車で迎えに行くのは目立つ。・・・・女子寮に、男子社員が迎えに行くってのもなぁ・・・・

さらには、ボクは、

会社では「不良社員」だ・笑。



それで、
明菜さんがスクーターでアパートまでやってきた・・・・短大時代からの愛車だそうだ。


バイトをいくつも掛け持ち・・・・深夜のバイトもある。電車、バスが動いてなかった。

それで、「足」として買ったんだそうだ。



モスバーガーで、数分待って商品を受け取った。


アパートから電話で注文してあった。

モスは、作り置きをしないために、時間がかかる。

アパートから注文すれば、店に着く頃にちょうどできている。・・・・そのほうが、ボク、明菜さん、お互いに食べたいものを間違いなくオーダーできるし便利だ。



モスバーガーを食べて、

ノンビリとレンタルした映画を観る。


明菜さんが、映画を観終わって煙草に火を点けた。

もちろん、会社では吸わない。・・・・外でもほとんど吸わない。


でも、「寮」では、・・・意外と煙草を吸ってる「総務女子」は多いらしい・笑。


「・・・さんでしょ・・・それに・・・ちゃんでしょ・・・」


明菜さんに指折り数えて教えてもらった。



えええーーーーーーーーマーーージぃーーーーー???!!!



ってな、


「清純派」ってな総務女子が、意外と酒豪で、煙草を吸うって知った時は、



女って怖ぇぇーーーーー・・・・



そう思った・笑。



「あ、そうだ・・・・」


明菜さんがバッグをあけてゴソゴソ・・・・


緑色の紙袋。

ああ・・・
昨日、とってきた写真だな。



「写ルンです」


「レンズ付きフィルム」ってヤツが登場して、すーーっかりカメラってやつを使わなくなった。

なんかイベント事があった時には「写ルンです」を買って撮った。


この前、みんなでキャンプ行った時に撮ったやつを現像に出していた。
それを昨日受け取りに行った。


煙草を吸いながら、

珈琲を飲みながら、

ふたりでパラパラと写真を見ていく・・・・



「何、これ・・・・?」



明菜さんが1枚の写真を手にして言った。

映っているのは明菜さん自身だ。



ボクが撮った写真だった。



キャンプに行って、みんなの写真を撮った。

帰ってきた。


まだ、「写ルンです」には、数枚残っていた。


その、残りを消化するように撮った写真だ。


ボクのアパートの前。

帰る時の、明菜さんがスクーターに跨った写真。


不意打ちのように撮った写真。


夜。

明菜さんの不意打ちの「素」の表情が可愛い。

スクーターに跨った全体写真。



明菜さんが「赤い光」に包まれていた。



明菜さんの輪郭を、「赤い光」・・・・光ってか・・・モヤのような・・・そんなものが包んでいた・・・・


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