「崩壊の街」ボクは不倫に落ちた。

ポンポコポーン

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「H嫌い」不思議な縁。

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「私・・・H嫌いだったから・・・」


求めてくる男が怖かったと亜貴が言った。

「好き」「愛してる」

言葉が、そのまま信じられなかった。

「したいだけなんじゃないの・・・?」

そんな風に思ったことが多かったという。
求めてくるときの男の顔が怖かった・・・

・・・・そういう女のヒトは多いよなぁ・・・

ボクもわかる。
ボクも・・・
・・・・もしも、男に「性欲」がなかったら「世紀のロマンス」の数々は存在しなかったんじゃないかと思う。


男は、72時間で精子が満タンになるって聞いたことがある。
満タンになると、もう「出したくて出したくて」しょうがなくなる。
最近の研究じゃあ、48時間で満タンって説もある。
いずれにしろ、その状態だと「出したい」って本能が「恋」のスイッチを入れてしまうらしい。

だから、男子の、

「好きだ・・・愛してる・・・」

って言葉は、

「やりてぇ・・・出してぇ・・・」

と同意語だったりする。
そして、厄介なのは、男子本人も「本能」なのか「恋」なのかがわからない。

・・・男は、SEXした後で自分の本心、心の声がわかる。
「やりてぇ」だったのか「愛してる」だったのか。
・・・逆にSEXした後じゃないと、自分の本心がわからない。

SEXする前は「アバタもエクボ」だったものが、SEXした後には「エクボすらアバタ」になる時がある。
SEXした後の、愛しあった余韻の時間が・・・女にとっては余韻に浸っている、浸りたい時間が、男にとっては「本能」だったのか「恋」なのかの真贋を見極めている時間になる。・・・・だから、この時間を「賢者タイム」という。


・・・・ボクの亜貴への想いは間違いなく「恋」だった・・・・本物の「愛してる」だった・・・片時も休まずボクはベッドの中で亜貴の髪の毛を撫でていた・・・少しでも亜貴に触れていたかった。
今だって、亜貴の顔を見ていることが・・・亜貴と話していることが嬉しくてしょうがなかった・・・・片時も手離したくなかった。人生の全ての時間、亜貴に触れていたかった・・・

こうしてお弁当を食べている亜貴を見ているだけで幸せだった。・・・亜貴がひたすら愛おしかった。


・・・いずれにしろ、亜貴にとってSEXを迫ってくる男の顔は怖かった。
求められてるのが私なのか、私の身体なのかわからない。


「・・・だからH嫌いだったの・・・」


・・・でも、さっき、2時間、壊れるように愛しあったけど・・・亜貴は、壊れるほどに鳴き声を上げていたけれど・・・・・?

・・・間違いなくボクにとって人生最高のSEXだった・・・

世界で一番愛した亜貴を組み敷いた。
何度も、美しい亜貴の貌が苦悶にも似た表情に歪んだ。
・・・たぶん誰にも見せていない・・・ボクだけの亜貴の貌だったに違いない。
その貌を見られたことは、ボクにとって無上の歓びだった。
男にとって・・・誰にも見せていない、外では絶対に見せていない・・・愛した女の快感に歪む貌を見ることは最上の歓びだろう。

良妻賢母の可愛い顔が快楽の悦びに歪む表情・・・・ツンと澄ましたキャリアウーマンの美しい顔が、悦楽の焔に燃え上がる・・・
表の世界では絶対にSEXとは結び付かない顔が、自分の前だけで真っ赤な・・・快楽に染まった貌となって鳴き声を上げる・・・
男にとって、これほどの悦びはない。
・・・・それが、旦那さんにすら見せてない貌だったらなおさらだ。

・・・自分だけの亜貴を見たかった。

「亜貴のこんな貌を見たことがあるか?!」

世界中の男達に知らしめるために亜貴を責めた。悦楽の焔で燃やした。
・・・だから、亜貴の・・・今まで誰も愛していないところを愛し、誰もが見つけていない亜貴の性感帯を探し、責め立てた。逝かせた。
全ては、自分だけの亜貴を見たいためだ。
それが「愛する」ということだった。

・・・理屈にすれば、そうなる・・・しかし、ただ亜貴が愛おしかった。それだけのことだ。
そして、これまでの人生で、これほどまでに貪欲に求めたことはない。
2時間もの間、責め続けたことはない。


・・・うーーーん・・・と、亜貴が箸を止めて考えるような顔を見せる・・・その箸を持つ爪の一枚一枚すらが愛おしい・・・


「・・・でも・・・なんか、カズくんとは違うんだよね・・・・気持ち良かったの・・・すごくしてたいって思った・・・ずーーーっとしてたいって思ったもん・・・」


正直に・・・なんだか、真面目な顔で答えてくれた。
こんな時にも、優等生だった片鱗が見える。

・・・そんな亜貴が愛おしかった。

「あーきぃー愛してるからね・・・」

思わず口をついた。
電話で話すようになってから、ボクは、普段は「あーきぃー」と呼んでいた。

亜貴がクスっと笑う。

そんなおかしい??

「それ、おかあさんと同じ呼び方なのね」

・・・初めて聞いた。

「あーきぃー」と呼ぶのは、お母さん以外いないという。
名前は「亜貴子」だ。友達は皆「アッコ」と呼ぶ。
ずっとそう呼ばれてきた。

ただ、おかあさんだけが、子供の頃から「あーきぃー」と呼んでいた。
お母さん以外では、ボクだけしか呼ばないという。
・・・この世界で、二人だけか。
ボクは、これから一生「あーきぃー」と呼ぼう。


「お母さん、優しいんだね・・・」

「いや、ぜんぜん。厳しかったよ・・・今でも厳しいけど・・・」


躾に厳しかったと言った。箸の持ち方。姿勢。食べる順番・・・そして日常の挨拶・・・
・・・・なんとなくだった。なんとなくだった。
亜貴のお母さんとボクの母がダブった。

「お母さん、何月生まれ・・・?」

話が尽きない。
・・・そう、亜貴とは話が尽きない。止まらない。会話のピンポンが心地よく進む。
お弁当を食べ、お茶を飲んだ。

・・・いくつかの偶然があった。
なんと、亜貴のお母さんとボクの母の誕生日は同じだった。
勿論、歳は違う。しかし、同じ誕生日。
・・・こんなことがあるのか・・・

どうってことはない偶然かもしれない。
・・・・しかし、同じような偶然がいくつかあった。

ボクは、亜貴を他人だとは思えなくなっていた。

考えれば、初めて会った時からか・・・ピグだけどさ。

初めてピグで会って、3時間以上も話した。
・・・なかなか3時間話せる相手というのはリアル世界でもいない。ましてやピグ・・・ネットの中のアバターでの会話だ。文章だけのチャットのような世界での会話だ。
それから毎日話した。そして、初めて声を聞いた。

ボクは、初めて会った時には緊張した。・・・フラれると思ってたからだ。

しかし、それ以外では緊張しなかった。
どこかで親戚のような親近感を抱いていた。
・・・兄弟ではなく従妹同士のような、そんな親近感。

母親同士の誕生日が同じ。だから何?

しかし、不思議な縁は感じた。
そんな偶然がいくつか重なった。
・・・なんと、父の出身地が同じだった。
お互い、母が地元の人間で、父は外からやってきた人間だった・・・その出身地が同じ。

偶然がいくつか重なれば、それは必然だ。

・・・・そして、この「縁」の、決定的な不思議な出来事がわかる・・・


座っている位置は、初めて会った時と同じだ。ボクから見てテーブルの左側、一人分を空けて亜貴が座っていた。・・・そう、左斜めの位置だ。

・・・ボクは、今でも、真直ぐ亜貴を見つめられない。
布団の上なら見れる・・・違う、脳に焼き付けるために見てるんだ。

亜貴は、眩しい笑顔でボクを見ていた・・・

また、地面が揺れた・・・

・・・・今日1日しか一緒にいられない・・・

もう半日が過ぎた・・・

あと半日しか一緒にいられない。

・・・その後は、どうするんだろう・・・

・・・これだけの不思議な「縁」を・・・
これだけの「愛してる」を・・・

・・・ボクたちは、どうするんだろう・・・


決めなければいけない・・・

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