「崩壊の街」ボクは不倫に落ちた。

ポンポコポーン

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「人生の価値は息をした回数じゃない」透明人間だった。

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ピグで出会った。
好きになった。

会ってはいけないとわかっていた。
会ってはいけないと律していた。

・・・お互いが既婚者だった。

未曾有の震災が起こった。
死が身近にあった。
「3・11」から1ヶ月。
亜貴は何件もの葬儀に出席していた。
・・・ボクとて、未だに連絡のつかない人間が何人もいた。

人間の命の儚さを知った。
人生の短いことを知った。
・・・・たった一つの命。たった一度の人生。

会いたいと思った。
命をかけても会いたいと思った。
命をかける価値があると思った。

「運命の人」だと「本物」だと思った。

人は笑うに違いない。
友人だったら止めるに違いない。
ブログで読んだなら「クソだな」と冷笑するに違いない。

それでもボクは命を懸けて亜貴に会いに来た。


亜貴の膣に包まれていた・・・・滑らかに抽送を繰り返す・・・
・・・左脚・・・指一本一本を口で愛した。
丁寧に左脚を置いた・・・右脚を捧げ持つ・・・次は右脚だ・・・右脚にとりかかる・・・・


震災の最中。まだ揺れは収まらない。常に地面は揺れている。放射能の危険は未知数だ。
繋がったとはいえ東北道は穴だらけの状態だ。
そんな中をボクは、亜貴に会うため、亜貴に会うためだけにプリウスを走らせやってきた。文字通り命を懸けてやってきた。


人生は短い。


人生の価値は長さじゃない。息をした回数じゃない。呼吸した回数じゃない。

呼吸の止まった回数だ。

はっと息を飲む経験をどれだけしたかが人生の価値だ。
勝敗じゃない。成功の数でもない。
人生の価値は経験値だ。
経験の数は、その人間の重さになる。

誰をも説得できないフワフワと腰の軽い人間。誰もが納得させられてしまう腹の座った人間。・・・それは重さの違いだ。
経験値から滲み出るもの。それが人間の重さだ。

ボクは、亜貴と出会って、亜貴と日々を過ごし、何回も息を飲む瞬間を経験した。
震災で連絡が途絶え、ピグで再会した瞬間、息が止まった。
初めて会った。初めて亜貴に会った瞬間、あまりの美しさに息を飲んだ。

何回も何回も、亜貴と一緒にいて息が止まった。呼吸が止まった。
良い意味でも悪い意味でも、息の止まる経験をした。・・・その全てがボクの人生の重さになる。

他人の行動を冷笑するのはたやすい。
何もしなければ、他人から非難されることもない。

スタートラインに立たなければ、決してゴールはない。
バッターボックスに立たなければ、絶対にヒットは生まれない。

ただただ、観客席にいて・・・ただただ、ビール片手に他人を嘲り、罵詈雑言を浴びせ、他人の行動を嘲笑う。
そんなヤツは、一生軽いだけの人生を送っていけばいい。・・・・そして、死ぬ間際に自分の人生の軽さを後悔すればいい。

・・・そんな生きながらに死んでしまった人生はご免だ。

観客席とグランドでは、同じものが全く違って見える。
自分の「死」と他人の「死」は全く違う・・・当たり前だ。
それと同じように、他人の「歓び」は他人のものであって自分の「歓び」では決してない。
観客席で見る「勝利」とグランドで味わう「勝利」は全く違うものだ。
「勝利」はグランドのものであって、観客席のものじゃない。
観客席は、時間を共有したにすぎない。

ただ「見た」というだけのことだ。

映画は映画でしかない。本は本でしかない。どれだけ感情移入しようが、わかったつもりになろうが知識は知識でしかない。生身の経験とは全く違う。

ボクは、全てを自分の責任で味わいたい。
「歓び」も「敗北」も・・・全て、自分自身の経験として味わいたい。
安全な場所から、他人を「クソ」だと言い募るクソにはなりたくない。そんな人間に興味もない。ボクの人生において相手にする気にもならない。
クソの周りにはクソしか集まらない。そんな汚臭のするところには触れたくもないし、足を踏み入れたくもない。


亜貴がボクに組み敷かれて鳴き声を上げていた・・・・

・・・・今、こうしてSEXしている最中にも、地面は揺れていた。
震度4など驚きもしなかった。
その揺れの中で抱き合い、亜貴を愛し、亜貴の膣に身体を埋めた。

右脚の小指を甘噛みし、薬指との間に舌を這わせた・・・尖らせた舌先で、亜貴の指・・・全て・・・隅々までを味わう・・・
亜貴が呻き、鳴き、のたうち回る・・・・


このまま、再度の大地震がくれば、建物が倒壊すれば、ボクと亜貴は・・・ふたりは全裸で発見されることになる。


・・・命を懸けていた。


物理的な命だけじゃない。

世間では「不倫」の関係だ。
社会的制裁も免れない。
社会的に死ぬ。

覚悟した。

それでも離れられなかった。会いたかった。

会えるのは今日だけだ。
明日には、ボクはこの地を離れる。

次はいつ会えるのか・・・・次はあるのか・・・・何も考えていない。何も約束はしていない。
この事態はどうなるのか・・・・このあと、お互いの命はあるのか。確かなことは何もわからない日々だ。

文字通り、「今」・・・今この瞬間を、命を賭して、命を燃やして愛しあっていた。


SEXは快楽じゃない。「愛」だ。
「愛」が深ければ深いほど、SEXの快楽も深い。

自分勝手じゃなく、相手を思いやり、想いやって、全てを与えたくなる。
もっともっと気持ち良くなって欲しい・・・もっと私で、もっとボクで気持ち良くなって欲しい・・・「愛」だ。
それがSEXだ。


むかし「失楽園」という映画を観たことがある。
映画で繰り返される・・・発せられる台詞の意味がボクにはわからなかった。
ただ、妻子ある男女が・・・いい歳をした中年男女が、ただただSEXをするシーンが続く。
そこに恋愛という要素はどこにもない。
ただただ、身体を求め合うシーンだけが続く。

若かったボクは「つまんない映画」だと思った。
・・・恋愛映画なら、他にいくらでも不朽の名作はある。

しかし、あの主人公たちの気持ちが今ならわかる。

「愛」の行き着く先は究極の快楽のSEXだ。

死んでもいい。溶ける。壊れる。そんな形容詞のつくSEXだ。

そんな経験をしたことがあるか。
号泣するような快楽のSEXをしたことがあるか。・・・快楽の先にある「悦楽」のSEXをしたことがあるか。



・・・亜貴とボクは「悦楽」の中にいた。
すすり泣くほどの悦びの中にいた。
包まれ・・・包み・・・責めながら抱かれた・・・快感を与えながら、その行為こそが快感であり、歓びだった。
・・・身体が溶ける・・・・溶けて、ひとつの身体になるんじゃないかと思った・・・そして、いっそ、ひとつの身体になってしまえばいいのにと思った。・・・・そうすれば永遠に離れ離れにならない・・・そうなりたいと切に思った。

・・・信じられなかった。
会いたかった・・・だから会った・・・SEXした・・・
しかし、これほどの・・・身体がバラバラになるほどの快楽を得るとは思わなかった。
たった一度のSEXで「虜」になった・・・ボクが亜貴の・・・亜貴がボクの「虜」になった。たった一度のSEXが人生を変えてしまうことがある。


ボクの人生は亜貴に出会えた。それだけでいい。
命をかけて会いに来た・・・・それだけの価値があった。
人生で絶対に出会えず・・・だからこそ、絶対に会わなければならない相手だった。


・・・こうなるとは思わなかった。


フラれると思っていた。
ボクは、チビで・・・高校の時には前から2番目だった・・・おまけに高卒で就職して、騙されて借金を背負った大バカ野郎だ。
その金額は3億円以上・・・それも、年々増え続けるという人生を生きている。
「蟻地獄」の真っ只中を生きている。

・・・亜貴は人妻だ。
亜貴の旦那さんは、大学卒で・・・高身長で・・・地元の名士という家柄だ。
・・・・誰にでも、覚えはあるだろう。学校にひとりはいた・・・
成績優秀で、スポーツマン・・・そして、おまけに家柄すら地元の名士。
そんな男の愛妻だ。

「高嶺の華」

それしか言いようのない女性だった。

普通に生きていれば、絶対に接点のない人種だった。
学生時代に出会ったなら・・・クラスメイトだったなら亜貴はボクなんかとは口も聞かなかったに違いない。
スクールカーストの「最上位」と「最下層」・・・いや、ボクは「最下層」にも入れない生徒だった。

・・・ボクは、誰の記憶にも残らない・・・透明人間のような生徒だった。

虐められていた。
小学校、中学校・・・そして高校と虐められ続けてきた。


・・・亜貴が、ボクに組み敷かれて鳴き声を上げていた。
亜貴の膣に包まれていた・・・・滑らかに抽送を繰り返す・・・悦楽の焔を亜貴に送り込む。


・・・こうなるとは思わなかった。


脚の指一本一本を口で愛した。指一本一本を舐った。
これまでに経験したことのない執着さで指の一本一本を舐った。
亜貴に鳴き声を上げさせる・・喉が涸れるほどに鳴かせる・・・亜貴に気持ち良くなって欲しかった・・・泣くほどに気持ち良くなって欲しかった・・・


昨日は亜貴に会えなかった。
亜貴は、旦那さんと1日一緒にいた。・・・二人っきりでだ。
SEXしていたらどうしよう・・・夫婦だ・・・求められたらするに違いない・・・
身悶えた。嫉妬の焔に身を焦がした。


鳴かせる。亜貴を鳴かせる。


・・・「嗜虐」の悦びがあった。


快楽を与えるだけじゃない・・・亜貴への嗜虐の悦びがあった・・・
己が中に、明らかな嗜虐の暗い焔があった。


・・・もう、亜貴を誰にも渡したくない。
奪ってしまいたい・・・そう思った。


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