「崩壊の街」ボクは不倫に落ちた。

ポンポコポーン

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「心に線を引く」待ち疲れた。

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いつものように暗い中で目覚めた。

仕事部屋に入った。
窓の外は、まだ真っ暗だ。
PCを立ち上げる。時計は6時前だった。
ゆい の部屋に行き「きたよ」を鳴らした。

・・・1日が始まる。


年も明けて、日常生活へと戻っていった。

正月休みの間に、なんとなく仲直りのようになってしまい・・・ケンカしたわけじゃないけどさ・・・・ ゆい の娘さんも学校生活が始まった。旦那さんも仕事に戻った。

ボクと ゆい のやりとりも日常に戻っていった。


・・・楽しかった。
ピグで、ふたりで話していることが楽しかった。



出会ってから、毎日話した。楽しかった。
・・・しかし、ふたりは既婚者だ。
話したい時に自由に話せるわけじゃない。
お互いに時間を合わせることは簡単なことじゃない。
それがフラストレーションとなって、お互いの言葉に「棘」があるようになってしまった。

「ご飯用意の時間だもんね・・・」
「奥さん帰ってきたんだね・・・」
「塾の時間か・・・」
「クリスマスだもんね・・・」

楽しく話ができないようになっていた。



珈琲を飲んで、日経新聞に目を通す。
お嫁さんは、まだ眠っていた。

仕事部屋に入ってPCを立ち上げる。
窓から公園が見えた。
高齢者が数人、散歩していた。

今日は1日、図面を描く。

部屋の扉は開けっぱなしにしていた。
トイレに行くにも、キッチンに行くにも楽だからだった。
それに・・・

「行ってきまーす」

お嫁さんがパートに出かけた。

「はいよー気をつけてなー」

パートに出る、お嫁さんに声をかけるのも楽だったからだ。



昼食。
リビングでテレビを見ながらカップ麺を食べた。

珈琲を飲んで休憩して、仕事部屋に戻った。


・・・ゆい と、正月、偶然のようにピグで会えた。

楽しかった。やっぱり楽しかった。
ふたりで話すことがすごく楽しかった。

・・・・お互いにとって、お互いが「一番落ちつける相手」なんだと再確認させられる結果になってしまった。


大事にしなければならない存在だった。


また、毎日のようにピグで話していた。
それでも、前とは違って、どこかで「線」を引いていた。

会いたい時に会えない。
話したい時に話せない。

考えてみれば当たり前のことだ。そんな状況にフラストレーションを感じることがおかしい。


いったい何を求めている。

相手に何を求めている?
どうしたい?
何がしたい?

・・・・これ以上を求めてはいけない。

そう考えれば「会えて話せる時が大事」それだけでいい。そう思った。
ピグでのことはピグでのことであって、リアル世界とは別のことだ。

ピグの世界にリアル世界を引きずってはいけない・・・・
リアル世界にピグの世界を引きずってはいけない・・・・

お互いに、そう一線を引いたように感じていた。

ピグで会えて、話せれば楽しい。ただ、それだけでいい。



公園には日差しが入っていた。
ベビーカーのお母さんたち。

朝から ゆい を待っていた。

1日図面を描く日は ゆい に会えることを楽しみにしていた。いつもの移動の最中での、スケジュールを気にしながら話すのとはちがい、時間を気にせずゆっくり話せるからだった。
・・・しかし、今日は、珍しく、朝の「きたよ」がなかった。

・・・・気にはなる。寂しいとは思う。

しかし、それだけだ。

毎日、何も手につかないくらい ゆい に会いたかった。
話していたかった。

朝起きれば、すぐにPCを立ち上げ、 ゆい の部屋に行った。
そこで、少しでも会いたかった。話したかった。

・・・お互いにそうだった。

・・・だからこそ「会いたいのに会えない」と、フラストレーションを募らせた。
結果として、仲良く話ができなくなってしまった。


仲直りはした。
仲良くい続けるために、心で「線」を引いた。

・・・・そこもお互いだった。

朝の「きたよ」が絶対ではなくなっていた。
時には昼になっていた。

そうすることで、お互いが、お互いに対しての「のめり込まない」との宣言にみえた。

・・・・寂しい・・・しかし、それ以外に、どうすればいい・・・?

「のめり込まない」ことで、言葉に「棘」を宿すことなく、会って話すことを楽しい時間にすることができた。

中高生のような感情の制御できない行動から、大人として制御できるようになったということか。

・・・・そもそも「ピグとも」それ以上にはなれない。
どうすることもできない。

のめり込んではいけない。

・・・・しかし、会うことは止められなかった。
話すことを止めることはできなかった。

・・・楽しく会いたい。楽しく話したい。・・・だからこそ、これ以上のめり込んではいけなかった。



ゆい の部屋にいた。

センス良く機能的にまとまった部屋。
座り心地のいいソファに「カズくん」は座っていた。

ピグは、動きを止めると・・・放置すると「ZZZ・・・」と寝落ちしてしまった。

カズくんは寝入っていた。・・・ゆい を待ち疲れた。

図面に専念した。
ゆい が入ってくれば音で知らされた。

今日は、まだ会えていない。
「きたよ」すら、まだなかった。

4時が近い。
今日描くべき図面は、出来上がった。

珈琲を入れた。
公園に日差しがなくなった。曇り空。葉を落とした木々が寒そうだ。
人影もなかった。
もう少しすれば、5時を回れば帰宅する人々が現れる。


PCから音が鳴った。

慌てて、画面をピグに切り替えた。

ゆい がいた。

トコトコと歩いて、いつものようにボクの隣に座った。


「今日、朝どうしたの?」

カズくんが開口一番に言った。・・・・のめり込まないように気持ちで線を引いていた。なのに、待ち疲れて口をついた最初の言葉はこれだった。

「旦那さんが会社まで送ってって言うから・・・・」

なんとなく、毎日「きたよ」の時間や、手紙のやり取りの時間が一定してくる。
お互いの生活パターンがわかるようになっていた。
だから「きたよ」ひとつ、毎日と同じ時間じゃないだけで心が乱れた。

「今日から出張で、荷物多いから車で送ってって・・・」

旦那さんの会社は仙台駅周辺らしい。

「車で1時間くらい・・・・冬だからね。普段はもうちょっと早いんだけどね・・・」

そっか・・・「旦那さん」・・・ゆい は人妻だ。改めて思い知らされる。

「大変なんだよ雪国って、毎日毎日雪かきしなきゃいけないんだよ・・・もう雪かきヤダー。雪って重いんだからね!」

雪国のアルアルであろう話を、ボクは笑いながら聞いていた。
ゆい も楽しそうに話していた。

けっきょく、話せば、すぐにふたりだけの楽しい世界に入り込んだ。


・・・突然、部屋に女のヒトが入ってきた。

・・・・ゆい がピグの部屋の鍵を閉めるのを忘れていたらしい・・・・


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