「崩壊の街」ボクは不倫に落ちた。

ポンポコポーン

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「名前はカズくん」原因はゆいさん。

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暗闇の中で目覚めた。

布団から、そっと抜け出す。

窓の外は、まだ冬の夜。
リビングの時計は朝6時前。

歯を磨く。

目覚ましは使わない。
横で寝ているお嫁さんを起こしたくないからだ。・・・寝かせておいてあげたい・・・

・・・そんな生活が何年になるのか・・・

目覚ましがなくても6時前後には目覚めた。
体内時計が勝手に働いた。


珈琲を飲み・・・朝食はとらない・・・・子供の頃からの習慣だった。
日経新聞に目を通す。・・・社会人になってすぐからの習慣だ。
今となっては、別に日経新聞である必要もない。・・・それでも習慣として止められなかった。

株価の下落が続いていた。・・・別にボクには関係ない。
今となっては必要のない記事を読み、今となっては必要のない知識を蓄えた。


PCを立ち上げる。

すぐにブログページを開く。
ピグの部屋に入る。

彼女の部屋に行き「きたよ」のベルを鳴らした。


・・・・・すぐに彼女が現れた。

・・・えっ?え?えー?

「おはよー」

「おはよー」

「びっくりした」

「入ったらポンポコさんいた。すごいタイミングだね(笑)」


朝は慌ただしい。
彼女にとっては、主婦の最も忙しい時間だろう。

「今日も話したい」

「ウン!」

「終わりの時間みえてきたら手紙書くね」

「わかった。待ってるね。お仕事がんばってねーー」


ピグの部屋には「きたよ」で来訪時間が、そして手紙が残せた。
ピグの部屋の出入りには許可がいる。

サンクチュアリだった。
ふたりだけの聖域だった。


プリウスを運転して客先に向かう。
今日も都内は渋滞だ。
ましてや、朝の通勤時間帯。
渋滞の車両を縫う様にバイクが走って行く。高校生の自転車も駆け抜けていく。


午前中のミーティングが終わってコンビニで昼食をとる。
サンドイッチに缶珈琲。
メールを確認し、いくつかの電話をして午後のスケジュール先へと向かう。

午後からは千葉県の客先だ。

移動中の車内では音楽を流している。

ひとり移動が多い。
せめて車の中ではリラックスしていたい。
好きな音楽を聞き・・・洋楽が多かった・・・ジャンル、アーティストに特別なこだわりもない。
脈絡はない。その時々で好きな音楽を聞いた。

エミネムの後でカーペンターズが流れたりする。


千葉でのミーティングは思ったよりスムーズに終わった。
今日の終わりが見えてきた。
客先の駐車場でPCを立ち上げる。

「17時には入れる。部屋に行くよー」

ピグの部屋に手紙を残す。

「わかったー」

返事がきた。


17時前にコンビニの駐車場に車を入れる。
PCを立ち上げ、ピグに入る。
すぐに彼女の部屋へ。

彼女が待っていた。
ニコニコして彼女が待っていた・・・・無機質なピグがそう見えた。


「もう12月だね・・・1年早いよねぇ・・・年々早くなる・・・」

彼女が言う。
部屋にはテーブルがあって、仲良く座ってる二人のピグがいた。

「10歳の子供にとって1年は1/10だけど、30歳にしたら1/30・・・数字としてはドンドン小さくなる だから年々早くなるんだよね」

「そっかぁ・・・・歳とったって証拠なのね(笑)」

そんな話をしていたら、すぐに1時間が経ってしまった。

「子供迎えに行かなきゃ・・・・」

彼女は、娘さんを学校から塾へと送り迎えしているんだった。

「うん、わかったよ。気をつけてね」

後ろ髪は引かれる。
それでも、こうしてピグで自由に会えることがわかった。

お互いのピグの部屋にも出入りができる。
なんたって「ピグとも」だ。

気分は楽だ。
いつでも会える「ピグとも」だ。友だちだ。


「なんか呼び方教えて・・・」

彼女が言った。

ボクはブログの名前、ピグの名前を「ポンポコポーン」としていた。

お好み焼きの「道頓堀」によく行った。
「道頓堀」は、来店すると「ポンポコポーン」と音が鳴った。あれが面白くて、深い意味も考えずブログタイトルで使った。
それで、ピグの名前も「ポンポコポーン」

確かに、ピグで話していると呼び辛い。

「ポンポコポーンさんは・・・・」

ってな会話になる。

ピグでは「ポンポコ」って呼ばれることが多い。
でも、なんか違和感はあるよな。
・・・いい大人が「ポンポコさん」ってのもなぁ・・・


「カズアキ 平和の和に明るいの明。 カズ でいいよ みんなからはそう呼ばれる」

「じゃあ カズ君ね」

「うん」

ボクは彼女を「ゆいさん」と呼んでいた。
ピグの名前が「ゆいゆい」だったからだ。

「カズ君、ありがとう、じゃあ行くね・・・」

「うん、ゆいさんも気をつけてねー」

「ゆいさん」が画面から消えた。

PCの電源を切った。

・・・・現実世界に戻った。


日が暮れていた。
1日の終わりの時間になっていた。

首都高では帰宅ラッシュの渋滞が始まっている。
トラックから吐き出される真黒なディーゼルエンジンの排気ガス。
ストップランプの赤い光の列・・・

これから2時間弱を運転して帰路につく・・・・

それでも、気分は悪くなかった。
首都高を走るのは好きだからだ。

ゲーリームーアが流れていた。
・・・・気がつけば、このバラードを随分長く聞き続けてきた。

好きな音楽を聞き首都高を走る。ちょいとしたドライブ気分だ。
だから気分も悪くない。むしろ良かった・・・

・・・ちがうな・・・

「ゆいさん」だった。

ゆいさんと話せる毎日が、ボクの気分をホッとしてるんだ。あったかくしてるんだ・・・


・・・氷が溶けていくように・・・


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