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ーイントロダクション(中編)ー

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○●○●○

 地下に作られている、街のいろいろな場所に繋がる通路を爆走していたら、

「もうすぐ、到着です。
 3番扉から、出てください。」

 バギーの声が聞こえた。
 その声に従って、妖怪獣の出現場所に1番近い場所に出られる3番扉に向かっていく。
 近付くと、

 スーッ

 扉が上がり、外の光が差し込んできた。
 扉を抜けると、そこはとあるビルの屋上だった。
 加速して、設置されているスロープから空に飛び出す。

「飛行形態!ですのっ。」

 なごみ の指示でバギーの4つの車輪の外側が下を向き、ホイールから反重力が発生し、空を駆けていく。
 少し進んだ先から人々の悲鳴が聞こえてきた。

「うひぃ、べろべろされてるですの。。」

 なごみ が悲壮な声で呟いていると、

『うっわ、まっぱになってる。。
 なごみ、気をつけろよ。』

 モニターから状況を見ている ゆとり が声を掛けてきた。

「うぬぅ、完全に他人事ひとごとですのぉ。」

 ぷりぷりのなごみに、

『とにかく、あの舌に舐められんようにな。
 頑張れよ!』

 ゆとり が指示と声援の声を掛けてきた。

「うにゅん、頑張るですの。。」

 なごみ が答え、バギーの上で立ち上がると、シートの後部に付けられた収納箱から横笛を取り出した。
 そして、風にはためくスカートを気にもせず、

 ぷひょろ~、ぴひょひょろろ~♪

 調子外れの残念メロディーをかなでた。
 眼下では、妖怪獣と垢人形てしたたちがキョロキョロと音のぬしを探している。
 程なく、

「そこだべろ~!」

 見つかり、妖怪獣べろりんちょ の舌が伸びて向かってきた。
 それをかわし、

「とーっ!、ですのっ。」

 バギーから飛び下りた。
 空中でくるくると回り、優雅に着地すると、

「お前ら、やってしまうべろ~!」

 べろりんちょ が垢人形てしたたちをけしかけてきた。
 迫ってくる垢人形たちを、

 するするっ

 と優雅な動きでいなしながら、

 ばしっ

 横笛でたたき、

 ふわっ

 回し投げていく。

「や、やるな、貴様、何者だべろ~!」

 べろりんちょ に問われ、

「あらぁ、わたくしをご存知ないですの?」

 首をかしげ、不思議そうな表情で問い返した。

「知らんべろ~!」

 なごみ の様子を油断と見たのか、べろりんちょ が舌を伸ばした。

「うひぃ、ですの!?」

 迫る舌に小さな悲鳴を漏らすも、

「とーっ!、ですのっ。」

 後方に飛び退すさり、

「お召し替え!、ですのっ。」

 武装の指示語コマンドを発した。

○●○●○

『お召し替え!、ですのっ。』

 司令室で状況をモニタリングしていた ゆとり が、なごみ の言葉に反応し、

 タタタタタ

 軽快にキーボードを打って、”BUSOU”と入力し、最後に、タンと[ENTER]キーを叩き、

戦闘装備バトルアームド、転送!」

 音声コードを発すると、部屋の隅に置かれている なごみ の戦闘装備バトルアームド薄橙色オレンジの光を発し、消えた。

○●○●○

 なごみ が付けている腕時計は戦闘装備バトルアームドの転送装置になっている。
 なごみ は腕をくるくると動かし(※特にする必要はない)、最後に腕を曲げて腕時計の文字盤を自分の方に向けた。
 文字盤から放出された粒子が なごみ の体全体を包み込み、薄橙色オレンジに輝く戦闘装備バトルアームドの形に戻った。

 たん

 地を蹴ると通常の5倍の力が発揮され、三階建てのビルの屋上に飛び上がった。
 そして、

「妖怪獣捜査官、和心姫なごみひめ!ですのっ。
 この星で、悪さをなさる妖怪獣、わたくしがお相手するですの!」

 名乗り口上のあと、カッコつけポーズを決めた。

「貴様が我らの邪魔をする捜査官べろ~。
 ならば、このべろりんちょ様がその力、舐め取ってやるべろ~。」
「うひぃ、え、遠慮するですの。」

 そう言ってくるっと背を向け、帰ろうとする和心姫なごみひめに、

「逃げるなべろ~!」

 あかを飛ばしてきた。
 飛んできた垢が垢人形に変わり、和心姫なごみひめに襲いかかってくる。
 それを、

超撃大槌てっつい!ですのっ。」

 背中に付いている武器、超撃大槌てっついを外し、

 どごーん!

 優雅な動きで振り回し、ぶっとばしていく。
 その様子を見て、

「や、やばい、もの凄く強いべろ~。
 このままではやられちまうべろ~。」

 恐怖で舌がかわくのを感じ、あせった べろりんちょ の、

「開け、妖界門!べろ~。」

 叫びに反応して、その背後に大きな門が現れ、

 ギィーーーッ!

 ゆっくり扉が開き、べろりんちょ が吸い込まれるように入っていった。
 さらに、和心姫なごみひめをも吸い込もうとしている。

「うぬぅ、またこれですの!?」

 体が門に近付いていく。
 門の中は妖怪獣の力が増幅される特殊空間になっている。
 けれど、追わなければ捕まえられない。
 なので、

バギーよっくん、来るですの!」

 バギーを呼び寄せた。
 近付いてきたバギーに飛び乗り、そのまま門の中に突入していった。

○●○●○

「来たか、捜査官べろ~。
 妖界ここが貴様の墓場だべろ~。」

 妖界に充満するエネルギーを吸収し、体の大きさが倍に、パワーが3倍になった べろりんちょ が言い放つ。
 その言葉を聞いた和心姫なごみひめが、

「あのぉ、いっつも思うのですが、何故同じ事しか言わないんですの?」

 問い掛けた。

「同じ、事?べろ~。」

 べろりんちょ が不思議そうな表情で聞き返してくる。

「どなたも”ここが墓場”と言ってくるですの。
 けれど、どこにも”墓場”なんてないですの。」

 和心姫なごみひめの返しに、

「墓場ってのは、貴様の墓場になるって事だべろ~!」

 キレた べろりんちょ の巨大な舌が向かってくる。

 バギーに立ち乗った状態でかわしていたが、どんどん速度が上がっていきけきれなっくなってきた。
 迫りくる舌を超撃大槌てっついなぐったが、ぐにゅっと衝撃を吸収されてしまい、ダメージにはならない。
 そして、

「うわわわっ、ですの!?」

 バランスを崩してバギーから落ちてしまったが、

 ふおん

 背中の反重力扇はんじゅうりょくふぁんが自動起動し、地面への落下はまぬれた。
 空中に浮いている和心姫なごみひめに舌が迫ってくる。
 のを、慌て気味に、

「た、盾、展開!ですのっ。」

 発した言葉に反応して、左腕に備え付けられている複数の板がまるく展開して”盾”になり、

 べしん!

 舌の攻撃を防いだ。
 けれど、

「うわわわぁぁぁ、ですのーーー!」

 舌の強力な攻撃力と浮いていたのとで、吹っ飛ばされた。
 追い打ちを掛けるように、

「うひぃ、やめるですのぉ!?」

 垢団子あかだんごをマシンガンの弾のように大量に飛ばしてきた。

 べちゃ、べちゃ、べちゃ、べちゃ、べちゃ

 なんとか盾で防いでいたが、

「ふぎゃん、ですのぉ。。」

 1つが頭部外装ヘルメットに当たり、視覚センサーがふさがれ、

 どさっ

 墜落ついらくした。
 慌てて立ち上がろうとしたが、べろりんちょ がその隙を見逃してはくれず、垢団子あかだんごの集中砲火が襲いかかってきた。
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