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#55.okinawa 真相
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「昔のことよ。私の夫、桐谷茂雄とそこにいる具志堅、真栄城、フランスからの留学生のモーリスという男が組んで宜野湾国際大学でサークル活動を行っていた。完全犯罪を研究するというどうしようもないサークルよ。私は桐谷と当時交際していたけれどそのサークルには入っていなかった。彼はもう1つ学生運動家として活動していた。わたしは彼のその革命を起こそうとする情熱に惹かれたの。私は学生運動をともに行っていた。役目は武器の製造。警官隊に対抗するために爆薬なんて数え切れないほど作ったわ」
具志堅が苦虫を噛み潰したような顔で美佐江の話を黙って聞いている。
「ある日、桐谷からサークルメンバーで東京に卒業旅行へ行くと言われた。そこで彼はサークルの人間たちがその卒業旅行であることを計画していると話してくれたの」
「府中市での3億円強奪計画だな」佐倉が確認する。
「そう。桐谷は大反対した。あくまでそのサークルは映画鑑賞が趣味という集まりから始まり完全犯罪を研究しようとなったもの。まさか本当に完全犯罪をするなんて彼は夢にも思っていなかった。でも周りは彼の忠告を聞き入れなかった。彼は結局、卒業旅行に同行したわ。計画を阻止するためにね」
「桐谷茂雄は犯行グループの中に入っていなかったの?」愛子が質問する。
「計画を止められなかった。だから厳密にいうと共犯みたいなものだろ」
佐倉が愛子の疑問に自分なりの解釈で答える。
「主だった計画を立てたのはそこにいる具志堅よ。白バイ警官に扮し現金輸送車に近づいたのは真栄城。爆発を示唆して、警備員を車から遠ざけて自分はその車に乗って去っていった。今、考えれば安易よね。でもそれが成功した。他のメンバーは真栄城が奪った車を捨て去る場所で合流。彼を拾ってまんまと逃げたというわけね」
「だがそこで不思議なことが起こる。あの有名なモンタージュ写真だ。あの顔は桐谷茂雄の写真だろ」
「そうよ。それは警察と具志堅の計画・・・」
「警察との計画?どういうことだ!?」
警察というフレーズが出てきて仲間が思わず反応する。
「やっぱりな」
佐倉の言葉に皆が注目する。
「ここで最初の問題です」
佐倉が話を中断し、人差し指を立てて全員に声をかける。
「40年前に起きた3億円事件。あれだけ手がかりを残しながら未解決になっている。もはや都市伝説に近い。奪われた3億円はどこへ行ったのか?」
佐倉は犯行グループが写っている写真を取り出した。
「ヒントはこの写真。これはここ沖縄の大舞寺で撮影されたものだ」
佐倉が言わんとしていることがまだ皆には伝わらない。
「沖縄。日本政府が立ち入ることができない場所がある土地」
「米軍基地?」仲間が声を上げる。具志堅と美佐江が睨み合っている。
「そうだ。この金は奪った後に一度米軍基地に運ばれマネーロンダリングされた。違うか?美佐江さん」
「そうよ。彼らは沖縄という土地の特徴を生かした犯罪計画を立ち上げた。そしてそこにいる具志堅が重要な役割を果たした。警察との関係性よ。彼らは奪った金を元手に新しいビジネスを展開しようとした。それが・・・」
「麻薬ビジネス」佐倉が美佐江の言葉を拾う。
「大舞寺で栽培されているのもその延長だな」
「栽培!?」思わず比嘉が反応する。
「しかし警察が何で絡んでくる?」仲間が質問する。その質問に佐倉がふっと笑った。
「そこでさっきの問題の続きになる。マネーロンダリングされた3億円の使い道。単に麻薬ビジネスと言っても最初はその仕入れが必要だ。その仕入先が・・・」
「まさか!?」一同が目を見開く。
「そう、警察さ。押収した麻薬の横流し。警察にとっても旨味のある話だ。押収した薬物なんて置いていても何にもならないからな」
「佐倉!貴様ふざけたこと言うな!」
仲間が佐倉に詰め寄り襟元を掴む。警察を侮辱されたことを見過ごせないのはわかる。
しかし・・・。
「彼の言っていることは本当よ」美佐江がはっきりと口にした。
「具志堅は警察とのパイプを作り、警察が押収した麻薬を買い取った。その量は3億円なんてものじゃないわ。彼の言うとおり、警察にとっても美味しい話だった。彼らは警察から麻薬を買い取って、ビジネスを始めるのも最初から計画に入っていたのよ。だけどそこに邪魔者が入った」
「桐谷茂雄」佐倉はもう自分の考えに確信を持っていた。
「そうよ。彼は警察との取引を行うのに大反対したわ。そして仲間割れ。典型的なパターンね。そこでそこにいる具志堅が取った行動があのモンタージュ写真よ。警察にとっても具志堅たちにとっても桐谷は危険分子。と同時に警察は横流しをしているだけあって出来るだけ世間の3億円事件への関心を薄めたかった。桐谷は命の危険を感じて逃走したわ。それでも警察は指名手配のモンタージュ写真に桐谷の顔を使うことにより早めに桐谷の拘束に動いた。彼は学生運動の活動家として有名な存在だったからね。写真素材はあったし、いずれ学生運動のほうへ姿を表すと踏んでいた」
「そして案の定、姿を表した」
「それと同時にあの写真を利用することによって他の学生運動活動家の情報も得られる可能性もある。うまいこと考えたわ。見つかった桐谷は警察と具志堅たちに始末され、他の学生運動家も拘束されていった。それが3億円事件の真相よ。そしてその真相を知り、息子の浩は事件の公表を行おうとした。ところがフランスの刑事に邪魔され浩も逆に消された・・・」
「それがパリで殺されたパリ警視庁の警視か?」
仲間の声が高くなる。しかしそれは違う。
「そいつはどうかな」
佐倉はポケットから携帯電話を取り出しマルセルへ投げた。
「答えはその携帯電話が知っている」
まるで子供の頃のリレー競走でバトンを渡したような気分だ。
佐倉は笑った。さぁ、今度はパリ側の事件の真相に近づこうか。
具志堅が苦虫を噛み潰したような顔で美佐江の話を黙って聞いている。
「ある日、桐谷からサークルメンバーで東京に卒業旅行へ行くと言われた。そこで彼はサークルの人間たちがその卒業旅行であることを計画していると話してくれたの」
「府中市での3億円強奪計画だな」佐倉が確認する。
「そう。桐谷は大反対した。あくまでそのサークルは映画鑑賞が趣味という集まりから始まり完全犯罪を研究しようとなったもの。まさか本当に完全犯罪をするなんて彼は夢にも思っていなかった。でも周りは彼の忠告を聞き入れなかった。彼は結局、卒業旅行に同行したわ。計画を阻止するためにね」
「桐谷茂雄は犯行グループの中に入っていなかったの?」愛子が質問する。
「計画を止められなかった。だから厳密にいうと共犯みたいなものだろ」
佐倉が愛子の疑問に自分なりの解釈で答える。
「主だった計画を立てたのはそこにいる具志堅よ。白バイ警官に扮し現金輸送車に近づいたのは真栄城。爆発を示唆して、警備員を車から遠ざけて自分はその車に乗って去っていった。今、考えれば安易よね。でもそれが成功した。他のメンバーは真栄城が奪った車を捨て去る場所で合流。彼を拾ってまんまと逃げたというわけね」
「だがそこで不思議なことが起こる。あの有名なモンタージュ写真だ。あの顔は桐谷茂雄の写真だろ」
「そうよ。それは警察と具志堅の計画・・・」
「警察との計画?どういうことだ!?」
警察というフレーズが出てきて仲間が思わず反応する。
「やっぱりな」
佐倉の言葉に皆が注目する。
「ここで最初の問題です」
佐倉が話を中断し、人差し指を立てて全員に声をかける。
「40年前に起きた3億円事件。あれだけ手がかりを残しながら未解決になっている。もはや都市伝説に近い。奪われた3億円はどこへ行ったのか?」
佐倉は犯行グループが写っている写真を取り出した。
「ヒントはこの写真。これはここ沖縄の大舞寺で撮影されたものだ」
佐倉が言わんとしていることがまだ皆には伝わらない。
「沖縄。日本政府が立ち入ることができない場所がある土地」
「米軍基地?」仲間が声を上げる。具志堅と美佐江が睨み合っている。
「そうだ。この金は奪った後に一度米軍基地に運ばれマネーロンダリングされた。違うか?美佐江さん」
「そうよ。彼らは沖縄という土地の特徴を生かした犯罪計画を立ち上げた。そしてそこにいる具志堅が重要な役割を果たした。警察との関係性よ。彼らは奪った金を元手に新しいビジネスを展開しようとした。それが・・・」
「麻薬ビジネス」佐倉が美佐江の言葉を拾う。
「大舞寺で栽培されているのもその延長だな」
「栽培!?」思わず比嘉が反応する。
「しかし警察が何で絡んでくる?」仲間が質問する。その質問に佐倉がふっと笑った。
「そこでさっきの問題の続きになる。マネーロンダリングされた3億円の使い道。単に麻薬ビジネスと言っても最初はその仕入れが必要だ。その仕入先が・・・」
「まさか!?」一同が目を見開く。
「そう、警察さ。押収した麻薬の横流し。警察にとっても旨味のある話だ。押収した薬物なんて置いていても何にもならないからな」
「佐倉!貴様ふざけたこと言うな!」
仲間が佐倉に詰め寄り襟元を掴む。警察を侮辱されたことを見過ごせないのはわかる。
しかし・・・。
「彼の言っていることは本当よ」美佐江がはっきりと口にした。
「具志堅は警察とのパイプを作り、警察が押収した麻薬を買い取った。その量は3億円なんてものじゃないわ。彼の言うとおり、警察にとっても美味しい話だった。彼らは警察から麻薬を買い取って、ビジネスを始めるのも最初から計画に入っていたのよ。だけどそこに邪魔者が入った」
「桐谷茂雄」佐倉はもう自分の考えに確信を持っていた。
「そうよ。彼は警察との取引を行うのに大反対したわ。そして仲間割れ。典型的なパターンね。そこでそこにいる具志堅が取った行動があのモンタージュ写真よ。警察にとっても具志堅たちにとっても桐谷は危険分子。と同時に警察は横流しをしているだけあって出来るだけ世間の3億円事件への関心を薄めたかった。桐谷は命の危険を感じて逃走したわ。それでも警察は指名手配のモンタージュ写真に桐谷の顔を使うことにより早めに桐谷の拘束に動いた。彼は学生運動の活動家として有名な存在だったからね。写真素材はあったし、いずれ学生運動のほうへ姿を表すと踏んでいた」
「そして案の定、姿を表した」
「それと同時にあの写真を利用することによって他の学生運動活動家の情報も得られる可能性もある。うまいこと考えたわ。見つかった桐谷は警察と具志堅たちに始末され、他の学生運動家も拘束されていった。それが3億円事件の真相よ。そしてその真相を知り、息子の浩は事件の公表を行おうとした。ところがフランスの刑事に邪魔され浩も逆に消された・・・」
「それがパリで殺されたパリ警視庁の警視か?」
仲間の声が高くなる。しかしそれは違う。
「そいつはどうかな」
佐倉はポケットから携帯電話を取り出しマルセルへ投げた。
「答えはその携帯電話が知っている」
まるで子供の頃のリレー競走でバトンを渡したような気分だ。
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