49 / 60
#49.okinawa 訊問
しおりを挟む
病室の前では仲間刑事と比嘉刑事がすでに待っていた。
「ちょっとはマシな顔に戻ったな」
「どうも」
「真栄城への聴取はお前に任せる」
仲間の言葉に佐倉だけではなく、その場にいた太田、比嘉も驚いた。
「本来はあり得ない措置だ。しかし事件解決のためなら手段を選ばん」
「感謝するよ」
「ただし無理はするな。一応相手は目が覚めたばかりの重症患者だからな」
「わかりました」
佐倉はゆっくりと病室の扉を開けた。
真栄城はベッドの上に横たわったまま顔には酸素吸入のフェイスマスクを着用させられていた。成人男性が一度に4人も病室に入ってきた異様さに、看護師が少し驚きの表情を見せる。しかし警察から聴取の話は通っていたため、看護師はすぐ退室した。
「わかりますか?」
真栄城に近づき、ゆっくりと佐倉は問いかけた。目を半分開き、眼球だけを動かして佐倉の存在を確認した真栄城は「あぁ」と声を漏らした。話すのも少し苦しそうだ。
「河村杏奈が火災の際に殺された。知っていますね?」
「あぁ。刑事から聞いた」
「殺したのは誰だと思いますか?」
「・・・・・・・」
「では質問を変えます」
佐倉はジャケットの内ポケットから1枚の写真を取りだした。色あせた写真、真栄城は目を見開き驚いた表情をしている。パリでマルセル警部と吉村から貰った3億円事件実行グループの写真。
「これはあなた、これは具志堅知事・・・」
佐倉が1人1人を指差しながら真栄城に確認を取る。写真が初見の仲間や比嘉も驚きながらも口を出さず、なりゆきを見守ってくれている。
「これは桐谷、杏奈の祖父だ。そしてこれがフランスの刑事」
刑事というところで仲間の表情が固まったのが空気で伝わった。しかし止めるわけにはいかない。
「あんたに頼みたいことは1つ。誘拐犯の要求は真実の公表。このうち生きているのはあんたと具志堅だけだ。そして具志堅は公表を拒否した。あんた真実の公表が出来るか?誘拐された子供を助ける為に」
1番大切なのはまず誘拐された子供の身柄。自分の身内ではないものの、被害者である子供を助ける良心がこの男にあるか。
「私には関係ない」
やっぱりか。想定内の返答だった。
「あんた、杏奈の母親を探せと言ったな。あれはどういう意味だ」
「・・・・・・・」
「杏奈を殺したのは祖母だな」
佐倉の一言に一同がさらに驚く。真栄城の表情を見るとあながち河村修一の推測は間違っていなかったらしい。
「杏奈の祖母と母親は一緒か」
「多分・・な」
「どこだ?」
「・・・・・・・」
「どこなんだ!?」
たまらず比嘉刑事が怒鳴る。しかし真栄城は答えようとしない。
「ここだろ?」
次に佐倉はもう1枚の写真を出した。もう自信はあった。佐倉の推測ではおそらく誘拐された子供もそこにいる。
「ふっふ、ははは」
真栄城が力なく笑う。
「もう具志堅も終わりだな。小僧、お前の推測通りだ」
「3億円事件の実行犯、主犯格は具志堅知事か?」
横から仲間刑事が入ってくる。いよいよ確信に近づく。
「はは。本人は自分がリーダーと思っていただろうな。けれど踊らされていただけだ。具志堅だけじゃない、全員だ」
「誰に?」
「小僧、さっきの写真で生き残っているのは俺と具志堅だけと言ったな。お前はまだまだわかっていない」
「どういう意味だ?」
「全員、踊らされていたんだよ。その写真を撮ったやつにな」
「子供はどこにいる?」
病室を出ると真っ先に比嘉刑事が佐倉に詰め寄ってきた。しかし佐倉は答えない。代わりに仲間刑事に向き直る。
「子供は無事だ。居場所の在処にも自信がある。だが今子供を救出したところで誘拐事件が解決した、というだけで40年前のことは闇に葬られるだけだ。それにパリで起きた桐谷殺害の件も残っている」
「どうしたいんだ?」
「もう少しだけ待ってほしい。そしてあんたには調べてほしいことがある」
佐倉は1つの携帯電話を取り出した。
「何だ、これは?」
「桐谷殺しの目撃者が使用していた携帯電話だ。その契約者名義を調べてほしい」
「どこからこんなものを?」
「パリ警視庁の人間だ。しかし向こうさんも単独捜査、日本の警視庁を通して調べれば握りつぶされる恐れがある。俺に託してくれた。そして俺はあんたに託す」
「俺が握り潰すとは思わないのか?」
「そしたら俺が人を見る目が無かった。ということだ」
「ふっ。わかった。しかし時間をもらうぞ」
「頼みます」
「しかしさっきの写真、あれは何だ?」
携帯電話を受け取ると仲間は怪訝そうな顔で尋ねてきた。無理もない、あんな写真1枚じゃ何もわからないだろう。写っているのは紫色したどこにでもあるような御守りの写真だったのだから。
「ちょっとはマシな顔に戻ったな」
「どうも」
「真栄城への聴取はお前に任せる」
仲間の言葉に佐倉だけではなく、その場にいた太田、比嘉も驚いた。
「本来はあり得ない措置だ。しかし事件解決のためなら手段を選ばん」
「感謝するよ」
「ただし無理はするな。一応相手は目が覚めたばかりの重症患者だからな」
「わかりました」
佐倉はゆっくりと病室の扉を開けた。
真栄城はベッドの上に横たわったまま顔には酸素吸入のフェイスマスクを着用させられていた。成人男性が一度に4人も病室に入ってきた異様さに、看護師が少し驚きの表情を見せる。しかし警察から聴取の話は通っていたため、看護師はすぐ退室した。
「わかりますか?」
真栄城に近づき、ゆっくりと佐倉は問いかけた。目を半分開き、眼球だけを動かして佐倉の存在を確認した真栄城は「あぁ」と声を漏らした。話すのも少し苦しそうだ。
「河村杏奈が火災の際に殺された。知っていますね?」
「あぁ。刑事から聞いた」
「殺したのは誰だと思いますか?」
「・・・・・・・」
「では質問を変えます」
佐倉はジャケットの内ポケットから1枚の写真を取りだした。色あせた写真、真栄城は目を見開き驚いた表情をしている。パリでマルセル警部と吉村から貰った3億円事件実行グループの写真。
「これはあなた、これは具志堅知事・・・」
佐倉が1人1人を指差しながら真栄城に確認を取る。写真が初見の仲間や比嘉も驚きながらも口を出さず、なりゆきを見守ってくれている。
「これは桐谷、杏奈の祖父だ。そしてこれがフランスの刑事」
刑事というところで仲間の表情が固まったのが空気で伝わった。しかし止めるわけにはいかない。
「あんたに頼みたいことは1つ。誘拐犯の要求は真実の公表。このうち生きているのはあんたと具志堅だけだ。そして具志堅は公表を拒否した。あんた真実の公表が出来るか?誘拐された子供を助ける為に」
1番大切なのはまず誘拐された子供の身柄。自分の身内ではないものの、被害者である子供を助ける良心がこの男にあるか。
「私には関係ない」
やっぱりか。想定内の返答だった。
「あんた、杏奈の母親を探せと言ったな。あれはどういう意味だ」
「・・・・・・・」
「杏奈を殺したのは祖母だな」
佐倉の一言に一同がさらに驚く。真栄城の表情を見るとあながち河村修一の推測は間違っていなかったらしい。
「杏奈の祖母と母親は一緒か」
「多分・・な」
「どこだ?」
「・・・・・・・」
「どこなんだ!?」
たまらず比嘉刑事が怒鳴る。しかし真栄城は答えようとしない。
「ここだろ?」
次に佐倉はもう1枚の写真を出した。もう自信はあった。佐倉の推測ではおそらく誘拐された子供もそこにいる。
「ふっふ、ははは」
真栄城が力なく笑う。
「もう具志堅も終わりだな。小僧、お前の推測通りだ」
「3億円事件の実行犯、主犯格は具志堅知事か?」
横から仲間刑事が入ってくる。いよいよ確信に近づく。
「はは。本人は自分がリーダーと思っていただろうな。けれど踊らされていただけだ。具志堅だけじゃない、全員だ」
「誰に?」
「小僧、さっきの写真で生き残っているのは俺と具志堅だけと言ったな。お前はまだまだわかっていない」
「どういう意味だ?」
「全員、踊らされていたんだよ。その写真を撮ったやつにな」
「子供はどこにいる?」
病室を出ると真っ先に比嘉刑事が佐倉に詰め寄ってきた。しかし佐倉は答えない。代わりに仲間刑事に向き直る。
「子供は無事だ。居場所の在処にも自信がある。だが今子供を救出したところで誘拐事件が解決した、というだけで40年前のことは闇に葬られるだけだ。それにパリで起きた桐谷殺害の件も残っている」
「どうしたいんだ?」
「もう少しだけ待ってほしい。そしてあんたには調べてほしいことがある」
佐倉は1つの携帯電話を取り出した。
「何だ、これは?」
「桐谷殺しの目撃者が使用していた携帯電話だ。その契約者名義を調べてほしい」
「どこからこんなものを?」
「パリ警視庁の人間だ。しかし向こうさんも単独捜査、日本の警視庁を通して調べれば握りつぶされる恐れがある。俺に託してくれた。そして俺はあんたに託す」
「俺が握り潰すとは思わないのか?」
「そしたら俺が人を見る目が無かった。ということだ」
「ふっ。わかった。しかし時間をもらうぞ」
「頼みます」
「しかしさっきの写真、あれは何だ?」
携帯電話を受け取ると仲間は怪訝そうな顔で尋ねてきた。無理もない、あんな写真1枚じゃ何もわからないだろう。写っているのは紫色したどこにでもあるような御守りの写真だったのだから。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
推理の果てに咲く恋
葉羽
ミステリー
高校2年生の神藤葉羽が、日々の退屈な学校生活の中で唯一の楽しみである推理小説に没頭する様子を描く。ある日、彼の鋭い観察眼が、学校内で起こった些細な出来事に異変を感じ取る。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

この欠け落ちた匣庭の中で 終章―Dream of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
ーーこれが、匣の中だったんだ。
二〇一八年の夏。廃墟となった満生台を訪れたのは二人の若者。
彼らもまた、かつてGHOSTの研究によって運命を弄ばれた者たちだった。
信号領域の研究が展開され、そして壊れたニュータウン。終焉を迎えた現実と、終焉を拒絶する仮想。
歪なる領域に足を踏み入れる二人は、果たして何か一つでも、その世界に救いを与えることが出来るだろうか。
幻想、幻影、エンケージ。
魂魄、領域、人類の進化。
802部隊、九命会、レッドアイ・オペレーション……。
さあ、あの光の先へと進んでいこう。たとえもう二度と時計の針が巻き戻らないとしても。
私たちの駆け抜けたあの日々は確かに満ち足りていたと、懐かしめるようになるはずだから。
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。

ダブルネーム
しまおか
ミステリー
有名人となった藤子の弟が謎の死を遂げ、真相を探る内に事態が急変する!
四十五歳でうつ病により会社を退職した藤子は、五十歳で純文学の新人賞を獲得し白井真琴の筆名で芥山賞まで受賞し、人生が一気に変わる。容姿や珍しい経歴もあり、世間から注目を浴びテレビ出演した際、渡部亮と名乗る男の死についてコメント。それが後に別名義を使っていた弟の雄太と知らされ、騒動に巻き込まれる。さらに本人名義の土地建物を含めた多額の遺産は全て藤子にとの遺書も発見され、いくつもの謎を残して死んだ彼の過去を探り始めた。相続を巡り兄夫婦との確執が産まれる中、かつて雄太の同僚だったと名乗る同性愛者の女性が現れ、警察は事故と処理したが殺されたのではと言い出す。さらに刑事を紹介され裏で捜査すると告げられる。そうして真相を解明しようと動き出した藤子を待っていたのは、予想をはるかに超える事態だった。登場人物のそれぞれにおける人生や、藤子自身の過去を振り返りながら謎を解き明かす、どんでん返しありのミステリー&サスペンス&ヒューマンドラマ。

存在証明X
ノア
ミステリー
存在証明Xは
1991年8月24日生まれ
血液型はA型
性別は 男であり女
身長は 198cmと161cm
体重は98kgと68kg
性格は穏やかで
他人を傷つけることを嫌い
自分で出来ることは
全て自分で完結させる。
寂しがりで夜
部屋を真っ暗にするのが嫌なわりに
真っ暗にしないと眠れない。
no longer exists…
泉田高校放課後事件禄
野村だんだら
ミステリー
連作短編形式の長編小説。人の死なないミステリです。
田舎にある泉田高校を舞台に、ちょっとした事件や謎を主人公の稲富くんが解き明かしていきます。
【第32回前期ファンタジア大賞一次選考通過作品を手直しした物になります】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる