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#42.paris 既視
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「でもまさか、沖縄でそんなことがあったなんてねぇ。すごい偶然よ!愛子の弟くんが同じことを追っていたなんて」
「私も寧々から電話貰って驚いたわよ。まさか日本中を騒がせている事件を担当しているなんて」
「担当といっても助っ人捜査員よ。それに外されたし。あ、着いたわ」
吉村刑事の運転で到着したのは杏奈の父、桐谷浩の遺体が発見されたパリレ・ブルーという公園だった。空港から約1時間弱。女どもの他愛もない世間話のせいで、余計に長く感じたドライブ時間だった。
「ここよ」
パーキングに車を停め、公園内を歩く。お生い茂った園内は冬の寒さも手伝って殺伐と感じる。
「普段はジョギングとかピクニックを楽しむ家族連れとかで賑わっている公園なんだけれど、例の殺人事件が起きてから誰もこの公園を訪れなくなったわ。捜査陣も撤退しているのに・・・」
吉村が説明を加えながら佐倉と愛子の先を歩く。やがて目の前にはいくつもの並べられた柱が見えた。それら柱の上部が連結されており中央には池があった。枯れ散った葉の数々が水面に浮かんでいる。
「ここよ」
1つの柱の前で吉村が止まった。
「河村さんの娘さんの父親が見つかった場所ね」
愛子のちぐはぐながらも間違っていない日本語を聞きながら佐倉は柱に掌を当てる。
「やだ、あなた。そんなところ触るんじゃないわよ」
愛子が口を歪ませる。しかし佐倉はお構いなしに柱を触りながら1周する。自分が歩いてきた道を振り返る。パーキングからここまで、ほんの数メートル。自殺した男が遺体を公園に運んだと自供していると聞いた。
「何故、遺体をこの公園に運んだんですかね?遺体が見つかることを目的としても、わざわざこんな面倒なことをしなくても良かったんじゃないですか?」
「おそらくこれは推測だけれど、わざと猟奇的な見せ方をして世間の注目を浴びざるをえない状況を作ったと思うの」
「何のために?」
「自分の身辺捜査の為。彼の自宅からはコカイン抽出の元となるコカの葉が見つかった。彼の体内からも薬物が検出された。彼は警察に何かを伝えたかったと思うの」
「薬物に関することか。3億円事件の実行犯の警視も殺されたとか?」
「そうよ。そして彼の体内からも薬物が検出されたわ」
杏奈の復讐の標的であったパリ警視庁の警視も死んだ。しかしそれで杏奈の目的が果たされたというわけじゃない。殺されたのだ。
「これ」
吉村は鞄から1枚の写真を佐倉に差し出した。色あせており、一目で古い写真だと認識出来る。アタッシュケースに入った現金紙幣を前に、親指を立てている4人組の男。1人はすぐに宜野湾国際大学の真栄城学長ということがわかった。1人は具志堅功・・・。両者とも現在の姿から若かりし頃の面影を感じる。
「3億円事件の実行グループか」
この内1人の日本人、杏奈の祖父は実行後にすぐに殺されフランスの刑事も先月殺された。真栄城は沖縄の病院で意識不明の重体。残っているのは知事の具志堅のみということになる。
「ねぇねぇ、ちょっとそれ貸して」
佐倉の持つ写真を横から愛子が奪う。
「うーん・・・」
「どうしたの愛子?」
「ううん。気のせいかも」
「何だよ、中途半端に。言えよ」佐倉が愛子を責める。
「この写真の場所なんだけれど・・・」
「何、愛子?」
「3億円事件が起きたのは東京よね」
「そうね」
「でも、この写真の場所って・・・。ゆうちゃん、どこかで見たことない?」
吉村と佐倉が写真を覗き込む。確かにピントが被写体により過ぎていてわかりづらいが、背景に何となく見覚えがあった。大きい赤い柱と長い階段が男たちの背後に写っている。だが、なかなか思い出せない。
「確かに言われてみれば見たことあるような気がするな」
愛子の気づきに同調するが、答えは見つからなかった。
「そう。でも何か他に思い出したり気づいたことがあったら、些細なことでも言ってね!さ、次行きましょう」
吉村の一言が2人の思考を止め、一行は公園を後にした。
「私も寧々から電話貰って驚いたわよ。まさか日本中を騒がせている事件を担当しているなんて」
「担当といっても助っ人捜査員よ。それに外されたし。あ、着いたわ」
吉村刑事の運転で到着したのは杏奈の父、桐谷浩の遺体が発見されたパリレ・ブルーという公園だった。空港から約1時間弱。女どもの他愛もない世間話のせいで、余計に長く感じたドライブ時間だった。
「ここよ」
パーキングに車を停め、公園内を歩く。お生い茂った園内は冬の寒さも手伝って殺伐と感じる。
「普段はジョギングとかピクニックを楽しむ家族連れとかで賑わっている公園なんだけれど、例の殺人事件が起きてから誰もこの公園を訪れなくなったわ。捜査陣も撤退しているのに・・・」
吉村が説明を加えながら佐倉と愛子の先を歩く。やがて目の前にはいくつもの並べられた柱が見えた。それら柱の上部が連結されており中央には池があった。枯れ散った葉の数々が水面に浮かんでいる。
「ここよ」
1つの柱の前で吉村が止まった。
「河村さんの娘さんの父親が見つかった場所ね」
愛子のちぐはぐながらも間違っていない日本語を聞きながら佐倉は柱に掌を当てる。
「やだ、あなた。そんなところ触るんじゃないわよ」
愛子が口を歪ませる。しかし佐倉はお構いなしに柱を触りながら1周する。自分が歩いてきた道を振り返る。パーキングからここまで、ほんの数メートル。自殺した男が遺体を公園に運んだと自供していると聞いた。
「何故、遺体をこの公園に運んだんですかね?遺体が見つかることを目的としても、わざわざこんな面倒なことをしなくても良かったんじゃないですか?」
「おそらくこれは推測だけれど、わざと猟奇的な見せ方をして世間の注目を浴びざるをえない状況を作ったと思うの」
「何のために?」
「自分の身辺捜査の為。彼の自宅からはコカイン抽出の元となるコカの葉が見つかった。彼の体内からも薬物が検出された。彼は警察に何かを伝えたかったと思うの」
「薬物に関することか。3億円事件の実行犯の警視も殺されたとか?」
「そうよ。そして彼の体内からも薬物が検出されたわ」
杏奈の復讐の標的であったパリ警視庁の警視も死んだ。しかしそれで杏奈の目的が果たされたというわけじゃない。殺されたのだ。
「これ」
吉村は鞄から1枚の写真を佐倉に差し出した。色あせており、一目で古い写真だと認識出来る。アタッシュケースに入った現金紙幣を前に、親指を立てている4人組の男。1人はすぐに宜野湾国際大学の真栄城学長ということがわかった。1人は具志堅功・・・。両者とも現在の姿から若かりし頃の面影を感じる。
「3億円事件の実行グループか」
この内1人の日本人、杏奈の祖父は実行後にすぐに殺されフランスの刑事も先月殺された。真栄城は沖縄の病院で意識不明の重体。残っているのは知事の具志堅のみということになる。
「ねぇねぇ、ちょっとそれ貸して」
佐倉の持つ写真を横から愛子が奪う。
「うーん・・・」
「どうしたの愛子?」
「ううん。気のせいかも」
「何だよ、中途半端に。言えよ」佐倉が愛子を責める。
「この写真の場所なんだけれど・・・」
「何、愛子?」
「3億円事件が起きたのは東京よね」
「そうね」
「でも、この写真の場所って・・・。ゆうちゃん、どこかで見たことない?」
吉村と佐倉が写真を覗き込む。確かにピントが被写体により過ぎていてわかりづらいが、背景に何となく見覚えがあった。大きい赤い柱と長い階段が男たちの背後に写っている。だが、なかなか思い出せない。
「確かに言われてみれば見たことあるような気がするな」
愛子の気づきに同調するが、答えは見つからなかった。
「そう。でも何か他に思い出したり気づいたことがあったら、些細なことでも言ってね!さ、次行きましょう」
吉村の一言が2人の思考を止め、一行は公園を後にした。
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