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#39.paris 人喰
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「映画の『ニキータ』そのままですね」
パリ・リヨン駅のレストラン。『ル・トラン・ブルー』でマルセルとヨシムラはひと時の別れの前に一緒にランチをとっていた。バロック調のインテリア、ベルサイユ宮殿を思い起こさせる豪華絢爛なレストラン。1度でいいから行ってみたいと言うヨシムラの要望に応えるような形で、マルセルは彼女を連れてきた。
「凄い綺麗です」
店の中に足を踏み入れた瞬間から、ヨシムラは店内のありとあらゆる装飾物に目を奪われていた。
「とにかく座って何か頼もう」
「マルセル警部は何度もここで食事されているのですか?」
「たまにな。結婚記念日とかそういった日ぐらいだ」
席に着くとギャルソンに牛肉の煮込みと魚のムニエルを注文した。
「さて、ここでしばらく別々になるな」
「はい」
そう。一連の事件について捜査方針が決定した以上、ヨシムラは1度リヨンのインターポールに戻らなければいけない。その決定にはもちろん個人の気持ちは反映されない。戻るのは必然であり避けられない事だった。しかし・・・。
「本当に日本へ行くのか?」
「はい。業務命令上、1度リヨンに戻ってこれまでの捜査報告書を提出して手続きを行い、オキナワへ行こうと思っています」
「そうか。目的はキリタニのメール相手だったマエシロとカワムラいう人物だな」
「はい。しかしマエシロには話を聞けるかはわかりません」
「何故だ?」
「マエシロが学長を務めるカレッジで、先日火災が起きました」
「火事?」
「はい。オキナワにいる知人に確認したところ、マエシロはその火事による一酸化炭素中毒で意識不明の重体、入院中とのことです」
「偶然か?」
「いえ、偶然では無いと思います。それに・・・」
「それに何だ?」
「その火事の際に、キリタニの娘も死んだみたいです」
「何だって!?逃げ遅れたのか?」
「いえ、騒動の際に何者かに射殺されたみたいです」
「射殺・・・」
「紛れもなく殺人です。間違いなく一連の事件と何らかの繋がりがあるでしょう。オキナワに行って調べてきます」
「そうだな。突破口がなかなか見えない今、頼りはそこになるな」
「マルセル警部は?」
「あぁ。私もこの件に関して引き続き捜査したい気持ちはあるが、ひとまずは年末のカウントダウンイベントでの警備責任者をやれと言われた」
「エッフェル塔でのイベントですね?」
「そうだ。まぁこれも当然大事な仕事だからな」
そこで注文していたメニューが運ばれてきた。ギャルソンがマルセルに牛肉の煮込みを、ヨシムラの目の前に魚のムニエルをセットする。
「美味しそう!」ヨシムラが料理を見て感激の言葉をあげる。
「さぁ、まずはいっぱい食べて力をつけないとな」
「『腹が減っては戦は出来ない』というやつですね」
「何だね、それは?」「日本の諺ですよ」
言いながらヨシムラは、早速料理を口にした。
「うん!セボン!(美味しい)」
美味しそうに料理を口に次から次へと運ぶヨシムラを見て、マルセルもフォークを手に取った。確かにここの料理は美味しい。クセも無く、正統派のフレンチ料理だと思う。
マルセルも牛肉を次から次へと口に運んだ。が、途中で視線を感じた。顔をあげるとヨシムラがずっとマルセルの顔を見ている。
「どうした?こっちのほうが食べたくなったか?」
「・・・・・・・」
マルセルの言葉に反応せず、無言のままヨシムラは次にマルセルの目の前の皿の上に視線を落とした。
「おい、ヨシムラ女史。いったいどうしたのかね?」
「あの・・・、ちょっと思ったんですけれど・・・」
「何だ?」
「殺されたキリタニって顔の皮膚が抉られていて、まだその皮膚も見つかっていないですよね」
「う!」
思わずマルセルは口元を押さえた。隣のテーブル客もこちらを見ている。
「君は食事中に何て事を話すんだね?マナーというものがあるだろう」
静かにヨシムラを嗜める。しかしお構い無しにヨシムラは続けた。
「マルセル警部。犯人はもしかして・・・、皮膚を食べたんじゃないですか?」
「食べた・・・?」
パリ・リヨン駅のレストラン。『ル・トラン・ブルー』でマルセルとヨシムラはひと時の別れの前に一緒にランチをとっていた。バロック調のインテリア、ベルサイユ宮殿を思い起こさせる豪華絢爛なレストラン。1度でいいから行ってみたいと言うヨシムラの要望に応えるような形で、マルセルは彼女を連れてきた。
「凄い綺麗です」
店の中に足を踏み入れた瞬間から、ヨシムラは店内のありとあらゆる装飾物に目を奪われていた。
「とにかく座って何か頼もう」
「マルセル警部は何度もここで食事されているのですか?」
「たまにな。結婚記念日とかそういった日ぐらいだ」
席に着くとギャルソンに牛肉の煮込みと魚のムニエルを注文した。
「さて、ここでしばらく別々になるな」
「はい」
そう。一連の事件について捜査方針が決定した以上、ヨシムラは1度リヨンのインターポールに戻らなければいけない。その決定にはもちろん個人の気持ちは反映されない。戻るのは必然であり避けられない事だった。しかし・・・。
「本当に日本へ行くのか?」
「はい。業務命令上、1度リヨンに戻ってこれまでの捜査報告書を提出して手続きを行い、オキナワへ行こうと思っています」
「そうか。目的はキリタニのメール相手だったマエシロとカワムラいう人物だな」
「はい。しかしマエシロには話を聞けるかはわかりません」
「何故だ?」
「マエシロが学長を務めるカレッジで、先日火災が起きました」
「火事?」
「はい。オキナワにいる知人に確認したところ、マエシロはその火事による一酸化炭素中毒で意識不明の重体、入院中とのことです」
「偶然か?」
「いえ、偶然では無いと思います。それに・・・」
「それに何だ?」
「その火事の際に、キリタニの娘も死んだみたいです」
「何だって!?逃げ遅れたのか?」
「いえ、騒動の際に何者かに射殺されたみたいです」
「射殺・・・」
「紛れもなく殺人です。間違いなく一連の事件と何らかの繋がりがあるでしょう。オキナワに行って調べてきます」
「そうだな。突破口がなかなか見えない今、頼りはそこになるな」
「マルセル警部は?」
「あぁ。私もこの件に関して引き続き捜査したい気持ちはあるが、ひとまずは年末のカウントダウンイベントでの警備責任者をやれと言われた」
「エッフェル塔でのイベントですね?」
「そうだ。まぁこれも当然大事な仕事だからな」
そこで注文していたメニューが運ばれてきた。ギャルソンがマルセルに牛肉の煮込みを、ヨシムラの目の前に魚のムニエルをセットする。
「美味しそう!」ヨシムラが料理を見て感激の言葉をあげる。
「さぁ、まずはいっぱい食べて力をつけないとな」
「『腹が減っては戦は出来ない』というやつですね」
「何だね、それは?」「日本の諺ですよ」
言いながらヨシムラは、早速料理を口にした。
「うん!セボン!(美味しい)」
美味しそうに料理を口に次から次へと運ぶヨシムラを見て、マルセルもフォークを手に取った。確かにここの料理は美味しい。クセも無く、正統派のフレンチ料理だと思う。
マルセルも牛肉を次から次へと口に運んだ。が、途中で視線を感じた。顔をあげるとヨシムラがずっとマルセルの顔を見ている。
「どうした?こっちのほうが食べたくなったか?」
「・・・・・・・」
マルセルの言葉に反応せず、無言のままヨシムラは次にマルセルの目の前の皿の上に視線を落とした。
「おい、ヨシムラ女史。いったいどうしたのかね?」
「あの・・・、ちょっと思ったんですけれど・・・」
「何だ?」
「殺されたキリタニって顔の皮膚が抉られていて、まだその皮膚も見つかっていないですよね」
「う!」
思わずマルセルは口元を押さえた。隣のテーブル客もこちらを見ている。
「君は食事中に何て事を話すんだね?マナーというものがあるだろう」
静かにヨシムラを嗜める。しかしお構い無しにヨシムラは続けた。
「マルセル警部。犯人はもしかして・・・、皮膚を食べたんじゃないですか?」
「食べた・・・?」
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