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#35.paris 中止
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「オレンジですがナスリの契約は確認取れませんでした」
「そうか。SFFとフリーダムもだ」
マルセルとヨシムラは刑事課のフロアで膝を付き合せていた。
「あとはブリックテレコムですね」
「あぁ、急ぎそこも確認が必要だな」
「あとコカの葉ですが、確かにコカの葉からコカインを抽出することは可能ですが、その為には何万枚という葉が必要だと聞きました。ナスリの家にあったくらいの量ではコカインの抽出、精製なんてとても出来ないですよね?」
「あぁ、その通りだ」
そう。とてもじゃないけれど精製なんて出来る量ではない。ではナスリはあのコカの枝をどこから持ってきたのか。
「彼は重度のコカイン中毒だった。精製していたのか、ただの使用者だったのか」
「あの・・。確かナスリは歯に毒を仕込んで自殺したんですよね?」
「そうだが、それが何か?」
「と言うことは、ナスリはあらかじめ死ぬことを決めていた・・・とも考えられますよね?」
「まぁ、そういうふうに解釈できなくもないな」
「確かマルセル警部の調書では、ナスリはキリタニを殺したのはモーリス刑事だが柱に縛りつけたのは自分だと証言していた。そして逃げることなく目撃者として公園に残っていた。ということでしたね?」
「そうだ」
「それじゃあ、やはりナスリの行動は自殺まで予定通りだったという可能性がありますよね?」
「まぁ、考えられなくはない。何か思いついたか?」
繰り返し見てきたヨシムラの鋭い指摘。新たな指摘が飛び出るのを期待している自分がいることをマルセルは感じていた。そして今の会話のやり取りに自分自身も何かヒントが無いかと頭をフル回転させる。
「おーい、2人ともそろそろ会議の時間だぞ」
他の刑事が2人に声をかけてきた。「わかった」とマルセルは手をあげて答え「会議の後にもう1度話そう」とヨシムラと共に席を立った。
「パリレ・ブルーでの1件だが捜査本部は一旦、解散することとなった」
捜査会議の冒頭、予想だにしなかったメグレ警視からの言葉に一同がざわついた。
「静かにしてくれ。誰も捜査を打ち切るとは言っていない。捜査本部は解散すると言っただけだ」
「どういうことでしょうか?」
捜査員の1人が声をあげる。
「同じ警察官のモーリス警視が殺された。私としても一刻も早く犯人を逮捕して事件の全容を解明したい。しかし問題なのはモーリス警視の体内からコカインが検出されたことだ。モーリス警視が薬物常習者ということが世間に露呈されれば、パリ警視庁の不祥事として扱われる」
「隠蔽か・・・」
どこからともなく漏れた言葉に「口を慎め!」とメグレの太い声が響き、約200名の捜査員たちが閉口した。いや、たった1人を除いて。
「メグレ警視」
手を上げ、立ち上がったのはヨシムラだった。
「先ほど捜査を打ち切るわけではないと仰っていましたが、それでは今後はどのような捜査体制になるのでしょうか?」
「これからキリタニ殺しとモーリス警視殺害の件は、上層部によって最小人数での特別捜査チームを組む。これから年末に向けてイベントやそれに伴う事故、事件の増加で業務も多忙になってくる。今後は全員、通常の仕事に戻ってくれ」
「まだ事件が起きてから数日しか経っていません。捜査本部を解散させるなんてあまりにも早すぎます」
ヨシムラの言葉に多くの捜査員が頷く。それは現場の捜査員を代表しての発言だった。
「ヨシムラ女史、これは上の決定だ。みんなも納得出来ない部分もあると思う。しかしパリの治安を守るために我々の仕事は他にも多い。そうだろう?」
現場の人間たちから信頼のあるメグレ警視の言葉だからこそ、その問いかけに誰も何も言い返せなかった。が、ヨシムラは納得していない。
「メグレ警視、私はパリ警視庁の人間ではなくインターポールの人間です。引き続きこの件に関して捜査します」
「そうだ。君の言うとおり君はここの人間ではない。そして君はこの件に関して捜査を手伝うようリヨンから来た」
「はい」
「そして先ほども伝えたように、この件はパリ警視庁の上層部のみで対応することになった。つまり君にはもうここで手伝ってもらうことは無いんだよ」
そしてメグレ警視は優しく、そしてはっきりとヨシムラに告げた。
「リヨンに帰りたまえ」
「そうか。SFFとフリーダムもだ」
マルセルとヨシムラは刑事課のフロアで膝を付き合せていた。
「あとはブリックテレコムですね」
「あぁ、急ぎそこも確認が必要だな」
「あとコカの葉ですが、確かにコカの葉からコカインを抽出することは可能ですが、その為には何万枚という葉が必要だと聞きました。ナスリの家にあったくらいの量ではコカインの抽出、精製なんてとても出来ないですよね?」
「あぁ、その通りだ」
そう。とてもじゃないけれど精製なんて出来る量ではない。ではナスリはあのコカの枝をどこから持ってきたのか。
「彼は重度のコカイン中毒だった。精製していたのか、ただの使用者だったのか」
「あの・・。確かナスリは歯に毒を仕込んで自殺したんですよね?」
「そうだが、それが何か?」
「と言うことは、ナスリはあらかじめ死ぬことを決めていた・・・とも考えられますよね?」
「まぁ、そういうふうに解釈できなくもないな」
「確かマルセル警部の調書では、ナスリはキリタニを殺したのはモーリス刑事だが柱に縛りつけたのは自分だと証言していた。そして逃げることなく目撃者として公園に残っていた。ということでしたね?」
「そうだ」
「それじゃあ、やはりナスリの行動は自殺まで予定通りだったという可能性がありますよね?」
「まぁ、考えられなくはない。何か思いついたか?」
繰り返し見てきたヨシムラの鋭い指摘。新たな指摘が飛び出るのを期待している自分がいることをマルセルは感じていた。そして今の会話のやり取りに自分自身も何かヒントが無いかと頭をフル回転させる。
「おーい、2人ともそろそろ会議の時間だぞ」
他の刑事が2人に声をかけてきた。「わかった」とマルセルは手をあげて答え「会議の後にもう1度話そう」とヨシムラと共に席を立った。
「パリレ・ブルーでの1件だが捜査本部は一旦、解散することとなった」
捜査会議の冒頭、予想だにしなかったメグレ警視からの言葉に一同がざわついた。
「静かにしてくれ。誰も捜査を打ち切るとは言っていない。捜査本部は解散すると言っただけだ」
「どういうことでしょうか?」
捜査員の1人が声をあげる。
「同じ警察官のモーリス警視が殺された。私としても一刻も早く犯人を逮捕して事件の全容を解明したい。しかし問題なのはモーリス警視の体内からコカインが検出されたことだ。モーリス警視が薬物常習者ということが世間に露呈されれば、パリ警視庁の不祥事として扱われる」
「隠蔽か・・・」
どこからともなく漏れた言葉に「口を慎め!」とメグレの太い声が響き、約200名の捜査員たちが閉口した。いや、たった1人を除いて。
「メグレ警視」
手を上げ、立ち上がったのはヨシムラだった。
「先ほど捜査を打ち切るわけではないと仰っていましたが、それでは今後はどのような捜査体制になるのでしょうか?」
「これからキリタニ殺しとモーリス警視殺害の件は、上層部によって最小人数での特別捜査チームを組む。これから年末に向けてイベントやそれに伴う事故、事件の増加で業務も多忙になってくる。今後は全員、通常の仕事に戻ってくれ」
「まだ事件が起きてから数日しか経っていません。捜査本部を解散させるなんてあまりにも早すぎます」
ヨシムラの言葉に多くの捜査員が頷く。それは現場の捜査員を代表しての発言だった。
「ヨシムラ女史、これは上の決定だ。みんなも納得出来ない部分もあると思う。しかしパリの治安を守るために我々の仕事は他にも多い。そうだろう?」
現場の人間たちから信頼のあるメグレ警視の言葉だからこそ、その問いかけに誰も何も言い返せなかった。が、ヨシムラは納得していない。
「メグレ警視、私はパリ警視庁の人間ではなくインターポールの人間です。引き続きこの件に関して捜査します」
「そうだ。君の言うとおり君はここの人間ではない。そして君はこの件に関して捜査を手伝うようリヨンから来た」
「はい」
「そして先ほども伝えたように、この件はパリ警視庁の上層部のみで対応することになった。つまり君にはもうここで手伝ってもらうことは無いんだよ」
そしてメグレ警視は優しく、そしてはっきりとヨシムラに告げた。
「リヨンに帰りたまえ」
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