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#31.paris 疑問
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モーリスの遺体と対面した後、マルセルとヨシムラ、メグレは警視庁内の会議室の中で向かい合っていた。
「まさかモーリスがこんな形で見つかるとは・・・」
「モーリス警視も心臓一発・・・。ナスリと同じですね」
やり取りをしているメグレとヨシムラに、マルセルはモーリスの遺体が見つかった時から抱いていた疑問を口にした。
「本当にナスリを殺したのはモーリス警視なのでしょうか?」
「私も同じことを思っていました」
ヨシムラも同意する。
「しかしマルセル、モーリス警視は君に電話で自白したのだろう?」
「はい、確かに。でも・・・」
「心臓一発」
ヨシムラがマルセルの心を読んでいたかのように続けた。そう、ナスリもモーリスも心臓一発の即死。普通に考えれば、一連の事件の流れからみても同一犯と考えるのが普通だ。
「ナスリとモーリス警視の遺体から摘出された弾は一致したのですか?」
マルセルがメグレに尋ねる。
「いや、一致はしてはいない。ちなみにナスリの遺体から摘出された弾は、警察携帯用の拳銃のものではなかった。だからモーリスは個人的に所有している拳銃でナスリを射殺したと思っていたんだが・・・」
「確か日本と違って、フランスは拳銃の所持は認められていますね」
「あぁ。ただし護身用の目的として当局に申請の必要がある」
「モーリス警視が拳銃所持の申請をしていなかったとすれば、独自のルートで拳銃を手に入れたということになりますね」
「モーリス警視なら簡単に入手は出来ると思います」そう指摘したのはヨシムラだった。
「どういうことかね?」
「はい、メグレ警視。厳密に言うとモーリス警視だけではなく、メグレ警視、マルセル警部、私だってその気になれば入手出来ます。おわかりですか?マルセル警部」
ヨシムラにボールを投げられたマルセルは思考回路を働かせた。モーリスだけではなく、自分にもメグレ警視にもヨシムラにも入手出来る方法・・・。
!
「警察の押収品か!」
「そうです。押収品保管庫からの持ち出し。それも発砲済みのものではなく、例えば銃刀法違反のみで押収した拳銃を持ち出せば・・・」
「弾痕も過去の犯罪で使われた拳銃と結びつくことはない、ということか」
メグレ警視の言葉にヨシムラは深く頷く。
鋭い指摘だとは思うが、あくまでそれはモーリスが犯人という前提での推測だ。
「押収品リストから拳銃の紛失物があるか調べなければならないな」
「ええ。確かにヨシムラの推理を裏付ける為にもその必要性はありますね」
「あぁ。射殺した拳銃の発見を急がねば」
「それに殺されたキリタニの顔の皮膚もですね」
そうだ。ヨシムラの言うとおり、キリタニの顔から抉られた皮膚も見つかってはいないのだ。結局、捜査が解決に向けて全く進展していないことを痛感させられた。
「40年前の現金強奪事件の件も攻めてみる必要がありますね」
「あぁ。写真に写っていた連中を調べるのも良いかもしれない・・・」
マルセルの言葉にヨシムラが反応する。
「写真?何ですか?それは」
「ん?まだヨシムラ女史には見せていなかったかな?」
言いながらメグレが内ポケットから例の写真を取り出した。若かりし頃のモーリスが含まれている4人組の写真。
メグレから受け取った写真をヨシムラはじっくりと観察する。
「この人、どこかで最近見たことが・・・」
「どれだ?」
おそらくネットで見たオキナワにある大学の学長であるマエシロのことを指しているのだろう。マルセルは横から写真を覗き込んだ。しかし、ヨシムラが指差していたのはマエシロと思われる人物ではなく別の人間だった。
「どこで見たんだね?」
メグレに促されたヨシムラはこめかみ部分を押さえて、記憶の糸を引き出そうと必死になっている。
「あ!」
ヨシムラはバッグの中から携帯を取り出し操作すると、やがてメグレとマルセルに画面を向けた。そこには白いヘルメットを被った制服姿らしき無表情の男の顔が映っている。「確かに似ているな。誰だこれは?」
写真と画面の中の男を見比べてマルセルはヨシムラに聞いた。
「その現金強奪事件の実行犯とされる男の指名手配写真です。モンタージュ・・・、ここで言うと被害者の証言から作成されるコラージュ写真ですが」
「しかし似ているな。ヨシムラ女史、君はこの40年前の事件を探ってくれ。マルセル、君は凶器である拳銃の捜索とナスリから検出された薬物の線を当たってくれ。私は上層部に報告してくる」
2人に指示を出し、メグレは一足先に会議室を後にした。
「マルセル警部、写真に映っていた1人は殺されたキリタニがやり取りをしていたマエシロのようでしたね」
「何だ、やはり気づいていたのか」
「ええ、1人はモーリス警視、1人はマエシロ、1人はコラージュ写真の男・・・」
「もう1人はモーリス警視に時効成立の手紙を出した殺されたキリタニの親族と思われる人物か・・・」
「でもマルセル警部、私、あの写真を見てずっと違和感があるんです」
「違和感?何だねそれは・・・」
「はい・・・」
ヨシムラの指摘した違和感。それを聞いたマルセルは、何故自分がそれを考えつかなかったのか頭を打たれたような気がした。と同時に、やはりヨシムラが冷静に物事を客観視出来ていると感じさせられた。
ヨシムラの指摘・・・。
「あの写真を撮影したのは誰なのでしょうか?」
「まさかモーリスがこんな形で見つかるとは・・・」
「モーリス警視も心臓一発・・・。ナスリと同じですね」
やり取りをしているメグレとヨシムラに、マルセルはモーリスの遺体が見つかった時から抱いていた疑問を口にした。
「本当にナスリを殺したのはモーリス警視なのでしょうか?」
「私も同じことを思っていました」
ヨシムラも同意する。
「しかしマルセル、モーリス警視は君に電話で自白したのだろう?」
「はい、確かに。でも・・・」
「心臓一発」
ヨシムラがマルセルの心を読んでいたかのように続けた。そう、ナスリもモーリスも心臓一発の即死。普通に考えれば、一連の事件の流れからみても同一犯と考えるのが普通だ。
「ナスリとモーリス警視の遺体から摘出された弾は一致したのですか?」
マルセルがメグレに尋ねる。
「いや、一致はしてはいない。ちなみにナスリの遺体から摘出された弾は、警察携帯用の拳銃のものではなかった。だからモーリスは個人的に所有している拳銃でナスリを射殺したと思っていたんだが・・・」
「確か日本と違って、フランスは拳銃の所持は認められていますね」
「あぁ。ただし護身用の目的として当局に申請の必要がある」
「モーリス警視が拳銃所持の申請をしていなかったとすれば、独自のルートで拳銃を手に入れたということになりますね」
「モーリス警視なら簡単に入手は出来ると思います」そう指摘したのはヨシムラだった。
「どういうことかね?」
「はい、メグレ警視。厳密に言うとモーリス警視だけではなく、メグレ警視、マルセル警部、私だってその気になれば入手出来ます。おわかりですか?マルセル警部」
ヨシムラにボールを投げられたマルセルは思考回路を働かせた。モーリスだけではなく、自分にもメグレ警視にもヨシムラにも入手出来る方法・・・。
!
「警察の押収品か!」
「そうです。押収品保管庫からの持ち出し。それも発砲済みのものではなく、例えば銃刀法違反のみで押収した拳銃を持ち出せば・・・」
「弾痕も過去の犯罪で使われた拳銃と結びつくことはない、ということか」
メグレ警視の言葉にヨシムラは深く頷く。
鋭い指摘だとは思うが、あくまでそれはモーリスが犯人という前提での推測だ。
「押収品リストから拳銃の紛失物があるか調べなければならないな」
「ええ。確かにヨシムラの推理を裏付ける為にもその必要性はありますね」
「あぁ。射殺した拳銃の発見を急がねば」
「それに殺されたキリタニの顔の皮膚もですね」
そうだ。ヨシムラの言うとおり、キリタニの顔から抉られた皮膚も見つかってはいないのだ。結局、捜査が解決に向けて全く進展していないことを痛感させられた。
「40年前の現金強奪事件の件も攻めてみる必要がありますね」
「あぁ。写真に写っていた連中を調べるのも良いかもしれない・・・」
マルセルの言葉にヨシムラが反応する。
「写真?何ですか?それは」
「ん?まだヨシムラ女史には見せていなかったかな?」
言いながらメグレが内ポケットから例の写真を取り出した。若かりし頃のモーリスが含まれている4人組の写真。
メグレから受け取った写真をヨシムラはじっくりと観察する。
「この人、どこかで最近見たことが・・・」
「どれだ?」
おそらくネットで見たオキナワにある大学の学長であるマエシロのことを指しているのだろう。マルセルは横から写真を覗き込んだ。しかし、ヨシムラが指差していたのはマエシロと思われる人物ではなく別の人間だった。
「どこで見たんだね?」
メグレに促されたヨシムラはこめかみ部分を押さえて、記憶の糸を引き出そうと必死になっている。
「あ!」
ヨシムラはバッグの中から携帯を取り出し操作すると、やがてメグレとマルセルに画面を向けた。そこには白いヘルメットを被った制服姿らしき無表情の男の顔が映っている。「確かに似ているな。誰だこれは?」
写真と画面の中の男を見比べてマルセルはヨシムラに聞いた。
「その現金強奪事件の実行犯とされる男の指名手配写真です。モンタージュ・・・、ここで言うと被害者の証言から作成されるコラージュ写真ですが」
「しかし似ているな。ヨシムラ女史、君はこの40年前の事件を探ってくれ。マルセル、君は凶器である拳銃の捜索とナスリから検出された薬物の線を当たってくれ。私は上層部に報告してくる」
2人に指示を出し、メグレは一足先に会議室を後にした。
「マルセル警部、写真に映っていた1人は殺されたキリタニがやり取りをしていたマエシロのようでしたね」
「何だ、やはり気づいていたのか」
「ええ、1人はモーリス警視、1人はマエシロ、1人はコラージュ写真の男・・・」
「もう1人はモーリス警視に時効成立の手紙を出した殺されたキリタニの親族と思われる人物か・・・」
「でもマルセル警部、私、あの写真を見てずっと違和感があるんです」
「違和感?何だねそれは・・・」
「はい・・・」
ヨシムラの指摘した違和感。それを聞いたマルセルは、何故自分がそれを考えつかなかったのか頭を打たれたような気がした。と同時に、やはりヨシムラが冷静に物事を客観視出来ていると感じさせられた。
ヨシムラの指摘・・・。
「あの写真を撮影したのは誰なのでしょうか?」
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