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#20.paris 自白
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おそらく世界最初の24時間営業はコンビニやスーパー、病院等ではなく警察だと思う。しかし夜中に限れば、主に緊急出動の可能性がある為に備えているものであり、全ての部屋に明かりが灯っているわけではない。マルセルはふとそんなことを考えた。
深夜2時。マルセル警部はヨシムラと一緒にキリタニのノートパソコンが保管されているとされる保管庫の部屋に立ち入った。部屋の中に誰もいないことを確認する。
「こんなところ誰かに見られたら何と言い訳したら良いのか」
保管庫からキリタニのノートパソコンを持ち出し調べようと言いだしたのはヨシムラだった。一度メグレ警視から報告を受けているにも関わらず、こんな大胆なことをしていては発覚した時に何と言われるかわからない。
「でも実際に調べてみないと納得出来ないでしょう」
そう。当初ヨシムラの提案には二の足を踏む思いだったが、自分自身この目で確かめたい思いもあり彼女と一緒に行動することを決めた。
「パソコンは私が探します。マルセル警部は誰か来ないか外で見張っていて下さい」
「いや、私が探そう。保管庫の中は広いし、もし持ち出しが誰かに見つかった場合は処分案件になる。君のキャリアに傷がつく」
「それはマルセル警部も同じでは?」
「私より君の警察人生のほうがこの先ははるかに長い」
「いえ、私が探します。あくまで私の単独行動と言うことで」
そう言い残しヨシムラは保管庫からマルセルを追い出した。頭が良いだけではなく生意気で強引な女だ。しかし今は彼女の存在が頼りになるとマルセルは感じ始めていた。
モーリスの失踪、そしてナスリの自殺騒ぎが嘘のように廊下は静まり返っていた。 突如、胸ポケットで振動が起きた。真夜中の静寂な空間での着信にマルセルは一瞬、心臓が止まりそうになるほど驚いたが、慌てて携帯を取り出し画面の表示を見ると更なる驚きが待っていた。
「はい。マルセル」
「マルセル、すまないな。こんな夜中に」
「モーリス警視!今どちらに?」
「周りに人はいるか?」
念のため周囲を見渡す。物音一つしない。
「いえ、大丈夫です」
「そうか。庁内の状況はどうなっている?」
「あなたの失踪で大騒ぎです。わかっているでしょう、それぐらい」
「ナスリは自殺する前に何か言っていたか?」
「・・・・・・・」
「どうした?」
「ナスリは公園で磔にされていた人間はあなたが殺したと言っていました」
「それを聞いたのは?」
「その場にいたのは私だけですがメグレ警視には共有しています。そして、あなたの失踪でメグレ警視始め上層部はあなたの家の捜査や身辺を探っている」
「君はナスリの言葉を信じるか?つまり私が殺したのだと」
「いえ、私はあなたが人を殺すような人間だとは思っていません。しかしあなたの失踪でその思いが揺れ動いているのも正直なところです」
「・・・・・・・」
逆に次はモーリスのほうが黙り込んだ。電話越しにしばしの沈黙が流れる。
「モーリス警視、とにかく警視庁に戻って来て下さい。そして真犯人を一緒に見つけましょう」
「捜査ではどこまでわかった?」
「公園の被害者の身元。目撃者のナスリが麻薬中毒だったことぐらいです」
「わかった。ありがとうマルセル。私のことを信じてくれて」
「当然です」
「でもすまない。そちらには戻れないんだ」
「どうしてです」
「ナスリの言っていることは本当だからだよ。私が殺したんだ」
モーリスは驚くべき言葉を口にした。
「モーリス警視・・・」
「本当だ。すまない。でも自首は出来ない。まだやることがあるからな。おそらく君との会話もこれが最後だ。早く孫に会えるといいな」
そう言いモーリスは電話を切った。モーリスが自らの犯行を認めた。どこか覚悟していたこととはいえ、本人の口からそれを聞き、受け入れざるを得ない現実となったことにマルセルは酷く傷ついた。
コツ、コツ、コツ。
その時、廊下の先から足音が聞こえてきた。徐々に大きくなっていくその音は間違いなくこちらに向かっている。まずい。急いでヨシムラに「部屋から出るな」とショートメッセージを送らなければ。
「マルセル」
足音の主はメグレ警視だった。携帯を触っていた指の動きが思わず止まる。
「そこで何をしている?」
深夜2時。マルセル警部はヨシムラと一緒にキリタニのノートパソコンが保管されているとされる保管庫の部屋に立ち入った。部屋の中に誰もいないことを確認する。
「こんなところ誰かに見られたら何と言い訳したら良いのか」
保管庫からキリタニのノートパソコンを持ち出し調べようと言いだしたのはヨシムラだった。一度メグレ警視から報告を受けているにも関わらず、こんな大胆なことをしていては発覚した時に何と言われるかわからない。
「でも実際に調べてみないと納得出来ないでしょう」
そう。当初ヨシムラの提案には二の足を踏む思いだったが、自分自身この目で確かめたい思いもあり彼女と一緒に行動することを決めた。
「パソコンは私が探します。マルセル警部は誰か来ないか外で見張っていて下さい」
「いや、私が探そう。保管庫の中は広いし、もし持ち出しが誰かに見つかった場合は処分案件になる。君のキャリアに傷がつく」
「それはマルセル警部も同じでは?」
「私より君の警察人生のほうがこの先ははるかに長い」
「いえ、私が探します。あくまで私の単独行動と言うことで」
そう言い残しヨシムラは保管庫からマルセルを追い出した。頭が良いだけではなく生意気で強引な女だ。しかし今は彼女の存在が頼りになるとマルセルは感じ始めていた。
モーリスの失踪、そしてナスリの自殺騒ぎが嘘のように廊下は静まり返っていた。 突如、胸ポケットで振動が起きた。真夜中の静寂な空間での着信にマルセルは一瞬、心臓が止まりそうになるほど驚いたが、慌てて携帯を取り出し画面の表示を見ると更なる驚きが待っていた。
「はい。マルセル」
「マルセル、すまないな。こんな夜中に」
「モーリス警視!今どちらに?」
「周りに人はいるか?」
念のため周囲を見渡す。物音一つしない。
「いえ、大丈夫です」
「そうか。庁内の状況はどうなっている?」
「あなたの失踪で大騒ぎです。わかっているでしょう、それぐらい」
「ナスリは自殺する前に何か言っていたか?」
「・・・・・・・」
「どうした?」
「ナスリは公園で磔にされていた人間はあなたが殺したと言っていました」
「それを聞いたのは?」
「その場にいたのは私だけですがメグレ警視には共有しています。そして、あなたの失踪でメグレ警視始め上層部はあなたの家の捜査や身辺を探っている」
「君はナスリの言葉を信じるか?つまり私が殺したのだと」
「いえ、私はあなたが人を殺すような人間だとは思っていません。しかしあなたの失踪でその思いが揺れ動いているのも正直なところです」
「・・・・・・・」
逆に次はモーリスのほうが黙り込んだ。電話越しにしばしの沈黙が流れる。
「モーリス警視、とにかく警視庁に戻って来て下さい。そして真犯人を一緒に見つけましょう」
「捜査ではどこまでわかった?」
「公園の被害者の身元。目撃者のナスリが麻薬中毒だったことぐらいです」
「わかった。ありがとうマルセル。私のことを信じてくれて」
「当然です」
「でもすまない。そちらには戻れないんだ」
「どうしてです」
「ナスリの言っていることは本当だからだよ。私が殺したんだ」
モーリスは驚くべき言葉を口にした。
「モーリス警視・・・」
「本当だ。すまない。でも自首は出来ない。まだやることがあるからな。おそらく君との会話もこれが最後だ。早く孫に会えるといいな」
そう言いモーリスは電話を切った。モーリスが自らの犯行を認めた。どこか覚悟していたこととはいえ、本人の口からそれを聞き、受け入れざるを得ない現実となったことにマルセルは酷く傷ついた。
コツ、コツ、コツ。
その時、廊下の先から足音が聞こえてきた。徐々に大きくなっていくその音は間違いなくこちらに向かっている。まずい。急いでヨシムラに「部屋から出るな」とショートメッセージを送らなければ。
「マルセル」
足音の主はメグレ警視だった。携帯を触っていた指の動きが思わず止まる。
「そこで何をしている?」
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