一冬の糸

倉木 由東

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#7.okinawa 相棒

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「佐倉さん、お疲れ様です」
 身長は170以下だが柔道の有段者らしくがっちりした体型。太田寛一はいつもの人懐っこい笑顔でやって来た。
 コザ・パークアベニュー通り。その中にある『プレイヤーズ・カフェ』という店が待ち合わせ場所だった。
「今回はどんな感じの仕事っすか?」
 佐倉の口からどんなお願いをされるのか、今か今かと待っている。何故か彼はいつも佐倉のお願いごとを喜んで引き受けてくれる。だいたい彼に頼む仕事と言えばコトが暴力沙汰に発展する時だ。つまり中の町の嬢をしつこく追い回す男の掃除であったり、外国人といざこざが起きたりするときなどだ。腕っ節には自信があるのは結構だが、女好きでたまに佐倉が中の町に呑みに連れて行ったりすると完全にホステスの虜になってしまう。
「女がらみだ。やる気が出るだろ」
「まぁ、だいたい佐倉さんが俺に頼む時は女が絡んでるでしょ」
「この女を知っているか?おまえと同じ大学に通っているはずだが」
 佐倉は手元からスマートフォンを取り出し、河村杏奈の画像を太田に見せた。
「河村杏奈ですね」
「知っているのか」
「ええ。美人は勝手に話のネタの対象になるでしょう」
「絡んだことはあるか」
「俺は学部が違うので話したことはありませんが、学年は一緒ですからね。あ、そう言えば共通科目の授業で一緒になることがあるな」
 時々自分の仕事を手伝っているこの太田が、河村杏奈の通っている大学と同じ『宜野湾国際大学』の学生だったのは佐倉にとっては好都合だった。
「大学では専門的な授業となる専門科目とは他に、共通科目という授業があります。例えば俺は法学部なので、専門科目として民法や刑法を学ぶ。共通科目として英語やパソコンの授業等を学びます。たしか河村杏奈は経済学部だったと思います。俺とは心理学の授業で一緒ですね。その河村杏奈が何か?」
 佐倉は河村修一からの依頼を簡潔に説明した。太田は真剣な表情で、時折相づちを打ちながら佐倉の話に耳を傾ける。太田は河村杏奈が社長令嬢であることは知らなかったようだ。
「俺だけでなく、みんな知らないんじゃないかな。河村は特定の友人とつるんでいるイメージはありませんね。もちろん友達がいないわけではないと思いますが・・・」
「とにかく今回の依頼は、そのお嬢さんの交友関係を含む身辺調査。お前には大学に通っている時の彼女を見てほしい。俺は講義を終えてからの彼女をマークするから」
「わかりました。まぁ学校での彼女と言っても普通に講義を受けている以外、何も変わったところは無いと思いますけどね」
「それならそれで、そう報告してくれればいい」
「わかりました。ところで今夜空いていますか?」
「酒か?」
「ええ。大学の近くに最近新しい居酒屋が出来たので。まぁ学生向きってことで値段も安いし、行きましょうよ」
 だったら最初からそこで打ち合わせをすれば良かったのに・・・という思いと、安いからって誰が金を出すと思っているんだという両方の思いを抱きながら、佐倉は仕事を手伝ってもらう代償に仕方なく太田の誘いに付き合うことにした。
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