冴えない御曹司の俺が恋愛リアリティ番組的なシェアハウスで女子大生たちとリアル恋愛することになった件

第1章「俺と"あの子"と4人の魔女」

ジ・エンド

　音崎千春。俺より1つ年上の大学4年生である。少々ボサついた短髪と大きなメガネが特徴的であり、普段はあまり派手に着飾ったりしない女の子だ。

　だが顔のパーツ自体はかなり整っており、もう少し身なりに気を使えば、とんでもない美女に化ける予感もするというのも、また事実。いやはや、俺個人としては千春さんには是非このままファッションに目覚めずにいてほしいものだ。もうこれ以上自分の心を惑わせなくないし。


　また、そんな彼女の性格はどちらかというとクール寄り。舞華、芦屋さん、沙耶とは違って、俺に猛アプローチをかけてくるわけでもない。そういった点を考えれば、彼女は魔女候補の中でもある意味異質な存在と言えるだろう。


　......と、分析してみたはいいものの。


「アカン。結局なんも思いつかん......」

　情けなく独り言をこぼしつつ、横になっていた身体をベッドから起こす。

　ダメだ。『千春さんの正体を探るために作戦立てるぞ！』とが意気込んでみたけど、全然アイデア浮かばねぇ。仮にも日本一の大学に通ってるっつーのに、ビックリするくらい何も思いつかねぇ。

「なんか......腹減ってきたな」

　良い考えが浮かぶずとも、頭を回せば腹の虫が鳴る。悲しき人間の習性である。

「あ、やっべ。そういや今日の昼飯どうしよ」

　いつもは昼食の時間になると、調理係の沙耶が『ご飯できましたよー！』と俺たちに呼びかけて招集をかけるのだが、今日はその沙耶が居ない。朝は適当にパンをトースターにブチ込んで2人で食ったが、さすがに昼はそういうわけにはいかないだろう。さて、どうしたものか。

「まあ、ここは無難に千春さんと相談かなぁ......」

　『魔女ハウス』とかいう物騒な名前のシェアハウスではあるが、それでも千春さんは同居人だからな。テキトーに何か買ってきて1人で食う、ってのも出来なくはないが、さすがにそれはナシだ。


　よし、そんじゃとりあえず千春さんの部屋まで行ってみるとしますかね。


♦︎

「なんか緊張するな......」

　廊下を歩き、千春ルームの前に到着。特に深く考えずにここまで来たが、そういえば女の子の部屋を訪ねるのは今回が初めてだった。やっべぇ。なんかよく分かんない汗出てきたな。

　でも、いつまでも緊張して扉の前で立っているわけにもいかないしな。ここはとりあえずドアをノックしてみるとしよう。

　－－と、考えて扉に手を伸ばした時だった。



「ふふ......ふふふ、かわいいよ......ふふふ......」

　なんか、いきなり扉の向こうから不気味な笑い声が聞こえてきた。

「ふふふ......ふふふ......」

「......」

　いや、ちょっと待って。怖い。怖いって。

　え、コレって千春さんの笑い声だよな？　つーか、今家に居るのって俺と千春さんだけだし、100パー千春さんの笑い声だよな？　え、なんなのコレ？　めっちゃ怖いんだけど？

「......よし、ここは一旦回れ右だ」

　ま、まあ、人間ってのは誰しもがヒミツを抱えているものだからな。うん、今はドアをノックするのはやめておこう。女の子のヒミツを探るのは良くない。

　と、現実から目を背けつつ、俺は「何も聞いていない。何も聞いていない......」と自分に小声で暗示をかけながら、くるりとUターンして一時撤退を試みる。


　が、しかし、その直後。突然背後から無情に鳴り響いた『ガチャリ』という効果音によって、俺の歩みは止まることとなった。

「え、大河くん？　私の部屋の前で何してるの......？」

「......」





　あ、終わった。