1 / 1
エピローグ
選ばれた者
しおりを挟む
『俺は他人に興味はない。』
これは小学校に上がりたての頃、友達がなかなか出来なかった俺、「黒雷 優」に心配してきた姉に放った言葉だった。
俺は物心着いた時からヘタに泣きわめくことは無いし、子供らしいわがままも言わない。そんな子供だった。感情を表に出さないから無愛想だと周りに言われる。
両親は共働きでほとんど家を留守にしていた。だから家では常に姉と2人だった。姉はおれとは正反対で、感情豊かで明るく、元気なわんぱく娘だった。俺にも必要以上に構ってきた。
俺は最初、それが鬱陶しいと思っていた。でも、それが少し変わった。俺が5歳の時、姉に連れられ公園に行き、公園のベンチで本を読んでいて、姉がブランコで友人と遊んでいた時、不審者が現れた。
不審者はベンチに座っていた俺に向かってきた。それを見た姉の友人は皆逃げて行ったが、姉だけは俺に駆け寄り庇うように抱きつき守った。
幸い近くにいたお巡りさんに助けられた。
姉は泣きながら
『怖かったよねぇ。ごめんねぇ。』
と俺を抱きしめていた。
特に怖いとかは思ってはいなかった。でも、俺はその姉の優しさが心に残った。
それ以降姉がやたらと構ってくるのを鬱陶しいとは思わなくなった。本人には言わないが。
小学校3年生の時、クラスの暴れん坊が俺の筆箱をわざと落とした。ガシャンと音を立てて落ちた筆箱を俺は何も言わず、表情も変えずに拾った。それを見た暴れん坊は気に食わなかったらしく、俺の机を蹴って去っていき、その後俺に関わることはなかった。
その時、俺の周りが
『どうして怒らないの?悲しくないの?』
と聞いてきた。俺は正直に、
『悲しくはないよ。ああいうのは頭が足りない人がすることなんだから、別に気にする必要は無い。相手にしなければあっちも興ざめする。怒らないのは怒るのは疲れるから。』
そういった。
それ以降、元々少なかった親しい人達は、俺から離れた。元々1人が好きだからどうでもいいと思っていたが、ただ1人だけ、俺の傍にずっといる奴がいた。
『相変わらず頭いいよねぇ~。脳みそ分けてよ。』
こいつは、俺がどれだけ不気味がられようと嫌われようと常に俺のそばにいた。
そいつの名は、「青城 玲」明るくノリのいい人気者とも言えるやつだった。
そんなやつがなぜ俺といるのか分からなかった。だから俺は4年生のある日そいつに聞いた。
『なぁ、何故俺に構う?』
そう言うとそいつは、酷い言い方だなぁ。と言いながらも答えた。
『君といると面白いんだよ。君はなんでも知ってる。それに君は気づいていないかもしれないけれど、君は ────』
中学を卒業した今、それを思い出そうとすると頭痛が激しくなる。あいつが何を言ったのか、思い出せない。
直接聞くという術もあったが、俺の中の何かがそれを拒んだ。
俺と玲は近くにあったそれなりに偏差値の高い全寮制の高校に進学した。元々私立の中学にいたからさほど難しくはなかった。
俺は保育園の時にIQ200という数値をたたき出した。今のIQは知らない。というか知りたくもない。
その上、他人には興味を持たないような、まぁ悲しい性格なわけで、友人は玲以外にいない。
別にそれが悲しいと思ったことはないし、玲と居ても特に疲れないから共にすごしている。
玲は無駄なことばかりよく知っていて、よく周りに【雑学辞典】と呼ばれている。好奇心もそれなりに持ち合わせていて、俺にもよく興味深い話を持ってくる。
高校生活もそのような平凡な日常が送れると思っていた。
まさかこんなことになるとは……
これは小学校に上がりたての頃、友達がなかなか出来なかった俺、「黒雷 優」に心配してきた姉に放った言葉だった。
俺は物心着いた時からヘタに泣きわめくことは無いし、子供らしいわがままも言わない。そんな子供だった。感情を表に出さないから無愛想だと周りに言われる。
両親は共働きでほとんど家を留守にしていた。だから家では常に姉と2人だった。姉はおれとは正反対で、感情豊かで明るく、元気なわんぱく娘だった。俺にも必要以上に構ってきた。
俺は最初、それが鬱陶しいと思っていた。でも、それが少し変わった。俺が5歳の時、姉に連れられ公園に行き、公園のベンチで本を読んでいて、姉がブランコで友人と遊んでいた時、不審者が現れた。
不審者はベンチに座っていた俺に向かってきた。それを見た姉の友人は皆逃げて行ったが、姉だけは俺に駆け寄り庇うように抱きつき守った。
幸い近くにいたお巡りさんに助けられた。
姉は泣きながら
『怖かったよねぇ。ごめんねぇ。』
と俺を抱きしめていた。
特に怖いとかは思ってはいなかった。でも、俺はその姉の優しさが心に残った。
それ以降姉がやたらと構ってくるのを鬱陶しいとは思わなくなった。本人には言わないが。
小学校3年生の時、クラスの暴れん坊が俺の筆箱をわざと落とした。ガシャンと音を立てて落ちた筆箱を俺は何も言わず、表情も変えずに拾った。それを見た暴れん坊は気に食わなかったらしく、俺の机を蹴って去っていき、その後俺に関わることはなかった。
その時、俺の周りが
『どうして怒らないの?悲しくないの?』
と聞いてきた。俺は正直に、
『悲しくはないよ。ああいうのは頭が足りない人がすることなんだから、別に気にする必要は無い。相手にしなければあっちも興ざめする。怒らないのは怒るのは疲れるから。』
そういった。
それ以降、元々少なかった親しい人達は、俺から離れた。元々1人が好きだからどうでもいいと思っていたが、ただ1人だけ、俺の傍にずっといる奴がいた。
『相変わらず頭いいよねぇ~。脳みそ分けてよ。』
こいつは、俺がどれだけ不気味がられようと嫌われようと常に俺のそばにいた。
そいつの名は、「青城 玲」明るくノリのいい人気者とも言えるやつだった。
そんなやつがなぜ俺といるのか分からなかった。だから俺は4年生のある日そいつに聞いた。
『なぁ、何故俺に構う?』
そう言うとそいつは、酷い言い方だなぁ。と言いながらも答えた。
『君といると面白いんだよ。君はなんでも知ってる。それに君は気づいていないかもしれないけれど、君は ────』
中学を卒業した今、それを思い出そうとすると頭痛が激しくなる。あいつが何を言ったのか、思い出せない。
直接聞くという術もあったが、俺の中の何かがそれを拒んだ。
俺と玲は近くにあったそれなりに偏差値の高い全寮制の高校に進学した。元々私立の中学にいたからさほど難しくはなかった。
俺は保育園の時にIQ200という数値をたたき出した。今のIQは知らない。というか知りたくもない。
その上、他人には興味を持たないような、まぁ悲しい性格なわけで、友人は玲以外にいない。
別にそれが悲しいと思ったことはないし、玲と居ても特に疲れないから共にすごしている。
玲は無駄なことばかりよく知っていて、よく周りに【雑学辞典】と呼ばれている。好奇心もそれなりに持ち合わせていて、俺にもよく興味深い話を持ってくる。
高校生活もそのような平凡な日常が送れると思っていた。
まさかこんなことになるとは……
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
この目の前にあるぺちゃんこになった死体はどこからやってきた?
原口源太郎
ミステリー
しこたま酒を飲んだ帰り道、僕たちの目の前に何かが落ちてきた。それはぺちゃんこになった人間だった。僕たちは空を見上げた。この人はどこから落ちてきたんだ?
その人事には理由がある
凪子
ミステリー
門倉(かどくら)千春(ちはる)は、この春大学を卒業したばかりの社会人一年生。新卒で入社した会社はインテリアを専門に扱う商社で、研修を終えて配属されたのは人事課だった。
そこには社長の私生児、日野(ひの)多々良(たたら)が所属していた。
社長の息子という気楽な立場のせいか、仕事をさぼりがちな多々良のお守りにうんざりする千春。
そんなある日、人事課長の朝木静から特命が与えられる。
その任務とは、『先輩女性社員にセクハラを受けたという男性社員に関する事実調査』で……!?
しっかり女子×お気楽男子の織りなす、人事系ミステリー!
回想録
高端麻羽
ミステリー
古き良き時代。
街角のガス灯が霧にけぶる都市の一角、ベィカー街112Bのとある下宿に、稀代の名探偵が住んでいた。
この文書は、その同居人でありパートナーでもあった医師、J・H・ワトスン氏が記した回想録の抜粋である。
若月骨董店若旦那の事件簿~水晶盤の宵~
七瀬京
ミステリー
秋。若月骨董店に、骨董鑑定の仕事が舞い込んできた。持ち込まれた品を見て、骨董屋の息子である春宵(しゅんゆう)は驚愕する。
依頼人はその依頼の品を『鬼の剥製』だという。
依頼人は高浜祥子。そして持ち主は、高浜祥子の遠縁に当たるという橿原京香(かしはらみやこ)という女だった。
橿原家は、水産業を営みそれなりの財産もあるという家だった。しかし、水産業で繁盛していると言うだけではなく、橿原京香が嫁いできてから、ろくな事がおきた事が無いという事でも、有名な家だった。
そして、春宵は、『鬼の剥製』を一目見たときから、ある事実に気が付いていた。この『鬼の剥製』が、本物の人間を使っているという事実だった………。
秋を舞台にした『鬼の剥製』と一人の女の物語。
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる