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第九部 033~036 七日目・夜~八日目・昼
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033 七日目 夜 ~それはアカン~
「ちとせさんは納豆にカラシは入れる派ですか?」
「入れないわ」
夕食、ちとせとあけぼのの二人で食卓を囲みながら雑談をしていた。二人の手元には納豆があり、二人はそれを混ぜている。部屋には納豆をかき混ぜる“ぬっちゃぬっちゃ”や“ねっちゃねっちゃ”という音が響いている。
「えー、入れたのがいいですよ」
「入れない」
「一回入れてみて下さいよ」
「いいってば」
二人は納豆にカラシを入れるか入れないかで軽い口論を繰り広げていた。頑なにちとせはカラシを入れないと言い張っている。対してあけぼのも頑なに入れることを勧める。
「絶対に美味しいですから」
あけぼのから何度も勧められる事にちとせは我慢が出来なくなり、台を強く叩いた。
「「あ……」」
その反動であけぼのの混ぜていた納豆はひっくり返り、あけぼのの方へと倒れる。
「それはアカンて……」
おなかにベットリと付いた納豆をいじりながらあけぼのはそうつぶやく。
☆☆☆ ★★★ ☆☆☆
034 八日目 早朝 ~乙女~
翌朝、朝食を終えたちとせはいつものように部屋で着替えを始める。その様子を見ているあけぼのは、彼女の名前を呼ぶ。
「ちとせさん」
「何?」
制服のスカーフを結びながらあけぼのの方に振り向く。
「あの……今更ですが、そろそろもう一週間になりますけど……本当に今更ですが、恥ずかしくないんですか?」
「え……?」
あけぼのの言う事の意味が理解できなかったちとせは困惑の表情を薄っすら浮かべる。
「いや、ですからこう……女としてみたいな……」
「だってアンタ……猫じゃない」
ちとせの言葉にあけぼのは衝撃を受けたようで、全身を震わせながら顔面蒼白になった。
そんなあけぼのを尻目に、ちとせは玄関へと向かう。
「じゃ、行ってくるから」
ちとせの言葉にあけぼのは立ち尽くしたまま、軽く手を挙げるだけだった。
☆☆☆ ★★★ ☆☆☆
035 八日目 朝 ~同等~
学校に登校したちとせは、窓際で外を眺めていた。
「ねぇ、池上くん……」
「……何?」
近くに来た池上を呼ぶちとせは言葉を続ける。
「もし私が部屋で裸だったら池上君どうする?」
「うーん……裸かぁ……。 ……はだか?」
ちとせの質問を反芻した池上は驚いてちとせの方を見る。
「あの、はだっ……はだっ……⁉ はだっ……」
「べつにさぁ……」
池上の反応などそっちのけで話を続けるちとせ。
「ペットの前くらい良いわよねぇ……。どうもしないわよねぇ」
「…………」
ちとせの言葉に池上の頭の中では、ペット=池上という方程式が出来上がっていた。池上の目にはじんわりと涙が浮かんでいた。
「はぁ……」とため息を吐きながら、ちとせは外を見つめ続けるのであった。池上はどうする事も出来ずに固まっていた。
☆☆☆ ★★★ ☆☆☆
036 八日目 昼 ~幼馴染~
昼休み、池上は校庭にあるベンチで座りながら腕を組んで頭を悩ませていた。そこへ、池上にとって見慣れた人物が近付いてきた。
一つ結びをした彼は、いつものように話しかける。
「よっなにしてんの?」
「なんでもねーよ」
しかし、池上はそっけなく返す。そんな池上に対して彼は煙草に火を点けながら続ける。
「何かあったの? 元気ないじゃん」
「何でもねーよ」
変わらずそっけなく返されて彼は頭を抱える。
「もうやだ……なんでこんなのと幼馴染なの……」
「空乃!! お前また校内で煙草吸いやがって!!」
「……俺、ちょっとマラソンしてくる」
生徒指導の教師に見つかった空乃と呼ばれた彼は煙草をくわえながら、その場を走って立ち去る。その後ろを教師が走って追いかける。
そんな空乃の後ろ姿を見た池上は呆れた表情を浮かべながらつぶやく。
「早くあのヤンキー捕まえて」
「ちとせさんは納豆にカラシは入れる派ですか?」
「入れないわ」
夕食、ちとせとあけぼのの二人で食卓を囲みながら雑談をしていた。二人の手元には納豆があり、二人はそれを混ぜている。部屋には納豆をかき混ぜる“ぬっちゃぬっちゃ”や“ねっちゃねっちゃ”という音が響いている。
「えー、入れたのがいいですよ」
「入れない」
「一回入れてみて下さいよ」
「いいってば」
二人は納豆にカラシを入れるか入れないかで軽い口論を繰り広げていた。頑なにちとせはカラシを入れないと言い張っている。対してあけぼのも頑なに入れることを勧める。
「絶対に美味しいですから」
あけぼのから何度も勧められる事にちとせは我慢が出来なくなり、台を強く叩いた。
「「あ……」」
その反動であけぼのの混ぜていた納豆はひっくり返り、あけぼのの方へと倒れる。
「それはアカンて……」
おなかにベットリと付いた納豆をいじりながらあけぼのはそうつぶやく。
☆☆☆ ★★★ ☆☆☆
034 八日目 早朝 ~乙女~
翌朝、朝食を終えたちとせはいつものように部屋で着替えを始める。その様子を見ているあけぼのは、彼女の名前を呼ぶ。
「ちとせさん」
「何?」
制服のスカーフを結びながらあけぼのの方に振り向く。
「あの……今更ですが、そろそろもう一週間になりますけど……本当に今更ですが、恥ずかしくないんですか?」
「え……?」
あけぼのの言う事の意味が理解できなかったちとせは困惑の表情を薄っすら浮かべる。
「いや、ですからこう……女としてみたいな……」
「だってアンタ……猫じゃない」
ちとせの言葉にあけぼのは衝撃を受けたようで、全身を震わせながら顔面蒼白になった。
そんなあけぼのを尻目に、ちとせは玄関へと向かう。
「じゃ、行ってくるから」
ちとせの言葉にあけぼのは立ち尽くしたまま、軽く手を挙げるだけだった。
☆☆☆ ★★★ ☆☆☆
035 八日目 朝 ~同等~
学校に登校したちとせは、窓際で外を眺めていた。
「ねぇ、池上くん……」
「……何?」
近くに来た池上を呼ぶちとせは言葉を続ける。
「もし私が部屋で裸だったら池上君どうする?」
「うーん……裸かぁ……。 ……はだか?」
ちとせの質問を反芻した池上は驚いてちとせの方を見る。
「あの、はだっ……はだっ……⁉ はだっ……」
「べつにさぁ……」
池上の反応などそっちのけで話を続けるちとせ。
「ペットの前くらい良いわよねぇ……。どうもしないわよねぇ」
「…………」
ちとせの言葉に池上の頭の中では、ペット=池上という方程式が出来上がっていた。池上の目にはじんわりと涙が浮かんでいた。
「はぁ……」とため息を吐きながら、ちとせは外を見つめ続けるのであった。池上はどうする事も出来ずに固まっていた。
☆☆☆ ★★★ ☆☆☆
036 八日目 昼 ~幼馴染~
昼休み、池上は校庭にあるベンチで座りながら腕を組んで頭を悩ませていた。そこへ、池上にとって見慣れた人物が近付いてきた。
一つ結びをした彼は、いつものように話しかける。
「よっなにしてんの?」
「なんでもねーよ」
しかし、池上はそっけなく返す。そんな池上に対して彼は煙草に火を点けながら続ける。
「何かあったの? 元気ないじゃん」
「何でもねーよ」
変わらずそっけなく返されて彼は頭を抱える。
「もうやだ……なんでこんなのと幼馴染なの……」
「空乃!! お前また校内で煙草吸いやがって!!」
「……俺、ちょっとマラソンしてくる」
生徒指導の教師に見つかった空乃と呼ばれた彼は煙草をくわえながら、その場を走って立ち去る。その後ろを教師が走って追いかける。
そんな空乃の後ろ姿を見た池上は呆れた表情を浮かべながらつぶやく。
「早くあのヤンキー捕まえて」
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返信が遅れてすみません。
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現在は更新停止していますが、できれば早く更新再開したいなと考えているので、お楽しみに!
21.9/6 2:00 抹茶(=兎猫まさあき)
なんかすごく不思議なお話ですね。原作?のマンガを見てみたい気も…(*´ω`*)
返信かなり遅れてすみません! ぜひぜひ原作漫画読まれてみて下さい!