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プロローグ
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ある年の五月初旬、春が終わって夏がやってくる事を知らせているように、桜が舞い散り始めた。
埼玉にあるやや古びた一軒家の一室で、眼鏡をかけ、サクランボのチャームの着いた髪ゴムで髪を一つ結びにし、真剣にアイドル雑誌を一人で読んでいる少女が居た。
彼女の名前は茂名希詠。近所にある馬場先高校に通う、高校一年の十五歳。
夢はアイドルになること。 しかし中学に通っていた頃、彼女はいじめっ子のクラスメイトからその夢のことを頻繁に否定されていた。
──『音痴でダンスも出来ない。出来損ない』と。
それでも彼女は何度も立ち上がり、毎回アイドルになる夢を心の中で強く強く刻み込み、自分という人間を保っていた。
ある夏の日、三年になった彼女はアイドル雑誌を購読し始めた。
その雑誌にはアイドルから話を聞き、アイドルになったきっかけやそのための努力について聞くというコーナーがあり、希詠はこのコーナーが雑誌の中で一番勉強になるのだと言う。
彼女は毎月刊行されるそれを楽しみにして過ごしていた。
彼女が住んでいる家のすぐ近くにある四階建て、という小さなマンションの一室では、暗い部屋で一人ゲームに耽っている少年が居た。
片手には攻略本があった。彼の名は平津健留。
きよみと同じ馬場先高校に通う、高校一年の十五歳。
彼は大のゲーム好きであった。
彼曰く「この道十年。ゲームの事なら、何でもお任せ!」だとか。
彼の将来の夢、それはゲーミングプログラマーだと言う。ゲーミングプログラマーになって、沢山のゲームを作りたいそうだ。
この二人が、何の関係があるのか、それは今は誰も分からない──。
━━━
希詠は高校生になってこの一ヶ月ほど、静かな生活を送っていた。
何の問題も無い、平凡な日々だ。
今までのいじめっ子はもう居ない。もうあの否定魔とはおさらばだ。
高校で新しい友人が出来た。
「飯田遊奈」という彼女は新潟から引っ越して来たという。
親の転勤なのだろうか?
この数週間で仲良くなったばかりの希詠はまだ彼女の事をあまり知らない。
希詠は何となく遊奈と仲良くなれる気がしていた。
遊奈は誰に対しても物怖じせずに話す事が出来る、そんな気さくな人だった。
希詠は彼女の事を尊敬していた。希詠は正直彼女が格好良く見えた。
出会ってまだ日が浅いというのに、希詠は遊奈の全てが分かったような気がしていた。そして、頼りになると思っていた。
その思いは間違っていないと、後から彼女は気付く事になるのであった……
そして彼女は、これから遊奈と二人でずっと仲良く高校生活を送ると心底信じて疑わなかった。
きっとこの信頼は遊奈への信頼と同等であろう。
希詠はそう思いつつ、遊奈と談笑していたのであった──
埼玉にあるやや古びた一軒家の一室で、眼鏡をかけ、サクランボのチャームの着いた髪ゴムで髪を一つ結びにし、真剣にアイドル雑誌を一人で読んでいる少女が居た。
彼女の名前は茂名希詠。近所にある馬場先高校に通う、高校一年の十五歳。
夢はアイドルになること。 しかし中学に通っていた頃、彼女はいじめっ子のクラスメイトからその夢のことを頻繁に否定されていた。
──『音痴でダンスも出来ない。出来損ない』と。
それでも彼女は何度も立ち上がり、毎回アイドルになる夢を心の中で強く強く刻み込み、自分という人間を保っていた。
ある夏の日、三年になった彼女はアイドル雑誌を購読し始めた。
その雑誌にはアイドルから話を聞き、アイドルになったきっかけやそのための努力について聞くというコーナーがあり、希詠はこのコーナーが雑誌の中で一番勉強になるのだと言う。
彼女は毎月刊行されるそれを楽しみにして過ごしていた。
彼女が住んでいる家のすぐ近くにある四階建て、という小さなマンションの一室では、暗い部屋で一人ゲームに耽っている少年が居た。
片手には攻略本があった。彼の名は平津健留。
きよみと同じ馬場先高校に通う、高校一年の十五歳。
彼は大のゲーム好きであった。
彼曰く「この道十年。ゲームの事なら、何でもお任せ!」だとか。
彼の将来の夢、それはゲーミングプログラマーだと言う。ゲーミングプログラマーになって、沢山のゲームを作りたいそうだ。
この二人が、何の関係があるのか、それは今は誰も分からない──。
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希詠は高校生になってこの一ヶ月ほど、静かな生活を送っていた。
何の問題も無い、平凡な日々だ。
今までのいじめっ子はもう居ない。もうあの否定魔とはおさらばだ。
高校で新しい友人が出来た。
「飯田遊奈」という彼女は新潟から引っ越して来たという。
親の転勤なのだろうか?
この数週間で仲良くなったばかりの希詠はまだ彼女の事をあまり知らない。
希詠は何となく遊奈と仲良くなれる気がしていた。
遊奈は誰に対しても物怖じせずに話す事が出来る、そんな気さくな人だった。
希詠は彼女の事を尊敬していた。希詠は正直彼女が格好良く見えた。
出会ってまだ日が浅いというのに、希詠は遊奈の全てが分かったような気がしていた。そして、頼りになると思っていた。
その思いは間違っていないと、後から彼女は気付く事になるのであった……
そして彼女は、これから遊奈と二人でずっと仲良く高校生活を送ると心底信じて疑わなかった。
きっとこの信頼は遊奈への信頼と同等であろう。
希詠はそう思いつつ、遊奈と談笑していたのであった──
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