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第4話 冒険者登場!
しおりを挟むもぐもぐ、もぐもぐ、……ごっくん。
うーん。この黒パンと干し肉、全然上手くない……。
想真は異世界で初めての食事をとっていた。彼自身、もう人間ではないので食事する必要はないのだが……。
あー、暇だー。
早く侵入者来ないかなー。退屈だー。
DPが枯渇している今。僕ができることなんて、気長に侵入者を待つのみ。
ためしにと、ノーマルガチャから出た黒パンと干し肉を食べてみたけど。……あまり美味しくはなかった。
はぁー。………………うん? あれは?
僕はダンジョン入り口の様子を映していたパネル画面を、大きく拡大してみる。
するとそこには、なんと3人の人間が映っていた。
一人は、赤髪のロングヘアで、なんとなく性格がきつそうな女性。
今も、呆れた顔をしている隣の茶髪な男に、口早でなにかを言っているようだ。
そして、その二人の後ろには。水色の髪に、他の二人よりはやや身長が低めな少女が立っている。
おおー! これは異世界で初の、第1侵入者なのでは!
興奮した僕は、彼女達の声を聞いてみようと、声も聞けるように設定してみる。
「きゃー! 見てみてこれ! これってあのダンジョンじゃない!?」
「うるさ!?」
しかし、赤髪の女性の声が予想以上に煩かったので、僕はつい声を出してしまった。
「――誰っ!」
うわー……。
僕は頭を抱える。このパネルは万能で、相手に声が届かないようにも出きる。だけど、僕は興奮していて、その設定を忘れていたのだ。つまり。
「ソル、警戒」
「あぁ、わかってる」
彼女達は、突如聞こえた謎の声に対して、真剣に辺りを警戒し始める。
そこで僕は考えた。もしこのまま黙っていたら、彼女達は謎の声に危険か違和感を感じて、帰ってしまうかもしれない。
それはすごーく、困る。
そう思い、僕は彼女達とコンタクトをとってみることにした。
「あーあー、聞こえていますか? 聞こえていたならぜひ返事をください」
「――っ!?」
「なんだぁ?」
「……(キョロキョロ)」
彼女達は、また聞こえた謎の声に、どう反応していいか分からないようで。互いに背中を預け合いながら、小声で相談をし始める。
……僕には、全部普通に聞こえちゃうんだけどね。
「おいおい、一体どうするんだよ」
「そんなの知らないわよ! 声しか聞こえない相手なんて!」
「……私の魔力感知にも反応はない。でも相手は返事をしてくれと言った。なら返事をして会話すべき」
おお、この少女めっちゃ頭良さそうだ、顔の表情は全く動いてないけど。
「「シルが長文を話せるだと(なんて)!?」」
「むぅ、失礼な」
あー。多分、普段は無口な子なんだろうなー。しかも頭がいいと来たか。……髪色を変えてメガネを掛ければ、まさに某宇宙人な彼女だ。
「んー、わかった。俺が返事を返すから、二人は周囲の警戒を頼む」
「分かったわ」
「……(コクリ)」
よし、僕も心の準備は出来てる。お願いです、いい人達でありますように……。
「俺は、トゥーリスの町を拠点に活動している。Cランク冒険者パーティー『竜の牙』のリーダー、ソルだ! あんたは一体誰なんだ!」
「……ぷっ」
「あれ? 可笑しいな? 聞こえなかったのか? ならもう一回だ。俺は――」
「プハハハハ、竜の牙? なにそれ? 流石にカッコつけすぎでしょ! 竜の牙って、ハハハハハハハ。ハァハァ、ヤバいお腹痛い!」
うわー、うわー。あんな名前絶対に黒歴史間違いなし! でもファンタジー世界だからOKなのかな! それでも僕は笑っちゃうけどね?
「えっ……」
「あっちゃー、しまったわ。まーたソルの悪い癖が出たわね……」
「ん、やっぱりソルは馬鹿」
「えぇー!?」
ふふ、面白い人たち。これなら大丈夫そうかも。
「ハァハァ、あーお腹痛かった、っと。初めまして。僕の名前は想真っていいます」
「へー、私はアリアよ、よろしくね!」
「私、シルヴィ」
「くそぅ、もう一度言うがソルだ」
彼女達は警戒を自然と解いていた。理由も特に無く、強いて言うなら自分達の勘に従ったのだろう。
「僕は、今日開設させたダンジョンのダンジョンマスターです。あなたたち3人が、僕の最初のお客さんです」
「へ? ダンジョンマスター? なんだそれ?」
「ダンジョンなら聞いたことあるけれど……」
「……知らない」
彼女達は知らないと言うが、知らないのも無理はない。なぜなら、ダンジョンマスターは想真だけなのだから。
「当然です。ダンジョンマスターは今のところ、世界で僕だけなので」
「うん? つまり想真は世界でただ一人の、ダンジョンマスターってやつなのか?」
「はい」
「へー、そうなのね。それで? そのダンジョンマスターさんは、あたし達に何のご用があるのかしら?」
アリアさんが笑顔でそう言ってくる、けど目が笑っていない。真剣な目をしているアリアさんを見て、僕は真実を話すか迷った。
数秒迷い、僕は一部を隠して話すことにする。
「……全然面白くない話ですけど、いいですか?」
「いいわ、話してちょうだい」
「ん、大丈夫」
「俺もいいぞ、あんたの話はなんか面白そうだしな」
そういって彼女達は黙る。僕の話を聞くためだろう。
「そうですねぇ。僕は異世界で生活していた元人間なんですが。まぁ細かい事情は省き、突然この世界でダンジョンマスターをすることになりました。ダンジョンマスターは、僕の世界で言うとダンジョンを経営する者です」
「異世界だぁ?」
「……凄く昔の本に書いてあったかも?」
ソルさんとシルヴィさんは首を傾げる。
「……んー、その事情ってやつは話せないのよね?」
「……はい、そうです」
「ならいいわ。私にはよくわからないけれど。例えるなら、大切な故郷を離れ、王都で店を一人だけで経営するような感じじゃないかしら?」
アリアはそう結論づけた。……実際はそんな簡単な話ではないが。
「所で皆さんは、此処へ何をしに来たのですか?」
「ん? あぁ。俺たちは今、トゥーリスの町から、此処。コラク草原一帯の採取物やモンスター、後は地形に変化が無いかの調査をしているんだ」
「えぇ。コラク草原はトゥーリスの町にとって、とーっても重要な場所なの」
えっ、草原ってそんなに重要かなぁ?
言っちゃあなんだけど、そんな重要な場所だとは思えない……。
「……一応伝えておくけれど。コラク草原は、このレインブリーズ王国で一番広い草原よ。本当なら大草原って言われても可笑しくないんだからね。豊富な採取物に、危険なモンスターがいないと他国まで有名なの」
す、凄いのかな? 多分凄いんだろうね。
僕はそんなとこに、ダンジョンを開設しちゃったのかー。
彼はあまり理解していなかった。この世界は危険な場所が多く存在し、コラク草原のような整った環境な場所は数少ないことを。
「ねぇ」
「へ? なに?」
すると、話の途中で急にシルヴィが喋りだす。
「ダンジョンの経営って、何するの?」
「あ! 俺もそれ気になる!」
「私も興味があるわね。ダンジョンの経営って、一体どんなことをするのかしら?」
どうやら彼女達は、ダンジョンの経営に興味を持ったようだ。
うーん。この3人には、ぜひ僕の暇潰しに付き合ってもらいたい。
想真は、そう思った。しかし、気づいてもいなかった。
彼女達が、協力してくれる可能性があっても。こんな面白い話をを見逃す3人では無いことを。
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