14 / 41
第14話 これからのこと
しおりを挟む僕が涙を流している間、3人は待っていてくれた。
そうだ、泣いてばっかじゃいられない! そう思い、僕は3人の元へ向かうことにする。
「今からそっちに行きますから、洞窟の中で待っていてください! それから、奥の階段は降りちゃダメですよ!」
「えっ、ちょっと!?」
3人に直接会いたい。今の気持ちはそれだけでいっぱいいっぱいだった。
ダンジョンコアルームから、ダンジョンの入り口まで転移する。
この転移機能は元からあった機能の1つだ。
転移すると、ちょうど入り口から洞窟に入ってくる3人を見つける。
気づけば、3人に向かって駆け出していた。
「おお! お前がソーマ、か?」
「ええっ、この子が? まだ子供じゃないの!?」
「……身長は、……くっ、私より少し高い」
3人は相真の姿に驚愕する。……約1名悔しがっているが。
彼女達から見て相真の姿は、中性的な顔立ちをした黒髪の少年だった。
「へっ? 何を言ってるんですか? 僕は成人していなかったとはいえ、子供と言われるような身長ではないはずですが……?」
《 否定 あなたは此方の世界へ転移した影響で、年齢は変わらず、体格は少年の体に変化しています。また、精神年齢も少々退化しています 》
え……? ……それじゃあ、今の僕は、小学生並みの身長で、昔の中性的な顔に戻っている……?
「……」
「お、おい。どうした?」
まぁ、いいか。ここは異世界だ。……ここではもう、あんな思いをする必要はないんだ。
「いえ、ちょっと思うところがあっただけです」
「そうか? どこか悪いならすぐに俺たちに言えよ。もうお前は俺たちのボスなんだからよ」
「ボス? ボスって……僕がですか?」
「そうよ。これからあなたは私たちのボス、そしてダンジョンマスターよ」
「ソーマの好きなようにしていい。私たちは、ただ勝手に付いて行くだけ」
えぇ、僕がボスって、大丈夫かな?
……いや、この世界でやるって決めたんだ。だからボスでも頑張ってやれるさ。
それに、元はと言えば。僕がこの世界来た理由って、ただの暇潰しの為だし、ダンジョンもののゲームをやり始めたのがきっかけなんだよね。
……うん。ゲーム感覚ってわけじゃないけど、それでもこの異世界、楽しまなきゃ損だと僕は思う
よし! そうと決まれば、やるぞー。
「分かりました、今日からボスとして頑張ります! とりあえず今から3人に、このダンジョンのこれからのことを話そうと思います」
「お! 元気になったな。で、どうするんだ?」
「それを、今から説明します」
僕は3人に、退屈で待っていた間に考え抜いた内容を話す。
「僕の計画では、まずダンジョンに来てくれる侵入者をお客さんに変えたいと思います」
「侵入者をお客さんに? それは、どういうことかしら?」
アリアがそう聞いてくる。
「侵入者の、ダンジョンを攻略、討伐する目的を、ダンジョンにただ通うお客さん気分の目的に変えようかと」
「それは、難しいな。いや、あるにはあるが……、まさかこのダンジョンをあの迷宮都市みたいにするつもりか?」
ソルが不安そうな顔でそう言う。
「いいえ。迷宮都市の様に、あんな屑たちが集まる場所には、絶対にしません。いえ、させません!」
迷宮都市とは、ダンジョンを中心に持つ町のこと。
そこは、冒険者たちが日夜ダンジョンに潜り、資源やお宝、モンスターの素材などを集めてお金を稼いでいる。
ここまで聞くと、おそらく日本人なら一攫千金や冒険者が大勢いる所だと想像するだろう。
でもそれは違う。サポートさんに確認したら、迷宮都市は屑やならず者が集まる悪人の町だった。
新人冒険者やその事を運悪く知らずに行ってしまう人の、半数以上は行方不明になっている。
国も調査に乗り出したいが、巧妙な隠蔽や大物貴族の関わりもあるせいで迂闊に手を出せない。
しかも、この事を迷宮都市の市民はそれを知らない。情報をとことん遮断しているからだ。
ダンジョンの中では、冒険者は拐われたり殺され、女性は路地で犯され、冒険者ギルドもグルなのか助けに求めてきた冒険者や市民を……。おまけに亜人や異種族は差別の対象にされる。
そんな迷宮都市と同じ所には、絶対にしたくないと思った。
いつか、絶対に迷宮都市も僕が変えて見せる。ここのダンジョンの評判にも効いてくるしね。
「お、おお。そうだな!」
「ええ。迷宮都市からは、悪い噂は聞いても、良い噂は一つも聞かないわ」
「……悪は死ね」
シル、ちょっと怖いよ……。
そんなことを思いながら、僕は計画の続きを話す。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
(完結)私は家政婦だったのですか?(全5話)
青空一夏
恋愛
夫の母親を5年介護していた私に子供はいない。お義母様が亡くなってすぐに夫に告げられた言葉は「わたしには6歳になる子供がいるんだよ。だから離婚してくれ」だった。
ありがちなテーマをさくっと書きたくて、短いお話しにしてみました。
さくっと因果応報物語です。ショートショートの全5話。1話ごとの字数には偏りがあります。3話目が多分1番長いかも。
青空異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。現代的表現や現代的感覚、現代的機器など出てくる場合あります。貴族がいるヨーロッパ風の社会ですが、作者独自の世界です。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる