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第14話 これからのこと

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 僕が涙を流している間、3人は待っていてくれた。

 そうだ、泣いてばっかじゃいられない! そう思い、僕は3人の元へ向かうことにする。

「今からそっちに行きますから、洞窟の中で待っていてください! それから、奥の階段は降りちゃダメですよ!」

「えっ、ちょっと!?」

 3人に直接会いたい。今の気持ちはそれだけでいっぱいいっぱいだった。
 ダンジョンコアルームから、ダンジョンの入り口まで転移する。
 この転移機能は元からあった機能の1つだ。

 転移すると、ちょうど入り口から洞窟に入ってくる3人を見つける。
 気づけば、3人に向かって駆け出していた。

「おお! お前がソーマ、か?」

「ええっ、この子が? まだ子供じゃないの!?」

「……身長は、……くっ、私より少し高い」

 3人は相真の姿に驚愕する。……約1名悔しがっているが。
 彼女達から見て相真の姿は、中性的な顔立ちをしただった。

「へっ? 何を言ってるんですか? 僕は成人していなかったとはいえ、子供と言われるような身長ではないはずですが……?」

《 否定 あなたは此方こちらの世界へ転移した影響で、年齢は変わらず、体格は少年の体に変化しています。また、精神年齢も少々退化しています 》

 え……? ……それじゃあ、今の僕は、小学生並みの身長で、昔の中性的な顔に戻っている……?

「……」

「お、おい。どうした?」

 まぁ、いいか。ここは異世界だ。……ここではもう、あんな思いをする必要はないんだ。

「いえ、ちょっと思うところがあっただけです」

「そうか? どこか悪いならすぐに俺たちに言えよ。もうお前は俺たちのボスなんだからよ」

「ボス? ボスって……僕がですか?」

「そうよ。これからあなたは私たちのボス、そしてダンジョンマスターよ」

「ソーマの好きなようにしていい。私たちは、ただ勝手に付いて行くだけ」

 えぇ、僕がボスって、大丈夫かな?
 ……いや、この世界でやるって決めたんだ。だからボスでも頑張ってやれるさ。
 それに、元はと言えば。僕がこの世界来た理由って、ただの暇潰しの為だし、ダンジョンもののゲームをやり始めたのがきっかけなんだよね。
 ……うん。ゲーム感覚ってわけじゃないけど、それでもこの異世界、楽しまなきゃ損だと僕は思う
 よし! そうと決まれば、やるぞー。

「分かりました、今日からボスとして頑張ります! とりあえず今から3人に、このダンジョンのこれからのことを話そうと思います」

「お! 元気になったな。で、どうするんだ?」

「それを、今から説明します」

 僕は3人に、退屈で待っていた間に考え抜いた内容を話す。

「僕の計画では、まずダンジョンに来てくれる侵入者をお客さんに変えたいと思います」

「侵入者をお客さんに? それは、どういうことかしら?」

 アリアがそう聞いてくる。

「侵入者の、ダンジョンを攻略、討伐する目的を、ダンジョンにただ通うお客さん気分の目的に変えようかと」

「それは、難しいな。いや、あるにはあるが……、まさかこのダンジョンをあの迷宮都市みたいにするつもりか?」

 ソルが不安そうな顔でそう言う。

「いいえ。迷宮都市の様に、あんな屑たちが集まる場所には、絶対にしません。いえ、させません!」

 迷宮都市とは、ダンジョンを中心に持つ町のこと。
 そこは、冒険者たちが日夜ダンジョンに潜り、資源やお宝、モンスターの素材などを集めてお金を稼いでいる。
 ここまで聞くと、おそらく日本人なら一攫千金や冒険者が大勢いる所だと想像するだろう。
 でもそれは違う。サポートさんに確認したら、迷宮都市は屑やならず者が集まる悪人の町だった。
 新人冒険者やその事を運悪く知らずに行ってしまう人の、半数以上は行方不明になっている。
 国も調査に乗り出したいが、巧妙な隠蔽や大物貴族の関わりもあるせいで迂闊に手を出せない。
 しかも、この事を迷宮都市の市民はそれを知らない。情報をとことん遮断しているからだ。
 ダンジョンの中では、冒険者は拐われたり殺され、女性は路地で犯され、冒険者ギルドもグルなのか助けに求めてきた冒険者や市民を……。おまけに亜人や異種族は差別の対象お金儲けの奴隷にされる。
 そんな迷宮都市と同じ所には、絶対にしたくないと思った。
 いつか、絶対に迷宮都市も僕が変えて見せる。ここのダンジョンの評判にも効いてくるしね。

「お、おお。そうだな!」

「ええ。迷宮都市あそこからは、悪い噂は聞いても、良い噂は一つも聞かないわ」

「……悪は死ね」

 シル、ちょっと怖いよ……。
 そんなことを思いながら、僕は計画の続きを話す。



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