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平和になったんじゃないの!?

225 女王の挑戦状

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 二百二十五話  女王の挑戦状


 「ーー…と言うことでして、人質を返して欲しければヤマタイ国と友好な関係を約束して頂きたいんですの」


 ルーナ国兵士の1人を横につけたウルゼッタが門番に交渉する。


 「しばし待っていろ」


 しばらくして奥から現れたのはルーナ国女王。
 流石にそんな早くトップが出てくるとは思わなかったウルゼッタは一歩後ろへと下がる。


 「あなた方は……少し前に遺跡調査をお願いした方々では?」


 ルーナ女王と私の目が合う。


 「うん。私たち今ヤマタイ国に住んでるんだ」

 「そうですか。それで……この状況は一体」

 
 女王が尋ねるとウルゼッタが私の前に立つ。


 「メイデスの森の住人とはヤマタイ国と協定を結んでおりますの。そしてルーナはそこへエルフ探し捕まえようと考えていた……これはれっきとした略奪行為。探索していた者を捕縛するのは当たり前のことですわ」

 
 ウルゼッタはそう言うと人質役の兵士に視線を送る。


 「は、はい! 確かに我々はメイデス森の住人がヤマタイ国とそういった協定を結んでいることを知りませんでした。ですが女王、ヤマタイ国と協定を結べば捕まった私たちの身の安全は保証されます! どうか協定を!!」


 兵士が迫真の演技で女王に頭を下げる。


 「ーー…もし断ったらどうなるのでしょう」


 女王は冷静にウルゼッタに尋ねる。


 「それはもちろん人質は私たちの好きにさせてもらいますし、ここルーナとは永久に仲良くなれないものとみなしてこの場でドンパチですわ」


 ウルゼッタも堂々たる風格で女王に答える。

 
 「ちなみに協定の内容はお決まりで?」

 「えぇ。もちろんお互いに損はないと思いますわ。色々ありますけれど、一番重要なのはお互いに争い合わないことです」


 ウルエッタが人差し指を立てて女王に向ける。


 「他にルーナに利点はあるのですか?」

 「当たり前ですわ。もし協定を結んでいただけた暁には、ヤマタイ国へと通ずるメイデスの森の最短ルートをお教えいたしますわ」

 「最短ルートですか」

 「えぇ。魔物も少なく比較安全な道。お互いに物資調達する際などに便利ですわよ」

 「それだけですか?」

 
 これは女王さん、ウルゼッタを試しているね。
 少しでも付け入る隙を探してるように見える。


 「これ以上話し合いもしたくないですからね。私から言えることはあと1つ。」


 ウルゼッタがまっすぐ女王を見据える。


 「ほう、それはなんでしょう」

 「もしルーナが他から攻められた場合、ヤマタイ国の精鋭が応援にかけつけて差し上げますわ。鉄壁のルーナに攻撃のヤマタイ国が加われば最強ではありません?」


 ウルゼッタの言葉を聞いた女王の表情が変わる。
 真面目な表情からクスッと笑った表情に。


 ーー…これはアリ? ナシ?

 
 私はその光景を静かに眺めて女王の答え考えていたのだが、その答えはすぐにわかることとなる。


 「ではこうしましょうか」


 そう言うと女王は手を天にあげる。
 すると門がゆっくりと閉まっていく。


 「え! これダメってこと!?」


 「そ…そんな、女王様ああああ!!!」


 泣き叫びながら訴える兵士たちに向かって女王は高らかに宣言する。


 「ルーナと協定を結びたければ、この鉄壁を破壊してみよ! そうすればヤマタイ国はルーナの防御力を上回る力を持つ国として認め、こちらから頭を下げて協定をお願いしよう!!」


 
 ◆◇◆◇


 門が完全に閉まった様を見て兵士たちは絶望からか膝から崩れ落ちる。


 「終わった……この鉄壁を破壊してみろだなんてそんなことできるわけないだろ。ルーナは小さいながらもその桁違いの防御力のおかげで遥か昔から周囲からの侵略から逃れられてきたと言うのに……!」

 

 「ナタリー、やりますわよ」 

 「おっけー」


 ウルゼッタはイルレシオンとユニゾニア。黄色いマントをなびかせながらクリスタルソードを抜き深く構える。
 私も足下に魔法陣を展開。覇王ミルキーポップに力を込めた。


 そしてーー…


 『いきます』

 「いっけー! 【苺爆弾】!!」


 
 私は邪神を倒したことにより以前よりもパワーアップした【苺爆弾】をーー…、イルレシオンは素早い動きで壁に剣先を突きつけ、その後激しい斬撃を何発も浴びせていく。
 そしてーー…


 「申し訳ありませんでした。ルーナはヤマタイ国との友好な関係を築くことをお約束いたします。そしてこのルーナの鉄壁に関する数少ない記述もお教えいたします」



 ルーナがヤマタイ国の仲間になったよ!!
 
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