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邪神再び

214 魔王とシモベ

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 二百十四話  魔王とシモベ


 『ではいくぞ!!!』


 魔王の号令を合図に各々が邪神の本体に向かって攻撃を放つ。


 「うにゃあああああ!!!」


 ミーナはメイスを勢いよく投擲。


 「もう一回!!」


 モニカはミーナのメイスが跳ね返った先に転移の輪を展開。それを再び邪神の胸の位置に出現させて連続でメイスを当てる。


 「みーちゃんもやる!!」

 「わ、私も!!」


 ヒミコは【風神雷神の扇子】を力強く振るい巨大な竜巻を発生。霊力のこもった竜巻が邪神の体を引き裂いていく。
 それに続いて技を出したのはヤヨイ。
 霊力の鎖【御守】を背中から勢いよく伸ばして邪神本体の手足を貫き、それだけでは終わらずそこから伸びている糸のようなものズバズバと切り裂いていく。


 『グアアアアアアアア!!!!!』


 まだ終わらない。
 次に現れたのはユニゾニア状態のイルレシオン。
 クリスタルソードで邪神本体を斬りつけ、すかさずスキル【爆炎】を発動。切り裂いた箇所に爆発を起こし邪神に大ダメージを与えた。

 そしてラストーー…

 
 『いくぞ』


 魔王は【終焉の焔】を発動。
 より威力を底上げさせた地獄の業火付きの【苺爆弾】を邪神へ浴びせていく。

 
 『ギ…ギャアアアアアアア!!!!』


 巻き起こる爆発の中から邪神の悲痛な叫び声が聞こえる。
 それは徐々に弱くなっていきーー…


 『ふむ。最後はお主らの攻撃で決めよ』


 魔王がヒミコとヤヨイに視線を向ける。


 「「うん!」」


 ヒミコとヤヨイの力のこもった一撃がほぼ意識のない状態の邪神にヒット。
 これにより邪神は消滅。 
 私たちの目の前にステータス画面が現れ、経験値獲得の表示が流れたのだった。



 ◆◇◆◇



 「お…終わった……」


 ホッとしたアンネがその場で座り込み大きく息を吐く。
 イルレシオンもユニゾニア状態を解除。気を失っているウルゼッタを支えながらゆっくりと横に寝かせる。
 ヒミコとヤヨイも国の仇であった邪神を倒せたことにより涙を流しながら抱き合っていた。
 そしてーー…


 「ーー…魔王様」


 魔王のいう【カグヤ】状態から分離したツクヨミが目に涙を浮かべながら魔王の入っている私の目を見る。


 『あぁ。我だ。ツクヨミ』

 
 魔王がツクヨミに優しく声をかける。


 「その…どうして魔王様がナタリーの中に?」

 『色々あってな。以前このお嬢さんと鉢合わせた時、我はもうあまり力がなかった。だからこのお嬢さんに装備を与えるという無茶な展開を作って我は自らの分身を生成し、このお嬢さんの中へと潜ませた』

 「魔王様ーー…」

 『だからツクヨミ。お前の活躍もこのお嬢さんーー…ナタリーの内側からちゃんと見ておったぞ。頑張ったな』


 「魔王様あああ!!!」


 ツクヨミは大粒の涙を流しながら魔王に抱きつく。


 『とりあえず…だ。我は元よりこの瞬間のためにこのナタリーの心に忍び込んでいたわけだがーー…目的も果たしたことだしそろそろシモベたちのもとへ向かおうと思う』


 魔王は静かに空を見上げる。


 「お姉様方のところへ…ですか?」

 『あぁ。皆も我との再会を心待ちにしている頃だろうからな』

 「なら…!!! なら私もそこへお供いたします!! 私の野望は魔王様と同じ…憎き邪神の殲滅でした!! 邪神を仕留めた今、私にはもう成すべきことがありません!!!」


 ツクヨミは声を震わせながら魔王にしがみつきながら訴える。
 しかしーー…


 『ーー…ならん』

 
 魔王はそれを拒否。ツクヨミの浮かべた涙を優しく指で拭い取りそっと肩を持つ。


 『ツクヨミ。お前は我らが最終兵器。まだあの世へ来るべきではない』
 
 「しかし…!!」

 『時が来ればお前だっていつかはあの世へ行くんだ。それまではこの世界で生きろ』

 「ですが私にはやりたいこともございません!!」

 『ではこう言おうツクヨミ。我らがあの世を統べるまで待機せよ!』

 「ーー…!!」


 ツクヨミの目が大きく開かれる。


 「あの世をーー…ですか」

 『あぁ。邪神はこの世界では消滅。あの世へと向かった。しかし簡単には死なせない。あの世で第二ラウンドだ!! 我がシモベたちとともにな!!』

 
 ツクヨミの瞳越しに頼もしく笑う私の顔が映る。


 「お姉様方とともにーー…」

 『あぁ。だからツクヨミ、お前にはこの世界で我の力となった褒美として、我らが天下をとったその世界を見せてやりたいのだ!』

 「ーー…!!!」

 『わかってくれるな?』

 「ーー…わかりました。それでは魔王様に呼ばれるその時まで、このツクヨミ…この世界で生きて待っております」

 
 ツクヨミの目から一筋の涙が頬を伝いこぼれ落ちる。

 
 『うむ。その時は必ず我が迎えに来ると約束しよう』

 「ありがとう…ございます」

 『あぁ。それではな……』


 魔王がツクヨミに優しく声をかけると、それとほぼ同時に視界が揺らぐ。
 すると再び私は心の中ーー…何もない空間で魔王と向かい合わせになって立っていた。


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