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邪神再び

202 VS邪神①

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 二百二話  VS邪神①

 
 『ーー…フフフ、ヤット来タカ。待チ侘ビタゾ』


 「ーー…!! なに…これ……!」


 転移の輪を向けた私たちの目の前に広がっていたのは暗黒の建造物。
 周囲は瘴気を纏った高い壁に囲まれており、その中心に黒い塔ーー…見上げないと最上階が見えないくらいにかなり高い。
 そしてその塔の入り口の両脇には邪悪な顔をした馬の石像が台の上に置かれていた。


 「ーー…みーちゃんたちの国が…」


 ヒミコとヤヨイが呆然とした表情で周囲を見渡す。


 『ドウダ亡国ノ幼キ女王ヨ。貴様ノ国ヨリモ遥カニ『力』ニ満チ溢レテイルダロウ!!』


 邪神は高く飛翔。宙に浮かびながら大きく両手を広げてヒミコ達を見下ろす。


 「ーー…一体この短時間でどうやって作ったか気になるところだけど、ここが邪神…お前の墓場になるのよ!」


 ツクヨミが漆黒の球体を自身の周りに多数展開。それらを邪神へと一斉に撃ち出す。
 そしてそれが戦いの合図となった。


 「行くよ、ヒミコちゃん!」

 「うん!」


 ヒミコとヤヨイが同時に邪神のもとへと駆け出す。


 『亡国ノ生キ残リドモガアアアア!!!』


 邪神はツクヨミには目もくれず、まっすぐヒミコとヤヨイのもとへ。
 その手に持つ鋭く長い爪を振りかざしながら勢いよく突撃する。


 「やらせませんわ!」

 『ーー…!!??』


 ギリギリのタイミングで間に割って入ったのはウルゼッタ。
 光の演出を纏ったクリスタルソードが邪神の攻撃を受け止める。


 「やはり…レベルが上がった分ーー…そう簡単には吹っ飛ばされないようですわね!」

 『ーー…貴様…何ヲ言ッテ…!!』


 しかし力は邪神の方に分があるのだろうーー…ジリジリとウルゼッタの体が後ろへと押し込まれていく。
 

 『ーー…主人様、ここは私にお任せを』

 『ーー…!!??』


 暗殺型機械人形のスキル【隠密】で姿を隠していたイルレシオンが邪神の目の前に。
 そしてーー…


 『自爆型専用術式』


 イルレシオンが邪神の目に手をかざすとピンポイントで邪神の目の付近で爆発が起こる。


 『グアアアアアアア!!!』


 邪神が目を覆いながら体を反る。


 『今ですヒミコ様、ヤヨイ様』


 「「うん!!」」


 ヒミコが【風神雷神の扇子】を取り出して勢いよく振るう。
 それにより邪神の体の周りに風が発生。グルグルと渦を巻いていきやがて竜巻にーー…そしてその周囲を激しい雷が凄まじいスピードで駆け回る。


 『グ……ガアアアアア!!!』


 もしかして結構効いてる!?


 「わ、私も!!」


 ヒミコの真横でスタンバイしていたヤヨイが背中から鎖のようなものを出現させ、それを竜巻の中に飲み込まれている邪神へと向ける。
 ちなみにこの技はヤヨイのスキル【御守】。霊力を具現化した鎖で体を持たない霊体などを拘束するときに使われるものだとか。

 ヤヨイの邪神へと向けた霊力の鎖【御守】が邪神を捕らえてその身動きを奪う。


 「もしかして…いけますの…?」


 ウルゼッタが竜巻に飲み込まれている邪神を見上げながら呟く。


 『いいえ主人様、油断は禁物です。私たちもユニゾニアをして万が一に備えましょう』

 「ーー…ですわね。わかりましたわ!!」


 ウルゼッタとイルレシオンはその場でユニゾニア。より戦闘力を上昇させてもしものときに備える。


 「ナタリーちゃん、ウルちゃん、みんな…っ! ちょっとみーちゃん限界だから攻撃解くよ!」


 ヒミコが私たちに叫ぶ。


 「大丈夫だよヒミコちゃん! 邪神は私の【御守】で捕まえてるから!」


 ヤヨイがたくましい笑みをヒミコに向ける。


 「あぁ。それに今度はアンネたちにまかせろ!」


 エルフの里から戻ってきたアンネとモニカがヒミコの前に立ちスタンバイ。
 両手を前にかざす。


 「アンネちゃんモニカちゃん、里は無事だったの?」

 「あぁ。人間ーー…ナタリーの言うとおりメイデスの森に蜘蛛型の魔物がいたのだが、そいつはアンネたちの里のエルフ精鋭部隊とガルフが倒してくれていた」

 「そっか、よかった」

 
 私が安心したタイミングでヒミコが攻撃を止める。
 

 「よーし、まずはミーナが行くにゃあああああ!!!」


 ヒミコが攻撃を解くと同時にミーナが勢いよくジャンプ。
 ヤヨイの背中から伸びる霊力の鎖ーー…【御守】の上を器用に走りながら邪神のもとへと到達。


 「これでも…食らうにゃああああああ!!!」


 ミーナは大きく振り上げたメイスを勢いよく邪神の爪へと振りかざす。


 
 バキィッ!!!



 おそらくはミーナのスキル【破壊者】が発動したのだろう。邪神の鋭く長い爪はメイスにより破壊され地面へと落ちていく。


 『キ…貴様ラアアアアアア!!!』


 「これでこいつの爪攻撃は怖くないにゃ!! アンネ!!!」


 ミーナが下でスタンバイしていたアンネに声をかける。


 「まかせろ! スキルーー…【座標転移】!!」


 『ーー…!!??』


 アンネがそのスキル名を叫ぶと一瞬で邪神の姿が消失。上空から姿を消す。


 「え…、どこ行ったの!?」
 
 
 私は周囲を見渡すがどこにもその姿がない。


 「ナタリー。あっちだ」


 アンネがモニカの展開していた転移の輪を指差す。


 「え…?」

 「モニカの用意した隠り世の空間の中にクリスタルロックを仕込ませておいたんだ。そして今アンネが使ったスキル【座標転移】を使ってその中に移動させたってことだ」


 アンネが自慢げに鼻をフンと鳴らす。


 「ーー…で、どうする? 今回は結構硬めのクリスタルロックを用意しておいたし、モニカが転移の輪を開かない限り邪神はクリスタルロックを破ったとしてもそこから外へは出られない。このまま封印という形をとるか…倒すかはお前らが決めろ」


 そう言ったアンネは私たちを見渡した。
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