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依頼!
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二十三話 違反
「依頼した蜂型魔獣の巣はあちらです。」
依頼主の小太りなおじさんが指を差す。
そこはマギルから東に出て少し行った先の道沿い。
平たんな道が続いてはいるものの、その周囲は木々で覆われていた。
「ここは我々商人からしたら大切な道。そこにあんな魔獣が住み着いたんですからもう迷惑で。」
なるほど、このおじさんは商人なのか。
おじさんの指差す方角に視線を向けると一本だけ特別大きな木。
そこにはまるで繭のような巨大な巣が木の幹に張り付くように作られていて、周囲を全長1メートルほどの大きな蜂が飛び回っている。
ー…強いかは分からないけどあれなら遠くから火炎弾撃ってればなんとかなるんじゃないかな。
「わかりました。行くよ、ウルゼッター…。」
「納得いきませんわね。」
「??」
ウルゼッタが腰に手を当てながらおじさんを睨みつける。
「どど、どうしたの?」
「これはどう見てもイチゴランクの手に負える仕事じゃないですわ。」
「そうなの!?」
「どういうおつもりかしら。」
ウルゼッタがおじさんに詰め寄る。
「い、いや…あはははは……お嬢さん、詳しいね。」
「ー…どういうこと?」
意味がわからず尋ねる。
「あの蜂型魔獣…大きさから推定するにレベルは大体20といったところですわ。」
ーー…そうなんだ。
「それでですね、イチゴランクの依頼って基本は戦闘を伴うとなりますと敵のレベルは5~10くらいって決まってますの。」
それからもウルゼッタは説明を続ける。
どうやらレベル10~20程度の敵との戦闘がメロン。
レベル25~40がブドウ。
それ以上がドリアンランクとのことらしい。
依頼するランクによって金額が変わってくるのだとか。
「それを踏まえてあの魔獣はレベル20だとすると、ナタリー、あなたもお分かりですわよね?」
「規約違反?」
ウルゼッタは大きく頷く。
「それで、どうします?私たちはこれを集会所に報告してもよろしいのですけど。」
「そ、それだけは…!!」
おじさんの顔から大量の汗が流れる。
「ーー…? 報告したらどうなるの?」
「今後一生依頼を出せなくなるのと、冒険者の命を脅かせた罰として最低でも1年間は牢獄暮らしでしょうね。」
おぉ、ちゃんとしてるね集会所運営さん。
「生憎、私のレベルは15。倒せるか倒せないかのギリギリにはなりますがー…まずは交渉ですわね。」
ウルゼッタはおじさんのおへそのあたりに人差し指を当て、ゆっくりと上にスライドさせていく。
そしてー…。
「いくら、払えますの?」
その笑みたるやまさに悪人。
おじさんはウルゼッタの気迫に負け、通常報酬2000ディアだったところを80000ディア渡すことでその身をを守った。
40倍のお金を払ってでも1年間の牢獄暮らしを避けたいらしい。
ーー…どれだけ儲かってるんだろうこのおじさん。
ウルゼッタはおじさんが逃げないよう、商人の証明書と前払いとして手持ちの30000ディアを受けとる。
「さてと。では参りましょうか。」
ウルゼッタは腰に差した短剣に手を当てながら蜂型魔獣の巣を見据えた。
「依頼した蜂型魔獣の巣はあちらです。」
依頼主の小太りなおじさんが指を差す。
そこはマギルから東に出て少し行った先の道沿い。
平たんな道が続いてはいるものの、その周囲は木々で覆われていた。
「ここは我々商人からしたら大切な道。そこにあんな魔獣が住み着いたんですからもう迷惑で。」
なるほど、このおじさんは商人なのか。
おじさんの指差す方角に視線を向けると一本だけ特別大きな木。
そこにはまるで繭のような巨大な巣が木の幹に張り付くように作られていて、周囲を全長1メートルほどの大きな蜂が飛び回っている。
ー…強いかは分からないけどあれなら遠くから火炎弾撃ってればなんとかなるんじゃないかな。
「わかりました。行くよ、ウルゼッター…。」
「納得いきませんわね。」
「??」
ウルゼッタが腰に手を当てながらおじさんを睨みつける。
「どど、どうしたの?」
「これはどう見てもイチゴランクの手に負える仕事じゃないですわ。」
「そうなの!?」
「どういうおつもりかしら。」
ウルゼッタがおじさんに詰め寄る。
「い、いや…あはははは……お嬢さん、詳しいね。」
「ー…どういうこと?」
意味がわからず尋ねる。
「あの蜂型魔獣…大きさから推定するにレベルは大体20といったところですわ。」
ーー…そうなんだ。
「それでですね、イチゴランクの依頼って基本は戦闘を伴うとなりますと敵のレベルは5~10くらいって決まってますの。」
それからもウルゼッタは説明を続ける。
どうやらレベル10~20程度の敵との戦闘がメロン。
レベル25~40がブドウ。
それ以上がドリアンランクとのことらしい。
依頼するランクによって金額が変わってくるのだとか。
「それを踏まえてあの魔獣はレベル20だとすると、ナタリー、あなたもお分かりですわよね?」
「規約違反?」
ウルゼッタは大きく頷く。
「それで、どうします?私たちはこれを集会所に報告してもよろしいのですけど。」
「そ、それだけは…!!」
おじさんの顔から大量の汗が流れる。
「ーー…? 報告したらどうなるの?」
「今後一生依頼を出せなくなるのと、冒険者の命を脅かせた罰として最低でも1年間は牢獄暮らしでしょうね。」
おぉ、ちゃんとしてるね集会所運営さん。
「生憎、私のレベルは15。倒せるか倒せないかのギリギリにはなりますがー…まずは交渉ですわね。」
ウルゼッタはおじさんのおへそのあたりに人差し指を当て、ゆっくりと上にスライドさせていく。
そしてー…。
「いくら、払えますの?」
その笑みたるやまさに悪人。
おじさんはウルゼッタの気迫に負け、通常報酬2000ディアだったところを80000ディア渡すことでその身をを守った。
40倍のお金を払ってでも1年間の牢獄暮らしを避けたいらしい。
ーー…どれだけ儲かってるんだろうこのおじさん。
ウルゼッタはおじさんが逃げないよう、商人の証明書と前払いとして手持ちの30000ディアを受けとる。
「さてと。では参りましょうか。」
ウルゼッタは腰に差した短剣に手を当てながら蜂型魔獣の巣を見据えた。
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