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イベントを終えて

84 【宵闇】の女性

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 八十四話  【宵闇】の女性


 いつの間に寝てたんだろうー…。
 自然と目を覚ました私は部屋の時計を見る。

 時刻はまだ朝の四時。
 ウルゼッタやヒミコはそれぞれのベッドですやすやと寝息を立てていた。

 ウルゼッタのベッドにはローター。
 ー…使って寝たんだ。


 「んーーーっ。」


 眠気もないので軽く背筋を伸ばし、外の明るさを確認するためにカーテンに手を掛けた。
 するとー…。


「ーー……!!??!!??」


 カーテンを開くと、外にはイベントの時に戦ったチーム【宵闇】の謎の女性。
 いずれ報復に来るって言ってたけど早すぎない!?

 私は急いで魔王ミルキーポップを握りしめる。


 しかし。


「違うの、違うの!」


 窓の向こうから女性が首を激しく降りながら両手をクロスさせて戦闘の意思がないことを伝えてくる。


「え??」

「ちょっと外に出てきてくれる?」


 私は女性に言われるがまま部屋を出て外へ。
 すると女性は私の姿を見るなり涙目になりながら抱きついてきた。


「もうあなたしか頼る人がいないのーーーー!!」



「ええええええええ!!??」



 変に無視してまた暴れられても困るので、私は女性の話を聞くことにした。


 ◆◇◆◇


「ーー…ってことなんだー。」


 女性はぐすんとため息交じりに訳を話す。
 内容はこんな感じ。


=============


 女性は元々魔王によって秘密裏に作られた最終兵器。
 もしもの時に敵を殲滅させるよう、魔王とは別の場所で待機していた。

 
 そんな中、身を潜めていた場所にボロボロ状態の仲間ー…魔王幹部の1人が訪れる。
 彼女は言った。


『魔王様…やられてしまったわ。』


 話を聞くと魔王を倒した相手は邪神と名乗る者。
 なんでも魔王が弱体化してしまっているところを運悪く襲ってきたらしい。

 魔王は一瞬にして邪神の手によって沈められ、幹部たちは必死に魔王の亡骸を守ろうと奮闘するも魔王の亡骸を人質にされてしまい、本来の力が発揮できずにやられていった。
 最期に幹部が女性に残した言葉。


『あなたが魔王様の仇を撃ちなさい。』


=============


「ーー…なるほど。」


「私の最終的な目的は邪神を滅ぼすことなの。でもまずは魔王様を弱体化させた忌むべき相手を殺さないと。」


 女性は指をポキポキと鳴らす。


「ーー…で、なんで私?」

「あなたの放ったあの爆炎は効いたわ。私が魔王様を弱体化させた人を殺した暁には、邪神を滅ぼすのに手を貸して欲しいのよ。」


「ーー…え?」


 突然のお誘いに言葉を詰まらせる。
 そりゃあヒミコも邪神から国を取り戻したいって言ってるし、最終的な目標は一緒だけど…。


「ー…その魔王さんを弱体化した相手はどうやって見つけるの?」


「そこはもう完璧よ!」


 女性はウインクをしながら親指を立てる。


「あのイベント参加は失敗だったわ。冷静になって考えたら、あんな状況になって自分がやりましたって言えるはずないものね。」

「ーー…はぁ。」

「だから私、考えたの! 日常に溶け込んで上位チームと仲良くなれば、魔王を弱体化させたって自慢してくる愚か者がいるんじゃないかってね!!」


「あーなるほど。」


 それは大いにあり得そうだよね。
 魔王を弱体化させたって結構すごいことだと思うし。


「ー…でもどうやって仲良くなるの? あなたはもうこの界隈では恐れられてると思うんだけど。。」


 あれだけ大暴れしたらね。
 

 しかし女性はクスっと笑い首を降る。


「そこは私、いい考えが浮かんだんだなー。」

「ー…なんですか?」


「あなたたちの仲間になってしまえば早いのよ! そうしたら警戒されることもあまりないだろうし…もちろん正体はバレないように変装するわ!」


「ええええええええ!!??」


 流石に私の一存で決められない。
 私は皆の意見を聞くために女性を部屋へ連れて行くことにした。


「あ、それで少し気になったんだけど。。」

「なーに?」

「魔王さんってどんな方法で弱体化させられたの? やっぱり魔法?」


 女性は静かに首を振る。


「いや、信じられないかもしれないんだけどね、魔王様…ナルテア国近くの森でおしっこを踏んで弱体化してしまったらしいの。」



 ーー…は?


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