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45 禁断の保健室☆

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 四十五話  禁断の保健室☆


 ベッドの上でボーッとしていると多田が「福田、大丈夫ー?」と保健室に入ってくる。


「大丈夫って言うか……お前よく三好たちにあんなこと言えたな」

「あんなこと? ウチなんか変なこと言った?」

「言ったわああああ!!! オレがせっかくお前がみんなから距離を置かれないようにラブカツオーディションのこと内緒にしといてやろうと思ってたのに……なんで速攻お前からぶっちゃけるんだよ!!」

「えー、でもそっちの方が楽しくない?」


 多田が首を傾げながら唇を尖らす。


 どうやらJSの精神年齢では【男女の秘密の共有】は意味を成さないらしい。
 オレは体験してみたかったことが出来ないと分かり、目には見えない涙を流した。


「ん? どしたの福田」

「なんでもねーよ。 で、何の用だ?」

「あ、そうそう! 佳奈と美波もウチと一緒にやってくれるって!」


 多田が嬉しそうに両手を合わせながらオレに笑顔で報告する。


 ーー……。


「え、マジ?」

「マジマジ!!」

 
 な、なんだってエエエエエエ!?!?!?


 オレが目を大きく見開きながら驚いていると、多田が「ちゃんと福田と裕太兄ちゃんも一緒にやるってことも教えたよ!」とVサインを向けてくる。


「え、ていうか三好たちよくオーケーしたな」

「まぁね! 佳奈は家族にかっこいいところ見せたいらしくて、美波は将来の夢がアイドルだから練習にちょうど良いかもって」


 うんうん、聞きたいことが山ほど出てきたぞ。

 オレはそれを順番に聞くことに。
 とりあえずまずは……三好からいくか。


「三好は……家族にかっこいいところを見せたいから?」


 オレの確認に多田が「そーだよ」と素直に頷く。


「福田は知ってるか分かんないけどさ、佳奈にはお兄ちゃんがいるんだよね。 で、そのお兄ちゃんが頭がめちゃめちゃ良くて佳奈、いつもバカにされてて悔しいんだって。 だから自分のかっこいい姿見せて見返してやるって言ってたよ」


 賢い兄の妹がいじめっ子……。 なるほどな、兄にバカにされて溜まったストレスの捌け口がダイキだったわけか。


「それで、小畑さんは? アイドルになりたいってマジ?」

「あれ、知らなかったっけ。 美波、なんでも良いからアイドルグループに入って有名になって、サニーズのイケメンと付き合いたいんだって」

「イケメンと……付き合う?」

「うん」

「そのためだけに?」

「らしいよ」

「そ、そうか」


 なんという欲望の塊。 さすがは小畑といったところだろうか。
 サニーズって確かあの有名なイケメンアイドルグループが所属している事務所のことだよな。 ずっとアニメやゲームの生活しかしてこなかったからそこら辺は全然わからないぜ。


 オレはなるほどな、三好も小畑もそれぞれ理由が……野望があって参加してくれたのかと納得していると、ここでとある疑問が浮かび上がる。


 ーー……ん? じゃあ多田の夢や野望はなんなんだ? なんで参加しようと思ったんだ?


 オレは早速多田に尋ねてみることに。
 すると多田の答えは先ほどの三好や小畑とはまったく違うものとなっていた。


「え、ウチ? シンプルにラブカツが好きだから」


 多田が純粋な瞳で迷いなく答える。


「ーー……え? それだけ?」

「うん、そうだよ。 ダメ?」


 多田が首を傾げながら尋ねてくる。


「いや、別にダメってわけじゃないけど……夢とかないのか?」

「そうだねー。 だってあのオーディションって小学生限定なんだよ? せっかく応募出来るんだしラブカツと触れ合えるんだからやるしかないっしょ!」
 

 ウオオオオオオ!!! もう多田、お前が優勝だよーーーーー!!!!
 そうだよな、それでこそJSだよな!! オレはそんな純粋な多田を応援するぞ!!


 オレは心の中で多田に拍手。 その後多田の肩をガシッと掴んだ。


「え、どうしたの福田」

「多田! 学校終わったら前行ったファミレスで作戦会議だ!!」

「え、もうやるの?」

「もちろんだ! こういうものはやること……準備がたくさんあるからな!! とりあえずオレは今日の授業を休んでここで作戦考えとくから、放課後またここに来てくれ!」


 オレは親指を立てて多田に向ける。
 するとどうだろう……多田がキョトンとした表情でオレを見つめてきてるではないか。


「ん、なんだ多田。 オレの顔に何かついてるか?」

「あ、いやさ福田……」

「なに?」


「もうその放課後なんだけど」


「え」


 多田が「ほら」と言いながら壁に掛けられている時計を指差す。
 確認してみると時刻は既に午後3時半。
 

「ーー……え、オレずっと寝てたの?」

「そーだよ? 昼休みに福田にいたずらしようと美波が一回ここに来たんだけど、気づかなかったんだね」


 なん……だと。


 寝込みを襲うプレイを自ら思いつくとは……さすがエリート。
 絶対将来、そういうお店で働いた方が人気出ること間違いないだろう。 そして今はそれよりも……


「なぁ多田」

「なに福田ー」


 これは……聞いておかなきゃいけないよな。
 オレは真剣な表情で多田を見上げると、ゆっくりと口を開いた。


「ちなみに小畑さん、オレに何をしたんだ?」


 なんかイタズラされたって考えると心なしか服がはだけてるような気も。 まさか小畑……オレの動物園を!?
 オレがドキドキしながら尋ねると、多田はゆっくりとオレの顔を指差す。


「いや……っていうか福田、気づかなかったんだ。 それ」

「え?」

「いやその顔の落書きしかないじゃんどう見ても」

「ーー……ん?」


 顔の落書き??
 オレは確認するためにスマートフォンを鏡代わりにして自分の顔を確認することに。
 

「な……なんじゃこりゃああああああ!!!!」


 すると大胆にもオレのおでこに『みなみん参上!』の文字。
 なんて可愛らしい字体なんだ……そしてオレが眠っている間にこれを書いたってことはオレの顔の至近距離に小畑の顔をあったってことだよな。
 ということはオレの顔に小畑の息がかかっていたということではないのか!?!?


 まさに禁断の保健室!!!


 オレは急いでハンカチを取り出すと、おでこ以外の顔を全力で拭く。
 これにより小畑の息の成分はこのハンカチに付着!! おでこの文字を洗い流したとしても小畑成分は確保しておいたからなんの問題もないぜ!!

 その後オレは多田とともに保健室を出ることに。 しかしまずはおでこを洗わないといけないため多田に「ちょい先に行っててくれ」と伝える。

 そして多田が「おけー」と鼻歌を歌いながら保健室を出たのを確認して……


 今だ!! 唸れオレのスマホ!!!


 オレはスマートフォンでカメラを起動。 おでこに書かれた小畑のサインをいろんな角度から連写した後に泣く泣くサインを水で洗い流し、多田の待つ下駄箱へと向かったのだった。


 あ、ちなみに後でカメラフォルダを確認したら150枚くらい撮っててびっくりしたぜ。
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