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26 いじめノート
しおりを挟む二十六話 いじめノート
どうしてこんなことになったのか。 それをオレは問いたい。
今オレのいる場所……それは姉・優香の腕の中。
ここに至るまでに経緯を簡単に説明しよう。
それは結城の寝る場所をどこにするか……という話から始まった。
◆◇◆◇
「桜子ちゃん、私他で寝るから桜子ちゃんは私のベッドで寝る?」
優香がそう提案すると結城は力強く首を横に振る。
「なんで?」
「だってその……お姉さんに迷惑かけたくない」
あー、なるほどな。
確かにそういうのあるよな。 友達にはお願いできてもその親や兄弟には頼みづらいってこと。
オレも昔友達の家に遊びに行ったとき、その親に「帰りに車で送ってあげる」と言われたことがあるが申し訳なくて断ってた記憶があるぜ。
てことはオレのベッドならいいのかな。
リコーダーだって使ってるんだ、もしかしたら……ということもあるかもしれない。
オレはわずかばかりの可能性にかけて結城に尋ねてみることに。 「じゃあさ、結城さんオレのベッドで寝る?」と冗談交じりに提案する。
「え」
「あ、もちろんオレは別のところで寝るけどね」
聞くだけならタダだよな。
もしこれで結城がオーケーした日にはオレは合法的にJSの香りを自分のベッドに染み込ませることに成功することになる。 そうなれば数日間はフィーバータイムだぜグヘヘェ!!!
「ーー……で、どうかな結城さん」
「えっとじゃあ……うん」
え、マジ?
「ほ、ほんとに?」
「うん、福田……くんがそれでいいのなら」
キッタアアアアアアア!!!!
こうして結城はオレのベッドで寝ることが決定。
早速時間も時間ということなのでオレは結城を自室へと案内してとりあえずリビングへと戻る。
まぁあれだ、オレはソファーの上で寝れば問題ないよな。
そういう流れでオレはソファーの上に寝転び釣り上がりそうな口角を無理やり抑え込んでいたのだが……
「ねぇダイキ」
優香がソファーの横からオレの顔を覗き込んでくる。
「ん、なに?」
「ダイキって女の子に優しいんだね。 お姉ちゃんちょっと嬉しかったな」
「え」
「だからってわけじゃないんだけどさ、今夜はダイキ、お姉ちゃんと一緒に寝よっか」
うおおおお神展開キタァアアアアーーー!!!!
◆◇◆◇
そして今に至る!!
あぁ……JKと一緒に睡眠、やはりこれは格別だぜぇ……。
鼻から入る香りは甘く、目線を下に移すと大きめのTシャツから出ている生脚……太ももが実に素晴らしい。
そして耳からはとろけるような優香の寝息が聞こえ、もう全身がパラダイス状態となっていた。
優香はすでにスヤスヤと夢の世界へと行っているため軽く脚に触れるもまったく目覚める気配がない。
てことで、ちょいと失礼しますよ。
オレはそっと優香のTシャツを指先でめくる。
するとそこにはーー……
イェス!!! パンツ!!! イェス!!!
この暗闇でも確認できるほどの近さにパンツ。
いや……距離じゃない、パンツが神々しくて光り輝いているから今オレにも見えているのか!!??
「んーー」
「!?」
それは突然。 優香は体勢を変えてオレの頭に腕を回し、まるで抱き枕のように抱きしめ始めるではないか。
しかも優香の脚はオレの足の間……股のあたりへとスルリ。
「ーー……おぉ」
おおおおおおおおおお!!!!!!
太もも当たってる太もも当たってる太もも当たってる!!!! イェス! イェス!! イェス!!!
しかし待ってくれ! 流石にこれ以上は……これ以上はオレがもたないぞ色々と!!
このままでは優香の脚とベッドが悲惨なことになりかねない。 オレは名残惜しみながらも体を捻り、静かに優香ホールドから抜け出して部屋を出たのだった。
◆◇◆◇
「あー、やっぱJKは最高だわぁ」
余韻に浸りながらトイレに向かおうとするとオレの部屋の扉から光が漏れている。
ーー……なんだ? 結城のやつ、同い年の男子の部屋に興味津々で眠れないのか? だったらちょっと話し相手になってやるか。
「どうした結城さん。眠れないの?」
そう声をかけながら扉を開けて中に入ったオレだったのだが……
ーー……え?
そこにはオレのベッドの上で涙を流している結城の姿。
これはまずいタイミングで入ってきてしまったなと思いながらも腹をくくり結城に近づいていく。
「えっと……結城さん、どうしたの」
「あっ」
「え?」
結城が慌てて何かを隠そうとしたのでそこに視線を向けてみると、そこ……結城の隣に置いてあったのはダイキの書き残したイジメノート。
ということはもしかして……
「ーー……もしかして見た?」
オレの質問に結城は静かに頷く。
「あぁ、マジかぁー」
これはやっちまった。 そういや次のターゲット決めてる時にジュース飲みたくなってコンビニに行ったんだったな。
日頃から整理整頓しなきゃまずいなこれは。
「そのさ、なんかごめんね。こんな辛いもの見せちゃって」
イジメられてる子にこんなものを見せてしまって……余計に傷を増やしてどうすんだよ。
オレは自分の行動の甘さに後悔しながらもそのノートに手を掛けた……そんなだった。
「福田……くん」
「ーー……え」
突然結城がオレに抱きついてくる。
「ん、え……? ゆ、結城さん!!??」
いきなりのことで意味が分からなかったオレだったのだが、視線を結城の方へと移してみると結城はオレを抱きしめながら泣いている。
「ちょっと……あのえっと、どうしたの!?」
これはあのノートで怖がらせてしまったのだろうか。
そう感じたオレは改めて結城に謝ろうと口を開こうとしたのだが……
「ーー……辛かったね、大変だったね」
「え」
結城が泣きながらオレの頭を撫でる。
「私も……いじめられてたから気持ち痛いほど分かるよ。 それに私も福田……くんがいじめられてるところ見たことある。 ごめんね、助けてあげられなくて……!!」
ーー……!!!
なぜだろう、オレ自身は全然辛くなく……逆にかなり楽しんでいたはずなのに勝手に涙が溢れてくる。
あれか? オレはそうでなくても、この身体がその辛さを覚えてたとかそういうやつなのか?
「私にできることあったら……力になるから」
結城が嗚咽まじりにオレを見上げる。
まさに感動的な展開。 雰囲気的にこのままキスしちゃいそうになっていたオレだったのだが、次に放たれた結城の言葉にオレは耳を疑った。
「ーー…だから死なないで」
「ーー……」
え? なんでそうなるの?
「あの、結城さん? なんでオレが死ぬと?」
「え?」
「あ、いや、だからなんでオレが死ぬの?」
そう尋ねると、結城は「だってノートの最後のページに書いてた……から」とイジメノートを指差す。
「え……マジ?」
オレは急いでノートを確認。 結城の言っていた最後のページを開いてみたのだが、このノート……最初の数ページにしか書かれてなかったから最後のページとか見たことなかったぞ。
最後のページをめくるとそこは無地。
しかしその右下の端に小さい文字でこう書かれていた。
【もう疲れた。 死にたい】
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