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17 それは予想外ですわぁ!!

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 十七話  それは予想外ですわぁ!!


 ある日の休み時間。  オレの席の隣をさりげなく通り過ぎた多田が机の上に小さく折りたたんだメモ用紙を置いていく。


 「……ん?」


 周りに見えないように机の下で開けて確認してみると、結構可愛い筆跡。
 そこには次のように書かれていた。


 ===

 村本くんが杉浦くんが出席停止になったの福田のせいじゃないかって疑ってるみたい。 なんか怒ってたよ。 今日の放課後、問いただすって。

 ===


 なるほど。 おそらく杉浦がオレを追いかけていたところでも見ていたのだろう……それにしてもよくやったぞ多田。 ちゃんとスパイやってくれてるじゃないか。

 密告文に書かれてあった村本……ダイキノートによるとこいつは杉浦と仲が良く、以前には杉浦とともに野次を飛ばしてきてた奴だったよな。
 それにしてもオレに怒るのはお門違い……自分のしてきたことは棚に上げて『よくも仲間をー!!』なんてな。 やはり知能も小五レベル……視野が狭いったらありゃしない。
 

 まぁいいや、来るなら来い村本。 オレは男相手に容赦はしない……格の違いを見せてやるぜ。
 
 
 ◆◇◆◇


 放課後になるとすぐに村本がオレの席へ。
 机をバンと強く叩いてオレを睨みつける。

 ったく、そんな大きな音を立てて威嚇するだけでオレがビビると思ってんのかこいつは。
 まぁもう戦いは始まっている……演技はするけどよー。
 
 オレはわざとらしく身体をビクつかせながら「な、なに?」と尋ねた。


「話があるから体育館裏に来いよな。 ていうかこれ、強制だから」


 そう言い残した村本は1人で教室を出て行く。

 どうやら杉浦と違ってすぐに手が出るタイプではなさそうだな。 そんなことを思いながら奴の背中を目で追っていたのだが、そんな村本と入れ替わるようなタイミング……小畑がオレのもとへと近づいてきた。


「村本になんかしたの福田ー。 私、今日福田をめっちゃ蹴りたい気分なんだけどー」


 小畑が教室を出て行った村本の方向に視線を向けながらオレに話しかけてくる。


「ーー……え?」

「いやさ、なんかもう五時間目始まるくらいからかな。 福田を蹴りたくて蹴りたくて、うずうずしてたんだよね!」


 突然のドS的発言。 驚いたオレが小畑に視線を移してみると、なんともまぁ妖艶な笑みを浮かべていること。
 そんなに脚が疼いているのだろうか……オレの目の前で制服の上からだが自身の太ももを上下にさすり出す。

 ーー……待って、最高やん。

 これによりオレの心は一気に揺さぶられることに。
 今回は村本の件は放っておいて、目の前の綺麗で尊い小畑のおみ足に蹴られることを楽しもうかなーなどと考えていたのだが……


「どうしたの美波ー」
「福田となんの話?」


 多田と三好が小畑のもとへ。

 2人はおそらく、このままではオレが村本のところへ行けないと感じて小畑を引き離そうと来てくれたっぽいのだが、ドSの権化にそんな遠回しな行動は通用しない。 小畑は「なんか福田、村本に呼び出されててさ。 でも私、今福田のことめっちゃ蹴りたいんだよねー」とオレの足に数回、足のつま先で蹴りを入れてくる。


 あぁなんという焦らし!!
 もっと強く蹴ってよおおおおおおお!!!!


「でも美波、村本に呼び出されたんだったらウチら今日はやめといた方が……」

「ええーー、いいじゃんそんなの無視させとけばさー」

「いやいや、それで男子対ウチらになったらどーすんのさ」

「大丈夫だってー。 そんなことなったら私が返り討ちにしてあげるからぁー」

「「ええ……」」


 三好や多田が頑張って説得するも、小畑はそれが嫌なのか「いいじゃん村本なんて。 私らで遊ぼうよー」と甘えた声でぴょんぴょん小さく飛び跳ねる。

 か……かわいい。

 そしてそうだよな小畑。 オレがお前らと遊ばないなんてありえんな!!
 なのでオレは三好と多田にオレの腕を掴むよう、アイコンタクトを送る。


「ーー……!」


 真っ先に気づいたのは三好。 さすがオレの第一の奴隷だ。
 困惑しつつもガッと腕を掴んでオレを席から立たせる。


「じゃあ……そうだね。 いいじゃん麻由香、行こうよー」

「え、佳奈!?」
「やったー!! さすが佳奈ーー!!」

「てことだから……ほら福田、行くよー」

「あ、はい」


 三好はオレを引っ張りながら教室の外へ。 そしてその僅かな時間……目を合わさずに小声でオレに話しかけてくる。


「村本のことはいいの?」

「あぁ。 まぁあいつの相手は今からしてやるんだけど……後で絶対向かうから、いつものところで待ってて」

「ーー……?」


 そう言うとオレは三好から離れ、あえて4組の近くを分かりやすく通りすぎることに。
 するとこれも計算通りなんだよなぁ……4組の教室の方から「あ、福田くんちょうどよかった。 今から呼びに行こうと思ってたの」と声をかけられた。


「ーー……え」


 これまたわざとらしく声のした方に視線を向けると、そこには西園寺とその取り巻きが数名。
 うん、人数的にも申し分ないな。


 ーー……よし、やるか。


 オレは「ご、ごめん……! 今日は……」と謝ると下駄箱のある正面玄関へと八百長ダッシュ。 
 後ろを振り返ってみるといい感じだ。 「あ、こら! みんな追いかけて!!」と西園寺&その取り巻きが一斉にオレを追いかけてくる。

 はい、釣れたあああ☆

 オレはちょうどいい距離を調整しながら呼び出されていた体育館裏へ。 
 到着するとそこに先についていた村本がオレを発見。 「よう。 とりあえず痛い目にあいたくなかったら正直に話せよ?」とオレに近づいてきたのだが……

 さぁ村本よ、ショーの始まりだ。


「見つけたー! 西園寺さん呼んできて!」
「わかった!」


 村本よりも先にオレのもとへとたどり着いた西園寺の取り巻きがオレの腕を掴み拘束。
「ちょっと……なんだよお前ら!」と叫んでいる村本のことなど無視しながらあまりない力でオレをゆっくりと引っ張っていく。


「お、おい! 聞けって! 福田は今から俺が……!」

「別にいいでしょ! 福田は貰ってくから!」

「は……はああ!?」


 取り巻きの女子が「ほら、こんな奴放っといて行くよ!」とオレの腕をグイッと引っ張る。
 しかし村本もここで引くわけにはいかないのか「いやちょっと待てよ! 俺はこいつに大事な話があんだよ!」と取り巻きたちの進行方向に先回りし、両手を大きく広げて行くてを阻んだ。


「そんなの知らないし! 邪魔だからどっか行って!」
「ほんとそれだよ! そこどいて!」


 取り巻きの1人が村本の胸を強く押す。
 そしてその行動が村本を怒らせた。


「は? 急になんだよ!!」


 こいつ……怒ったら男女関係ないタイプなのかな。 村本も同じように取り巻きの胸を押し返す。


「いったーい!! なにすんの!?」

「それはこっちのセリフだ!! 元はと言えばお前らが先にやってきたんだろ!!」

「それでもこんな強く押してないんですけど!」

「押した!」

「押してない!」

「押した!!」


 なんとも幼稚なバトル。
 両者とも最初こそは言葉での言い争いが主だったのだが次第に手が出てポカポカと叩き合いが開始される。

 ーー…よしよし、そのまま西園寺が来るまで続けてろ!
 そうしたら西園寺は自分の獲物を横取りしようとする村本を敵視してもっと本格的に争うはずだからな。

 オレはそんな展開を予想してワクワクしていたのだが、結果は違う方向へ。


「ーー……ぐすっ」


 は?

 一体何がどうなったのだろう。
 村本が突き返した西園寺の取り巻きの女の子が急に泣き出したのだ。
 ーー……胸らへんを抑えながら。
 

「うああああああん!!! 村本くんに触られたああーー!!!」


 えええええ!!?? そっちぃいいい!!??

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