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コンビ組もうぜ
しおりを挟む中学生の頃、俺は美術部に入っていた。
もちろん運動なんかもしていないし、友人も多くはなかった。
同じ部活の女子二人。
その2人は俺より前に仲良くなっていて、その二人の間に俺が割り込んだ感じだ。
俺の知らない話を楽しそうに話す姿を、苦笑いをしながら眺めていたのを今でも覚えている。
そういえば、二人の友達、つまりは友だちの友達とも交流があった。そいつは俺の知らない話をすることはあまりなかったな。
気が使えて性格がさっぱりしていて、多少喧嘩っぱやいけど、俺はそこも好きだった。
仲良くなることは無かったが。
高校は受験をして、性格のさっぱりしたやつ以外は同じ高校に入った。
その学校は部活にかなりの力を入れていて、珍しく運動部が少なく
演劇部やダンス部など舞台に立つようなものが多かった。
驚いたのが『ダンス部』だけでも4つに分かれていて、どれも系統の違うダンススタイルだったことだ。たしか、可愛くてポップなところと、セクシーでかっこいいところ、男子しかいないいいかついとこと、オールマイティになんでもやるとこがあった気がする。ちなみオールマイティなとこが一番人気である。
で、俺はそこに入った。
入ってみるとそこでも小さなグループができていて、人見知りな俺はどこにも入れずにいた。
その時唯一話しかけてきたのが同じ学年の慶だった。
「お前男みたいだな」
「そう?」
「小せえ」
「まあ」
「なに?人見知り」
「そうだけど」
「じゃあ、俺とコンビ組まねえ?」
「は?」
じゃあ、の意味もわからなかったし、コンビという言葉は俺に芸人を連想させたが
「ちょうど男みたいな女子探してたんだわ、俺がやりたいダンス的に」
という言葉から、ああ、ダンスのコンビか、と気がついた。周りでは数人の男女グループがワイワイダンスユニットを組んでいる。
「他のとこ入んなくていいの」
「大人数とかめんどいし、二人でよくね」
「ああ、まあ、うん」
「俺〝慶〟な。けい。鈴村慶」
「えと、桜葵」
「うわ、どっちも名前みてえ」
「よく言われる」
「よし、コンビ名考えようぜ!」
「えっ、ちょ」
腕を軽く引かれながら、ある程度メンバーが決まったグループの間をすり抜け、部室の端にあるスペースに腰を下ろした。
「なにがいい?」
「俺、ダンスとか全然したことないんだけど」
「安心しろ俺もだから」
「あ、そうなんだ」
まて、初心者ふたりのダンスコンビってどうなんだ?人見知りの俺が言うのもなんだが、実力のある先輩、そうでなくとも経験者を1人くらい捕まえてくるべきなんじゃないだろうか。
「大丈夫かな、それ。もう一人くらい誘った方が」
「大丈夫っしょ!」
「軽くない?」
「いやだって、基本的なことは先生が教えてくれるし」
「まあそうだけど...」
「葵...ぶるー、鈴はベルか」
「濁音二つ入ってたら響き悪くないかな」
「だな!」
「そもそも名前からとるって」
「桜はチェリーブロッサムだよな」
「いやだからさ」
「チェリーベルってどうよ!」
「話聞けよ」
「あれ?チェリーってさくらんぼじゃね!?」
「はぁ......」
こうして俺は、未経験者2人のダンスコンビを組むことになってしまった。
名前は後々考えるとして
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