誰とでも寝る黒ギャルビッチな彼女が僕の『彼女』になるまで

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第四話

夏の始まりは官能的だ1

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 あの日から、俺達は本当に友人になった。
 学校を休むこともなくなり、クラスでも仲良く、堂々と会話している。
 当然、周りは噂した。けど、気にならない。だって……

「おはよー、楠」
「おう、おはよう」
「今日さー放課後駅前のカフェに付き合ってくんない?」
「また~? この間行ったばっかりじゃんかよ」
「違うんよ、全然違う!」
「わかった、なら行こうか、一緒に」
「やったぜ!」

 ぴょんっと可愛らしく跳ね、喜ぶ茜。
 その姿を見ていると、噂なんて全く気にならない。
 楽しかった。
 今まで霧の掛かった学校生活だったが、太陽のような笑顔が照らしてくれる。
 ずっと、このまま友人でいたい。

「それじゃ、また放課後ね!」
「あぁ、放課後」

 そう言い残し、自分の席に戻るの後ろ姿を見送る。
 すると男子達が一気に俺の元に群がってきた。

「なぁ、なぁなぁ! 真一、お前どうやって茜さんと仲良くなったんだよ!?」
「え? いや、色々あって」
「まさか、もう筆おろししてもらったのか?」
「そんなんじゃねーよ。茜とはただの友達」
「茜ってッ! 付き合ってるじゃん!?」
「だからそんなんじゃ──」
「でも、茜さん彼氏いるんでしょ?」
「──えッ?」

 茜に彼氏がいる……? ちょっと待て、それは初耳だった。
 いや、いても全然変なことじゃないんだけどさ。
 美人で可愛いし、性格もいいから、そりゃあ彼氏もいるだろう。
 予想してなかったわけじゃない。
 でも、実際言葉で聞くと、何故か胸がズキっと傷んだ。

「あれ、真一知らなかったのか?」
「あ、あぁ……恋愛トークとかしないからな」
「めちゃくちゃイケイケの彼氏らしいぜ? ザ・茜さんの彼氏って感じの」
「……」

 そうか、いるのか、彼氏。イケイケの。
 うん、まぁ、うん、そうだろう。うん。

「……なんか、悪い事言っちまったか、俺ら」
「いや、大丈夫だ。ありがとう、教えてくれて」
「お、おぅ、まぁあれだ、せっかくのチャンスなんだから、一発ヤッとけよ?」

 男子生徒達は、言いたいことだけを言って蜘蛛の子散らすように去っていく。
 一発ヤッとけって、馬鹿か。それこそ、そんなことしたら友達じゃなくなっちゃうだろ。

 ……しかし、茜に彼氏がいたのか。
 俺はスマホを取り出し彼女に連絡を送ろうとした。けど、送信ボタンを押さずポケットに戻す。

『茜、彼氏いるのに俺と遊んで大丈夫?』

 この一文、冷静になればすげーださい。
 茜の方から誘ってくれてるのに「大丈夫じゃない」って言うわけない。
 大丈夫って言葉を俺が欲しいだけってのがバレバレだ。

 ……でも、やっぱり気になるな。
 じゃあこんなのはどうだろう。

『彼氏いるんだって!? マジかよ、俺に教えてくれよ~(泣)』

 いやいやいや、ダサさが増してるじゃん。
 ワンチャン彼女になってくれるかと思ってた的な雰囲気をそこはかとなく相手に伝えようとする弱気感。
 向こうだって、リアクションに困るだろうに。

 というかそもそも、俺はどうしてこんなにも動揺してる?
 友達に彼氏がいようと関係ないじゃないか。
 俺たちは恋人同士ではないのだから。

「──っ、うぉ!?」

 何度もスマホを出したりしまったりしていると、いきなり「ブブ」と振動し落としそうになったところを慌ててキャッチした。
 画面を見ると茜から『ソワソワし過ぎ(笑)。どんだけ楽しみなん?』と来ている。

 確かに、彼女の言う通り楽しみで楽しみで仕方がない。
 でも、せっかく霧が晴れたり青春だったはずなのに、再びモヤが掛かってしまった。
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