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第二話
買い物は官能的なのか5
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淡い桃色で彩られた店内。
半裸のマネキンには可愛らしいレースのついたスケスケの下着が装着されている。
中には若い女性が数人程、しかも全員が茜姉に負けないくらい巨乳だ。
「ここ、大きめのサイズが沢山置いてあって助かるんだよねぇ~。ほら、私って高校生じゃ考えられないくらいデカいでしょ?」
前屈みになり、ズィっと身体を寄せて来る。デカい、あぁ、デカい。圧巻。
決して露出の多い服ではないが、逆にそれが胸のデカさを際立たせている。
ゴクリ、心の中で生唾を飲み込み、固い意志で視線を胸から避けた。
こうすることで、やっと言葉を発せれる。
「……犯罪だろ」
「別に犯罪じゃないよ、お店に入るくらい」
「いいや、犯罪だ、捕まりたくない」
「お店には予め言ってあるから大丈夫」
「予め……!?」
「行き付けの店でさ、仲良しなんだよね」
「だったら一人で来ればいいじゃんか!?」
「駄目駄目ぇ~今日は『彼氏』に下着を選んでもらうって伝えてんの」
「──かひッ!?」
彼氏に、下着を、選んでもらう!?
そんな風習が陽キャには存在するというのか!
よく見ると、客の視線も、店員の視線も、さっきの珈琲屋で感じていたものとは別。
微笑ましいというか、見守るというか、なんだかムズムズする視線だ。
「てか、それ以前に俺は彼氏じゃない!」
「お姉ちゃんって思い込めるなら、彼女って思えない?」
「む、む、むりぃ!」
「だったらお姉ちゃんのままでいいよ」
「なっ!?」
「ドギマギしてる可愛い弟にお姉ちゃんの下着、選んで欲しいなぁ~」
おねだりする子犬のように上目遣いで囁く茜姉。だが、その瞳の奥は狩人の如く鋭い。
お弁当をご馳走になった上、フランクフルトを奪い取った手前、断る事ができない。
「俺は茜姉の弟、俺は茜姉の弟、俺は茜姉の弟……」
思い込め、珈琲屋でもできたんだ。
服屋でも。
だったら、下着屋でもできるだろ、俺!
信じるんだ、己の可能性を。
逆に考えろ、姉なら性的に興奮しない。
親族なのだから、当然だ。
できるできるやればできる絶対にできる気持ちの問題できるぞ。
姉の我儘に付き合わされる可哀想な弟を演じれば──
「あれ、おにぃ?」
「──ッ」
この親の声並みに聞き慣れた声。
俺は恐る恐る後ろを振り向いた。あぁ……。
「り、林檎ぉ……!!」
「奇遇だね、おにぃ。下着屋の前で震えて、なにやってんの?」
不思議そうに俺を見る我妹。
あまりに最悪のタイミングで、声が出ない。
そんな硬直する俺を他所に、隣に立っている茜姉が妹に話しかけた。
「アナタが真一くんの妹さん?」
「あ、はい、楠 林檎と言います! えっと……お姉さんは」
「真一くんとお付き合いさせていただいている、茜 夏希と申します、お見知り置きを」
「──ッ」
コイツ、何を言っているんだ!?
今、お付き合いさせていただいてる、とか言ったか!?
ちょっと待て、林檎が誤解するだろ。否定しな──
「えぇぇぇぇ!?!? おにぃ、こんな美人な彼女さんがいたのぉぉぉ!?!?」
あ、もう駄目だ。おしまいだ。
「美人だなんて、そんな……」
「いや、めっちゃ、うぉあぁ……すごぉーい!! えぇ……おにぃには勿体無いよぉ!! ふぁー!!」
「え、ぁ、あはは、そうですかね?」
茜姉が困惑するほどテンションの上がった彼女は、茜姉の手を握りブンブン振った。
こうなった林檎にもう何を言っても無駄。
どれだけ否定しようと、俺の言葉なんて信じてくれなくなる。
ややこしくなる悪寒がした。
「いやーもう、ちょっと、感動しました! 夏希さん、今度歌にしてきますので、聞いてもらっていいですか!?」
「へ、歌!?」
「はい、一日で仕上げてきますので、是非ッ!!」
「きょ、兄妹ね……喜んで、聞かせてもらいます」
「ヤッター! いやぁ、でも夏希さんが彼女かぁ~危うくおにぃを通報するところでしたよ!」
「通報?」
「そりゃあ下着屋を見つめながら震える男がいたら兄であろうと通報しますよ!」
「なるほど、安心して。今日は真一くんに、私の下着を選んでもらおうかと思って来たの」
「下着を、選ぶ!? はわわ、おにぃともうそんな関係に……! 歌わなきゃ」
「歌は一旦置いといて、よかったら林檎ちゃんの下着も一緒に見ない?」
「んにゃぴ!?」
「んにゃぴ!?」
駄目だコイツ、早くなんとかしないと。
妹と一緒に下着をみるなんて、ありえないだろ。いや、さっきまで仮想姉と見ようとしてたけどさぁ!?
流石の林檎もこの誘いにはドン引──
「是非、ご一緒させてください!!」
あーもうめちゃくちゃだよ。
半裸のマネキンには可愛らしいレースのついたスケスケの下着が装着されている。
中には若い女性が数人程、しかも全員が茜姉に負けないくらい巨乳だ。
「ここ、大きめのサイズが沢山置いてあって助かるんだよねぇ~。ほら、私って高校生じゃ考えられないくらいデカいでしょ?」
前屈みになり、ズィっと身体を寄せて来る。デカい、あぁ、デカい。圧巻。
決して露出の多い服ではないが、逆にそれが胸のデカさを際立たせている。
ゴクリ、心の中で生唾を飲み込み、固い意志で視線を胸から避けた。
こうすることで、やっと言葉を発せれる。
「……犯罪だろ」
「別に犯罪じゃないよ、お店に入るくらい」
「いいや、犯罪だ、捕まりたくない」
「お店には予め言ってあるから大丈夫」
「予め……!?」
「行き付けの店でさ、仲良しなんだよね」
「だったら一人で来ればいいじゃんか!?」
「駄目駄目ぇ~今日は『彼氏』に下着を選んでもらうって伝えてんの」
「──かひッ!?」
彼氏に、下着を、選んでもらう!?
そんな風習が陽キャには存在するというのか!
よく見ると、客の視線も、店員の視線も、さっきの珈琲屋で感じていたものとは別。
微笑ましいというか、見守るというか、なんだかムズムズする視線だ。
「てか、それ以前に俺は彼氏じゃない!」
「お姉ちゃんって思い込めるなら、彼女って思えない?」
「む、む、むりぃ!」
「だったらお姉ちゃんのままでいいよ」
「なっ!?」
「ドギマギしてる可愛い弟にお姉ちゃんの下着、選んで欲しいなぁ~」
おねだりする子犬のように上目遣いで囁く茜姉。だが、その瞳の奥は狩人の如く鋭い。
お弁当をご馳走になった上、フランクフルトを奪い取った手前、断る事ができない。
「俺は茜姉の弟、俺は茜姉の弟、俺は茜姉の弟……」
思い込め、珈琲屋でもできたんだ。
服屋でも。
だったら、下着屋でもできるだろ、俺!
信じるんだ、己の可能性を。
逆に考えろ、姉なら性的に興奮しない。
親族なのだから、当然だ。
できるできるやればできる絶対にできる気持ちの問題できるぞ。
姉の我儘に付き合わされる可哀想な弟を演じれば──
「あれ、おにぃ?」
「──ッ」
この親の声並みに聞き慣れた声。
俺は恐る恐る後ろを振り向いた。あぁ……。
「り、林檎ぉ……!!」
「奇遇だね、おにぃ。下着屋の前で震えて、なにやってんの?」
不思議そうに俺を見る我妹。
あまりに最悪のタイミングで、声が出ない。
そんな硬直する俺を他所に、隣に立っている茜姉が妹に話しかけた。
「アナタが真一くんの妹さん?」
「あ、はい、楠 林檎と言います! えっと……お姉さんは」
「真一くんとお付き合いさせていただいている、茜 夏希と申します、お見知り置きを」
「──ッ」
コイツ、何を言っているんだ!?
今、お付き合いさせていただいてる、とか言ったか!?
ちょっと待て、林檎が誤解するだろ。否定しな──
「えぇぇぇぇ!?!? おにぃ、こんな美人な彼女さんがいたのぉぉぉ!?!?」
あ、もう駄目だ。おしまいだ。
「美人だなんて、そんな……」
「いや、めっちゃ、うぉあぁ……すごぉーい!! えぇ……おにぃには勿体無いよぉ!! ふぁー!!」
「え、ぁ、あはは、そうですかね?」
茜姉が困惑するほどテンションの上がった彼女は、茜姉の手を握りブンブン振った。
こうなった林檎にもう何を言っても無駄。
どれだけ否定しようと、俺の言葉なんて信じてくれなくなる。
ややこしくなる悪寒がした。
「いやーもう、ちょっと、感動しました! 夏希さん、今度歌にしてきますので、聞いてもらっていいですか!?」
「へ、歌!?」
「はい、一日で仕上げてきますので、是非ッ!!」
「きょ、兄妹ね……喜んで、聞かせてもらいます」
「ヤッター! いやぁ、でも夏希さんが彼女かぁ~危うくおにぃを通報するところでしたよ!」
「通報?」
「そりゃあ下着屋を見つめながら震える男がいたら兄であろうと通報しますよ!」
「なるほど、安心して。今日は真一くんに、私の下着を選んでもらおうかと思って来たの」
「下着を、選ぶ!? はわわ、おにぃともうそんな関係に……! 歌わなきゃ」
「歌は一旦置いといて、よかったら林檎ちゃんの下着も一緒に見ない?」
「んにゃぴ!?」
「んにゃぴ!?」
駄目だコイツ、早くなんとかしないと。
妹と一緒に下着をみるなんて、ありえないだろ。いや、さっきまで仮想姉と見ようとしてたけどさぁ!?
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