上 下
5 / 5

爆誕 新宗教

しおりを挟む
 そして迎えた早朝。中々起きない聖女を叩き起こし、出発の支度をする。
 イマイチ状況が呑み込めてないメアリーだったが、自分の身体に加護が付与されていないことに気が付くとガクッと肩を落とした。

「か、加護が……わ、私……聖女じゃ……」
「おい、落ち込んでないで服着ろ、服!」
「ぅぅ……貴方のせいで……」
「そんなことより、仕事だ仕事。ほら」

 全裸の彼女に向かって修道服を投げると、渋々着替え始める。
 メソメソしやがって……まるで俺が悪いことしたみたいじゃないか。

「大体、聖女じゃなくなった私が、こんな服着ても……」
「いいか、これからメアリーは聖女のまま冒険者になってもらうからな」
「そんなの、聞いたことありませんよ」
「拒否権はない。というより、もう俺から離れることはできない筈だが?」
「うぅ、ぅ~……わかってますけど……」

 淫紋が刻まれた以上、俺に逆らうという選択肢は彼女の中から消える。だが、決して意思がなくなるわけじゃない。
 催眠とはまた違い、完全にコントロールすることはできないのだ。

「あんまりぐずぐず言ってると、暫くはお預けだぞ。メアリー」
「──ッ! べ、別に、私はもう一回犯して欲しい……むしろ、もっと長い時間一日中エッチしたいなんて、微塵も思ってませんけど……今すぐ準備します!!」
「……はいはい」

 ピシっと敬礼し、いそいそと服を着るメアリー。少し淫紋が弱かったか? 人間の体で魔族魔法はまだ慣れてないから、変な風に掛かってる気がする。
 けど、まぁ、このくらいでちょうどいいかもしれないな。

「着ました! ハリボテシスター、メアリーです!」
「いよし、んじゃ早速向かうぞ」
「どこへ行くのですか? 依頼を受けても、私ではあまり力になれませんよ」
「いや、お前には大事な役割がある。着いてこい」
「んん? ぁ、待って下さいよーリル様ァー」

 聖女メアリーを一番最初に堕としたかった理由を果たすために俺はある場所へと足を運んだ。

 ♢♢♢

「はい、はい、リル君の面倒は私が見させて頂きますので……いえ、安心してください。これでも、一人で教会を運営できるくらいの力は」

 ペコペコと頭を下げるメアリーの前には、母さんが座っている。ここは我が家の食卓だ。

「ご迷惑じゃないかしら……この子、おっちょこちょいだから……」
「いえ、魔法の才もあり、冒険者としての素質は充分かと」
「そう? シスターさんに言ってもらえると、安心だわ」
「ですが、これから冒険者として経験を積むために、暫く家を開けることもあるかと思いますが、私がついてますので」
「お願いしますね、シスター」
「はい、お任せ下さい、お母様」
「アンタもちゃんと、シスターさんの言う事聞くんだよ?」
「うん、大丈夫だよ母さん」

 そう言った会話を済ませた後、三人で昼食を取り、俺たちは母さんに見送られながら家を後にした。

「……ふぅ、これで大丈夫そう、だな……」

 シスターって職業は、普通の人からみたら偉大な仕事だ。そんな彼女に任せるなら、母さんも安心できるだろう。

「ようやく、単独で遠出ができるようになったって訳だ」 

 一仕事終え額の汗を拭いながらギルドに向かって歩いているとメアリーが話しかけてくる。

「まさか眷属になって最初の仕事が『お母様を安心させること』だとは思いませんでしたよ」
「仕方ねーだろ。あー見えて、結構心配症なんだよ、母さんは」
「……魔族、ですよね?」
「そうだけど、育ててくれた恩を捨てるほど落ちぶれちゃいないさ」
「ぐぬぬ、なんだか魔族の印象が変わりそうです」
「今は人間だからな。郷に入っては郷に従え、だ」
「え、人間? 魔族? ええ?」

 頭を傾げ悩むメアリー。コイツは第一号の眷属だし、ちゃんと説明しとくべきなのかもしれないな。

「とりあえず、ギルドに着いたら説明する。今後、どう動くかも話しておきたいしな」
「わかりました!」
「……」

 存外と素直過ぎる彼女に、少し違和感を抱きながらも歩き続けギルドに到着。
 扉を開けると、中には沢山の冒険者達で溢れかえっていた。
 サーニャも忙しそうに駆け回っていて、俺たちに構っている隙なんて無さそうだ。ラッキー。

「すごぉい! ここがギルドですかぁ……うわぁ、皆さん強そうですね」
「あれ? メアリー、来るのは初めてなのか?」
「聖女は基本、規律により教会から出ることは許されませんからね」
「ふ~ん、それは知らなかったな……」
「加護を受ける為には、相応の規律を守り続けないといけないのですよ」
「俺が破っちゃったから、もう関係ないけどな」
「ハリボテシスターですからね!」

 なるほど、彼女が素直な理由に、少しだけ合点がいった。見る物、触る物、全てが新しいのか。

「えっと……彼処のテーブルが空いてるな」

 筋肉隆々の冒険者達を押し除け、空いてる席に二人で座り俺は彼女に今までの経緯を説明した。
 それを聞いたメアリーは「むぅー」と少し呻る。

「つまり、リル様は魔王を倒すために人間になった……?」
「そう言っているだろう。これ以上、何が疑問なんだ」
「いや、それなら……実質、人間の味方ってこと、ですよね?」
「ん? ……ん~そう、じゃない」

 魔王を倒すのは人間の夢、ではあるだろう。けど、その後が違う。
 人間が求めるのは平和な世界、俺が求めるのは次期魔王の座。味方ってわけじゃない。

「善悪で言えば、善。いい魔族ってことですか?」
「レイプされた相手に、よくそんな台詞吐けるな……善悪なんて、考えたこともないぞ」
「元聖女にとって、結構大事なことですよ! 行いが正しいのか、正しくないのか、は」
「まぁ、お前が正義だと思いたいならそれでいいが……俺たちがこれからやることは一つだぞ?」
「修行、ですか?」
「そんなまわりくどい事するくらいなら、強い奴を堕として淫紋刻んだ方がはえー」
「ということは……?」
「そう、お前と同じように色んな女を犯して──」
「布教活動ですね!!!!」
「……は?」

 食い気味に叫ぶメアリーは、続けて言った。

「あんな気持ちいいこと、私だけが頂いては罪! 世界中の皆に、この快感を、解放感を広めなくてはなりませんものね!!」
「……おぃ」
「わかりました! やはり、貴方は正義……いや、我が教祖様です! 信者を増やしましょう、リル教の誕生です!」
「……」

 ふんすと鼻を鳴らし、はりきっているメアリーを横目に、俺は思わず溜息を吐いた。
 何か間違っている気がするが……まぁ、やる気になってくれるなら問題ないか?

「私たちでどんどん信者を増やして、いっぱい気持ちいい事して、魔王を倒しましょうね! リル様!」
「ぉ、おう……」

 引き気味の俺を無視して、彼女は一人「おー!」と拳を突き上げる。
 眷属にしてから、シスターははっちゃけてしまった。
 もしかしたら俺は、一番最初の眷属を間違えてしまったのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

二度目の勇者の美醜逆転世界ハーレムルート

猫丸
恋愛
全人類の悲願である魔王討伐を果たした地球の勇者。 彼を待っていたのは富でも名誉でもなく、ただ使い捨てられたという現実と別の次元への強制転移だった。 地球でもなく、勇者として召喚された世界でもない世界。 そこは美醜の価値観が逆転した歪な世界だった。 そうして少年と少女は出会い―――物語は始まる。 他のサイトでも投稿しているものに手を加えたものになります。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

母娘丼W

Zu-Y
恋愛
 外資系木工メーカー、ドライアド・ジャパンに新入社員として入社した新卒の俺、ジョージは、入居した社宅の両隣に挨拶に行き、運命的な出会いを果たす。  左隣りには、金髪碧眼のジェニファーさんとアリスちゃん母娘、右隣には銀髪紅眼のニコルさんとプリシラちゃん母娘が住んでいた。  社宅ではぼさぼさ頭にすっぴんのスウェット姿で、休日は寝だめの日と豪語する残念ママのジェニファーさんとニコルさんは、会社ではスタイリッシュにびしっと決めてきびきび仕事をこなす会社の二枚看板エースだったのだ。  残業続きのママを支える健気で素直な天使のアリスちゃんとプリシラちゃんとの、ほのぼのとした交流から始まって、両母娘との親密度は鰻登りにどんどんと増して行く。  休日は残念ママ、平日は会社の二枚看板エースのジェニファーさんとニコルさんを秘かに狙いつつも、しっかり者の娘たちアリスちゃんとプリシラちゃんに懐かれ、慕われて、ついにはフィアンセ認定されてしまう。こんな楽しく充実した日々を過していた。  しかし子供はあっという間に育つもの。ママたちを狙っていたはずなのに、JS、JC、JKと、日々成長しながら、急激に子供から女性へと変貌して行く天使たちにも、いつしか心は奪われていた。  両母娘といい関係を築いていた日常を乱す奴らも現れる。  大学卒業直前に、俺よりハイスペックな男を見付けたと言って、あっさりと俺を振って去って行った元カノや、ママたちとの復縁を狙っている天使たちの父親が、ウザ絡みをして来て、日々の平穏な生活をかき乱す始末。  ママたちのどちらかを口説き落とすのか?天使たちのどちらかとくっつくのか?まさか、まさかの元カノと元サヤ…いやいや、それだけは絶対にないな。

【R18】異世界なら彼女の母親とラブラブでもいいよね!

SoftCareer
ファンタジー
幼なじみの彼女の母親と二人っきりで、期せずして異世界に飛ばされてしまった主人公が、 帰還の方法を模索しながら、その母親や異世界の人達との絆を深めていくというストーリーです。 性的描写のガイドラインに抵触してカクヨムから、R-18のミッドナイトノベルズに引っ越して、 お陰様で好評をいただきましたので、こちらにもお世話になれればとやって参りました。 (こちらとミッドナイトノベルズでの同時掲載です)

処理中です...