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♢♢♢
──あの日から、18年の月日が流れた。
「リルー! ご飯できたわよー!」
一階から母の声が聞こえ、俺は慌てて返事をした。
「今行くー!」
5分でも待たせると発狂する母を持つ子は大変だ。急いで着替えを済まし、階段を駆け降りるとテーブルの上には朝食が準備されていた。
「今日は適正検査の日でしょ? のんびりしてると、遅刻するわよ?」
「もう子供じゃないんだから分かってるって。母さん」
椅子に座り、人間の母と共に合掌をした後、目玉焼きと食パンにありついた。
最初はなれなかった人間の飯も、流石に十年も経てば慣れるもので。
今では母の朝食は、俺に欠かせない物になっていた。
「ふふ、そんなに慌てなくても、ご飯は逃げないわよ」
「のんびりするなって言ったのは母さんでしょ? ぅ──げほげほッ!」
「ほらほら、全く……こんな調子で冒険者に慣れるのかしらね……心配だわ」
「はぁ、はぁ……大丈夫だよ。これでもスクールでは、ちゃんと適正以上の実績は残してるし」
人間の世界では18歳になると進路を決定しなければならない。
母は俺が「薬草採取」や「魔族討伐」等の様々な依頼を受け生計を建てる冒険者になるたいと6歳の時に伝えると、冒険者学校の予算を捻出してくれた。
女一人で一生懸命働き、学校代を稼いでくれた。
「……それに、冒険者になればお金も沢山稼げるから、もうお母さんに無理はさせないよ」
「この子は……ふふ、本当は、私が思っている以上に大人になっているのかもね」
目に涙を浮かべ拭う人間の母。
俺に利用されているとは知らずに、馬鹿な女だ。
だが、何不自由なく育ててくれたお前は、生涯面倒をみてやろう。
魔王になるのだから、それくらいは当然だ。クククッ……。
「じゃあそろそろ行ってくるね!」
「口に食べかすがついてるわよ。そそっかしいところはお父さんソックリね」
「んッ……ありがと……いってきます」
「いってらっしゃい。気を付けて」
母に口元を拭ってもらい、バックパックを背負うと俺は冒険者になる為の最終試練「適正検査」に向かった。
まぁ、試練と言っても俺にとってはなんて事ない。
これは18歳になった時に、魔法が使えるかチェックする検査だ。
冒険者は基本、魔族を相手にすることもある為、魔法は必要不可欠。
故に、魔力がない者は冒険者になれないのだ。
会場に到着すると名前を呼ばれ、小さな魔法石に手をかざす。
すると、魔法石は輝き、その光の強さによって魔力の器量を測るのだ。
俺の魔力は……至って普通。人間の物差しでこれなんだから、魔族だったら下の中くらいだろう。
「では、リル君、これが認定証です。後はギルドに登録を済ませて下さい」
「ありがとうございます!」
係の雌にお礼を言ってから、次はギルドへと足を運ぶ。
渡された認定書を見ると、そこには「ランクC-」と書かれていた。
このランクに応じて、受けれる依頼が絞られ、依頼をこなせばこなすだけランクが上がっていく。
最初から危険な討伐依頼等は受けれないようになっているのだ。
「あら、リル! いらっしゃい」
「サーニャさん、こんにちわ」
ギルドの扉を開けると、元気な茶毛の雌が俺に声を掛けてきた。
彼女の名前はサーニャ・サバーニャ。このギルドの受付嬢をしている。
ここには人間がどんな依頼をするのか把握する為、何度も足を運んでいたから顔見知りになった。
「今日はどうしたの?」
「これで冒険者登録したいんですけど」
「あ、そっか! 今日は適正検査の日かぁ~遂に念願の冒険者になる日が来たんだねぇ……お姉さん感動しちゃう」
「大袈裟ですよ、大袈裟」
「んじゃ、ちゃちゃっと手続きを終わらせちゃうからねぇ~」
俺から認定書を受け取ると、テーブルに置きスラスラと書類を書き込んでいくサーニャ。
胸と比例した小さな尻が、ご機嫌なのかフリフリと揺れる。
「いょーし! 出来たよ、後はこれをー上げちゃいます!」
「ランクブレスレットですね。ありがとうございます」
渡されたブレスレットには俺の名前とランクが刻まれていた。これで、今日から冒険者……つまり、自由の身だ。
「嬉しそーな顔しちゃってぇ~」
「18年待ちましたからね、この時を」
「18年……?」
「ぅ、産まれながらの冒険者って意味ですよ!」
「流石リルだね! ところで、パーティーは組まないの?」
冒険者は基本、一人では行動しない。
難しい依頼になればなるほど、人数は多くなる。
その中で、固定の仲間達のことをパーティーと呼ぶのだ。
本当は駆け出しの冒険者は、力を合わせて一つの依頼に取組むべきだが……。
「とりあえずは、一人でいいですかね」
「友達いないもんね」
「違います。馴れ合いが嫌いなだけです」
「またまたぁー強がっちゃってぇ! このこのぉ!」
「──ッ……」
頬っぺたをツンツンしてくるサーニャに苛立ちを覚える。
コイツ……絶対いつか眷属にして、淫紋を刻んでやるからな。でも、今じゃない。
「それで? 今日は初依頼でも受けてきますか?」
「いえ、お仕事は明日からにしようかと思ってます」
「え、そうなんだ」
「僕にもパーティーの当てがあるので、まずは声を掛けてみようかと思います」
「それがいいね、どんな依頼でも一人は危険だから。頑張ってね!」
受付嬢の激励を背に、次に向かったのは「絶対にこいつだけは、一番最初に淫紋を刻む」と誓っていた女のいる場所だ。
少し街から離れた場所にある教会。ちょうど彼女は外で水撒きをしている所だった。
「こんにちわ、シスター」
「あら、リルさん。こんにちわ」
修道服に身を包み、太陽の如く明るい笑顔を向ける女性。シスター、メアリー・マトリアル。
「いつものお祈りですか?」
「いえ、今日はシスターから御加護を頂きたくて」
「私から?」
「はい。今さっき、冒険者登録を済ませてきました。ですので──」
「まぁ! 素晴らしいですね、おめでとうございます!」
ぴょんっと可愛らしく跳ねながら両手を握ってくるシスター。
チラリと見える金髪と、隠しきれない爆乳が劣情を煽った。
「加護ですね、丁度よかった! 今宵は満月、最も神の力が働く時です。早速準備致しましょう」
そういうと、彼女はいそいそと教会の中へと入っていった。
殆どの冒険者はまず最初に、聖女から加護を受け仕事を始める。
神頼み……というか、風習みたいなもので、気休めにしか過ぎない無駄な行為だ。が、俺にとっては好都合だった。
満月の夜、それは神だけじゃなく魔族の術式が最も循環に周る日。
まだ、淫魔の力全てを取り戻したわけじゃないが……やるなら今日。加護を受ける為に二人っきりになる夜。
あの何も知らなそうな生娘に、快楽を教えてやる。
「どんな顔を見せてくれるか、楽しみだよ。シスター」
溢れ出る笑みを抑えきれず、自然と口角が上がる。
俺は、今宵の宴を妄想しながらシスターの後ろへと続いた。
──あの日から、18年の月日が流れた。
「リルー! ご飯できたわよー!」
一階から母の声が聞こえ、俺は慌てて返事をした。
「今行くー!」
5分でも待たせると発狂する母を持つ子は大変だ。急いで着替えを済まし、階段を駆け降りるとテーブルの上には朝食が準備されていた。
「今日は適正検査の日でしょ? のんびりしてると、遅刻するわよ?」
「もう子供じゃないんだから分かってるって。母さん」
椅子に座り、人間の母と共に合掌をした後、目玉焼きと食パンにありついた。
最初はなれなかった人間の飯も、流石に十年も経てば慣れるもので。
今では母の朝食は、俺に欠かせない物になっていた。
「ふふ、そんなに慌てなくても、ご飯は逃げないわよ」
「のんびりするなって言ったのは母さんでしょ? ぅ──げほげほッ!」
「ほらほら、全く……こんな調子で冒険者に慣れるのかしらね……心配だわ」
「はぁ、はぁ……大丈夫だよ。これでもスクールでは、ちゃんと適正以上の実績は残してるし」
人間の世界では18歳になると進路を決定しなければならない。
母は俺が「薬草採取」や「魔族討伐」等の様々な依頼を受け生計を建てる冒険者になるたいと6歳の時に伝えると、冒険者学校の予算を捻出してくれた。
女一人で一生懸命働き、学校代を稼いでくれた。
「……それに、冒険者になればお金も沢山稼げるから、もうお母さんに無理はさせないよ」
「この子は……ふふ、本当は、私が思っている以上に大人になっているのかもね」
目に涙を浮かべ拭う人間の母。
俺に利用されているとは知らずに、馬鹿な女だ。
だが、何不自由なく育ててくれたお前は、生涯面倒をみてやろう。
魔王になるのだから、それくらいは当然だ。クククッ……。
「じゃあそろそろ行ってくるね!」
「口に食べかすがついてるわよ。そそっかしいところはお父さんソックリね」
「んッ……ありがと……いってきます」
「いってらっしゃい。気を付けて」
母に口元を拭ってもらい、バックパックを背負うと俺は冒険者になる為の最終試練「適正検査」に向かった。
まぁ、試練と言っても俺にとってはなんて事ない。
これは18歳になった時に、魔法が使えるかチェックする検査だ。
冒険者は基本、魔族を相手にすることもある為、魔法は必要不可欠。
故に、魔力がない者は冒険者になれないのだ。
会場に到着すると名前を呼ばれ、小さな魔法石に手をかざす。
すると、魔法石は輝き、その光の強さによって魔力の器量を測るのだ。
俺の魔力は……至って普通。人間の物差しでこれなんだから、魔族だったら下の中くらいだろう。
「では、リル君、これが認定証です。後はギルドに登録を済ませて下さい」
「ありがとうございます!」
係の雌にお礼を言ってから、次はギルドへと足を運ぶ。
渡された認定書を見ると、そこには「ランクC-」と書かれていた。
このランクに応じて、受けれる依頼が絞られ、依頼をこなせばこなすだけランクが上がっていく。
最初から危険な討伐依頼等は受けれないようになっているのだ。
「あら、リル! いらっしゃい」
「サーニャさん、こんにちわ」
ギルドの扉を開けると、元気な茶毛の雌が俺に声を掛けてきた。
彼女の名前はサーニャ・サバーニャ。このギルドの受付嬢をしている。
ここには人間がどんな依頼をするのか把握する為、何度も足を運んでいたから顔見知りになった。
「今日はどうしたの?」
「これで冒険者登録したいんですけど」
「あ、そっか! 今日は適正検査の日かぁ~遂に念願の冒険者になる日が来たんだねぇ……お姉さん感動しちゃう」
「大袈裟ですよ、大袈裟」
「んじゃ、ちゃちゃっと手続きを終わらせちゃうからねぇ~」
俺から認定書を受け取ると、テーブルに置きスラスラと書類を書き込んでいくサーニャ。
胸と比例した小さな尻が、ご機嫌なのかフリフリと揺れる。
「いょーし! 出来たよ、後はこれをー上げちゃいます!」
「ランクブレスレットですね。ありがとうございます」
渡されたブレスレットには俺の名前とランクが刻まれていた。これで、今日から冒険者……つまり、自由の身だ。
「嬉しそーな顔しちゃってぇ~」
「18年待ちましたからね、この時を」
「18年……?」
「ぅ、産まれながらの冒険者って意味ですよ!」
「流石リルだね! ところで、パーティーは組まないの?」
冒険者は基本、一人では行動しない。
難しい依頼になればなるほど、人数は多くなる。
その中で、固定の仲間達のことをパーティーと呼ぶのだ。
本当は駆け出しの冒険者は、力を合わせて一つの依頼に取組むべきだが……。
「とりあえずは、一人でいいですかね」
「友達いないもんね」
「違います。馴れ合いが嫌いなだけです」
「またまたぁー強がっちゃってぇ! このこのぉ!」
「──ッ……」
頬っぺたをツンツンしてくるサーニャに苛立ちを覚える。
コイツ……絶対いつか眷属にして、淫紋を刻んでやるからな。でも、今じゃない。
「それで? 今日は初依頼でも受けてきますか?」
「いえ、お仕事は明日からにしようかと思ってます」
「え、そうなんだ」
「僕にもパーティーの当てがあるので、まずは声を掛けてみようかと思います」
「それがいいね、どんな依頼でも一人は危険だから。頑張ってね!」
受付嬢の激励を背に、次に向かったのは「絶対にこいつだけは、一番最初に淫紋を刻む」と誓っていた女のいる場所だ。
少し街から離れた場所にある教会。ちょうど彼女は外で水撒きをしている所だった。
「こんにちわ、シスター」
「あら、リルさん。こんにちわ」
修道服に身を包み、太陽の如く明るい笑顔を向ける女性。シスター、メアリー・マトリアル。
「いつものお祈りですか?」
「いえ、今日はシスターから御加護を頂きたくて」
「私から?」
「はい。今さっき、冒険者登録を済ませてきました。ですので──」
「まぁ! 素晴らしいですね、おめでとうございます!」
ぴょんっと可愛らしく跳ねながら両手を握ってくるシスター。
チラリと見える金髪と、隠しきれない爆乳が劣情を煽った。
「加護ですね、丁度よかった! 今宵は満月、最も神の力が働く時です。早速準備致しましょう」
そういうと、彼女はいそいそと教会の中へと入っていった。
殆どの冒険者はまず最初に、聖女から加護を受け仕事を始める。
神頼み……というか、風習みたいなもので、気休めにしか過ぎない無駄な行為だ。が、俺にとっては好都合だった。
満月の夜、それは神だけじゃなく魔族の術式が最も循環に周る日。
まだ、淫魔の力全てを取り戻したわけじゃないが……やるなら今日。加護を受ける為に二人っきりになる夜。
あの何も知らなそうな生娘に、快楽を教えてやる。
「どんな顔を見せてくれるか、楽しみだよ。シスター」
溢れ出る笑みを抑えきれず、自然と口角が上がる。
俺は、今宵の宴を妄想しながらシスターの後ろへと続いた。
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