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淫夢応用
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☆☆☆
作戦会議の後、俺はライの組み立てた完璧な作戦に一つだけ口出しをしていた。
それは「最後は俺がアルフレドに引導を渡したい」というもの。
彼女は「それは無理です」と即答。
戦闘能力の無い俺を前線に出し、更には決定打とする。
無理難題であることは、素人でも分かるだろう。
でも、どうしても俺の手で終わらせたかったのだ。
一歩も引かない俺、頭を悩ませるライ。
今まで前線に立ったことのない俺に決定打を与える。
しかも、修行している時間など全くない。
短時間で、勇者に致命傷を与える一撃を手に入れることなんて誰もが不可能だと思った。
だが、以外にもカットルの言葉により、打開策が生まれることとなる。
「そういえば、ケイオスの魔力、変じゃない?」
カットルは剣術の達人、接近戦のプロフェッショナルである。
筋肉の動きから体内魔力の流れを判断し、次手を読む力に長けていた。
似たような戦闘スタイルのレックも、カットルの言葉に同意する。
「確かにそうだ。ケイオス、どうしてお前はこの短時間で莫大な魔力を手にいれたんだ?」
「俺に莫大な魔力? 身に覚えが全くない──いや、あるか……」
レック、カットル戦以降、聞こえるようになった心の声。
あれが俺に囁きかける度に、未知の力が溢れてくるのだ。
ライと出会う少し前、カタリナとカーラが作ってくれた手料理。
あれを食べた時、気が付いた。
俺の体は魔族に近づいてきていると。
煩わしい声が聞こえるだけかと思っていたが、まさかこんなメリットがあったとは。
「でも魔力があったところで、俺には使う技術がない」
「私に任せろ、体内魔力の使い方なら指導することができる」
体内魔力を操作することにより、人外の腕力を発揮することのできるレック。
彼女の技術を教えてもらえることができれば、謎の魔力も有効活用することができる。
そうして俺も同じようにスキル「破壊拳」を使えば決定打の問題は解決。
簡単に聞こえるが、実際レックの破壊拳は類まれなる才能と血の滲む努力により構築されたもの。
昨日今日の修行で習得できるような力ではない。
でも、今の俺には『完全解明』と『能力解剖』、二つのスキルが備わっている。
「スキルを使えば、破壊拳の習得も可能かもしれない」
「ケイオス、お前のスキルだとどこまで見えるんだ?」
「魔術の術式が見える。つまりレックのスキルも──」
「ああ、全然ダメだ。ダメダメ」
「ダメ? この力で淫夢だって即座に習得できたんだぞ?」
「術式の通りに実行すれば発動するような能力じゃないんだよ」
「というと……?」
「これはもっと、感覚的なスキルってことだ」
カーラの魔法やメメの淫夢のように、術式を理解しただけでは習得は無理ということか。
確かにレックを見ても、魔力の動きが見えるだけ。
それをどこかに集中させる、なんて技を俺は持ち合わせてはいない。
「ただ、術式が見えるというのは圧倒的アドバンテージだ」
「どのくらいで習得できると思う?」
「……付け焼刃、たった一撃を習得するだけでも一日二日じゃ到底無理だ」
「時間が必要ってことか。だが……」
「あぁ、時間を空けるとアルフレドが対策してくる。どうしたものか……」
また考える時間が続く。
でも絶対に無理だと思っている壁に、亀裂が入った。
不可能という思考が崩れ去るのは時間の問題だ。
「あ、あの~ケイオスさん、ちょっといいですか?」
「ん、カタリナ、何か案があるのか?」
「淫夢の中であれば、短時間でも体感時間を長くすることができるのではないでしょうか?」
「──えッ!? ……あ!!」
カタリナの言葉に、ライ以外の皆がハッとした。
俺が追放されてから、今までの日数を合計すると14日。
短期間にも関わらず、目的を共にし家族のように関係を再構築できたのは淫夢のお陰だ。
「僕はたった数日で裏切って心変わりするなんてって思ってたけど……」
「カタリナとカーラにとってはもっと長い時間だったってことか……」
レックとカットルも、絶頂禁止無間地獄を味わっている。
でも、目が覚めた時に経過していた時間はたった数時間。
淫夢がどれだけ体感時間を伸ばせるか、その身体で経験しているのだ。
カーラも納得したように頷く。
「私達の作戦が順当に成功したのも、関係日数のギャップがあったからかもしれないわね」
「レック、さっき破壊拳は感覚的って言ったよな? なら」
「淫夢の中で練習しても、感覚が現実に残るなら……付け焼刃ではあるが、できるかもしれない!」
不揃いな欠片が重なり、一つになっていく感覚。
こうして俺達は、淫夢の中で体感時間で半年、みっちりと修行した。
メメに淫夢を維持してもらい、レックに体内魔力の動かし方を、カットルに体術の基礎を。
カーラには魔力の制御方法を、ライとは更に作戦を煮詰め、カタリナからは癒しを。
アルフレドを倒す、その目的に向かって皆で進んだのだ。
作戦会議の後、俺はライの組み立てた完璧な作戦に一つだけ口出しをしていた。
それは「最後は俺がアルフレドに引導を渡したい」というもの。
彼女は「それは無理です」と即答。
戦闘能力の無い俺を前線に出し、更には決定打とする。
無理難題であることは、素人でも分かるだろう。
でも、どうしても俺の手で終わらせたかったのだ。
一歩も引かない俺、頭を悩ませるライ。
今まで前線に立ったことのない俺に決定打を与える。
しかも、修行している時間など全くない。
短時間で、勇者に致命傷を与える一撃を手に入れることなんて誰もが不可能だと思った。
だが、以外にもカットルの言葉により、打開策が生まれることとなる。
「そういえば、ケイオスの魔力、変じゃない?」
カットルは剣術の達人、接近戦のプロフェッショナルである。
筋肉の動きから体内魔力の流れを判断し、次手を読む力に長けていた。
似たような戦闘スタイルのレックも、カットルの言葉に同意する。
「確かにそうだ。ケイオス、どうしてお前はこの短時間で莫大な魔力を手にいれたんだ?」
「俺に莫大な魔力? 身に覚えが全くない──いや、あるか……」
レック、カットル戦以降、聞こえるようになった心の声。
あれが俺に囁きかける度に、未知の力が溢れてくるのだ。
ライと出会う少し前、カタリナとカーラが作ってくれた手料理。
あれを食べた時、気が付いた。
俺の体は魔族に近づいてきていると。
煩わしい声が聞こえるだけかと思っていたが、まさかこんなメリットがあったとは。
「でも魔力があったところで、俺には使う技術がない」
「私に任せろ、体内魔力の使い方なら指導することができる」
体内魔力を操作することにより、人外の腕力を発揮することのできるレック。
彼女の技術を教えてもらえることができれば、謎の魔力も有効活用することができる。
そうして俺も同じようにスキル「破壊拳」を使えば決定打の問題は解決。
簡単に聞こえるが、実際レックの破壊拳は類まれなる才能と血の滲む努力により構築されたもの。
昨日今日の修行で習得できるような力ではない。
でも、今の俺には『完全解明』と『能力解剖』、二つのスキルが備わっている。
「スキルを使えば、破壊拳の習得も可能かもしれない」
「ケイオス、お前のスキルだとどこまで見えるんだ?」
「魔術の術式が見える。つまりレックのスキルも──」
「ああ、全然ダメだ。ダメダメ」
「ダメ? この力で淫夢だって即座に習得できたんだぞ?」
「術式の通りに実行すれば発動するような能力じゃないんだよ」
「というと……?」
「これはもっと、感覚的なスキルってことだ」
カーラの魔法やメメの淫夢のように、術式を理解しただけでは習得は無理ということか。
確かにレックを見ても、魔力の動きが見えるだけ。
それをどこかに集中させる、なんて技を俺は持ち合わせてはいない。
「ただ、術式が見えるというのは圧倒的アドバンテージだ」
「どのくらいで習得できると思う?」
「……付け焼刃、たった一撃を習得するだけでも一日二日じゃ到底無理だ」
「時間が必要ってことか。だが……」
「あぁ、時間を空けるとアルフレドが対策してくる。どうしたものか……」
また考える時間が続く。
でも絶対に無理だと思っている壁に、亀裂が入った。
不可能という思考が崩れ去るのは時間の問題だ。
「あ、あの~ケイオスさん、ちょっといいですか?」
「ん、カタリナ、何か案があるのか?」
「淫夢の中であれば、短時間でも体感時間を長くすることができるのではないでしょうか?」
「──えッ!? ……あ!!」
カタリナの言葉に、ライ以外の皆がハッとした。
俺が追放されてから、今までの日数を合計すると14日。
短期間にも関わらず、目的を共にし家族のように関係を再構築できたのは淫夢のお陰だ。
「僕はたった数日で裏切って心変わりするなんてって思ってたけど……」
「カタリナとカーラにとってはもっと長い時間だったってことか……」
レックとカットルも、絶頂禁止無間地獄を味わっている。
でも、目が覚めた時に経過していた時間はたった数時間。
淫夢がどれだけ体感時間を伸ばせるか、その身体で経験しているのだ。
カーラも納得したように頷く。
「私達の作戦が順当に成功したのも、関係日数のギャップがあったからかもしれないわね」
「レック、さっき破壊拳は感覚的って言ったよな? なら」
「淫夢の中で練習しても、感覚が現実に残るなら……付け焼刃ではあるが、できるかもしれない!」
不揃いな欠片が重なり、一つになっていく感覚。
こうして俺達は、淫夢の中で体感時間で半年、みっちりと修行した。
メメに淫夢を維持してもらい、レックに体内魔力の動かし方を、カットルに体術の基礎を。
カーラには魔力の制御方法を、ライとは更に作戦を煮詰め、カタリナからは癒しを。
アルフレドを倒す、その目的に向かって皆で進んだのだ。
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