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賢者変貌
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上手くいけば今、このタイミングでライを堕とせるかもしれない。
淫魔の力は人間に対して絶大な効果を発揮する。
勿論、対策することは可能だがメメの存在を知らないとなると俺が淫魔の力を使えることも知らない筈。
リスクが高いか? しかし、ここで動かなければ……どうする。
「まだ何か作戦を考えているのですね、貴方は」
「……そうだ、お前の言う通り紛れもない好機だからな」
「隠すつもりはないと」
「そっちこそ、そろそろ目的を言っても良い頃だろう?」
「私は質問しに来ただけ、でも……これからの予定くらいは伝えておきましょうか」
「俺をどうやって殺すか教えてくれるのか」
「あ、あははは、あははッ」
俺の言葉に彼女のは不自然に笑う。
表情は見えないが、こんな笑い方今まで聞いたことがない。
まるで悪魔のように邪悪で、含みのある。
背中から伝わる雰囲気は冷たく、そして鋭い。
「貴方を殺す方法なんて、簡単過ぎて教えるまでもないですよ」
「どういう意味だ」
「私が考えているのはそれから。だって、あの4人を勇者様の下に戻すわけにはいかないでしょう?」
「……アイツらをどうする気だ」
「そうですね。皆、いい身体をしているでしょう?」
「お前、まさか……」
「賢者会って知っているでしょう?」
「あぁ、当然だ。賢者達の叡智を集めたギルド直下の団体だろう」
俺達が集めた情報というのは全てそこに報告する義務がある。
そうすることで様々なパーティー間で魔族の情報を共有し攻略を容易するのだ。
実際に知っているのはここまで。
賢者会自体の詳細を知っているのは、各パーティーに配属された賢者だけ。
……けれど、悪い噂は聞いたことがある。
今や賢者会はギルドのお偉いさん方の天下り先。
本物の勇者がいなくなって移行、腐敗の一途を辿っているとか。
「彼処の大賢者の人達、とっても意地悪なのですよ。本当に欲しい情報は隠してしまう」
「……だから?」
「少し賄賂を差し出せば、気に入ってただけるかと思いまして」
「お前、自分の仲間を売るつもりか!」
「カタリナは若い人に人気が出るでしょう? レックとカットルはマニアなお爺様達に、カーラは……一番の中古商品ですし、特殊なプレイでも受けてもらいますか」
「テメェッ!!」
「おっとっと、あっとっと」
仲間を仲間と思わない言動に怒りが吹き上がり、立ち上がった。
同時にライも立ち上がり、ピタリと背中を合わせる。
何が何でも俺にステータスを見せないつもりだ。
「自分の仲間をなんだと思ってんだ!」
「言えた立場じゃないでしょう? ケイオスだって駒にしているじゃないですか」
「違う! 俺は……ぐッ、違う!!」
「あ~でも、そうだそうだ、よく考えれば貴方を逃がして上げても面白いかも」
「引き渡せと言うのか、あの4人を」
「自己保身に走り生きがいを失った男の末路、面白そうですよね?」
コイツ、コイツ、コイツ!!
自分の利益と暇つぶしの為に、仲間を売るって言うのか。
駄目だ、絶対に俺が負けるわけにはいかない。
再確認させられた、退路はない、戻れば全員が不幸になる。
……いや、もう一つ選択肢はある。
カーラの言う通り、逃げるのだ。
道のりは険しいだろうが、それは今も同じこと。
落ち着け、怒りは判断力を鈍らせる。
選択肢を増やし最善策を探せ、今までやってきたように──
「あッ、でも特別にカーラだけは上げましょう。あんな奴隷育ちの売女、汚いし、やっぱりい~らない」
「──ッ!! この、クズが!!」
その言葉が一気に血を沸騰させる。
許せない、俺のカーラをそんな風に言うなんて。
俺は背中を付けたまま、ライの腕を握りしめる。
同時に、淫魔の術式を発動した。
レック&カットル戦の途中、新しく手に入れた力『能力解剖《スキルライティング》』。
ステータスをチェックすると同時に、どのような術式で能力が発動するか見えるようになった。
自身で可能な範囲であれば、同じように発動させることができる。
今、俺に備わっているのは『淫夢』『淫紋』。メメの能力だ。
「お前をここで堕とす! 覚悟しろ!」
「堕とす? いきなり腕を掴んで口説くつもりでしょうか?」
「今に分かるさ」
淫夢を発動させればこっちの物だ。
流石のライも夢の中では俺に服従せざるを得ない。
それからゆっくりとステータスを確認し、攻略していけばいい。
さぁ、堕ちろ、夢の中へ……淫夢へ。
「……ッ、何故だ……」
発動、しない!? 夢の世界へ行くことができない。
違う、発動はしていると思う。感覚で分かる。
けれど、この女を淫夢の中へ引っ張っていくことができないのだ。
どういうことだ、メメの事は知らないはず。
俺が淫魔の力を使って仲間に引き入れていることも。
対策されている可能性は低いのに、どうして。
「へぇ、ケイオスは新しい力を使えるようになったのですね。これは淫魔ですか」
「どうして……どうして効かないッ!」
「さぁ、何故でしょうね。貴方こそ、どうして淫魔の術を?」
「それは……」
不味い、こちらの手の内がバレてしまった。
ライの反応を見るに……いや、分からない。
飄々としていて掴むことができない。
これが誘いか本音か、クソ、冷静になれ、まだ終わりじゃない。
「こちらも秘密だ、殺されたって答えるつもりはない」
「ふ、あはッ、ええ~ケイオス……貴方は本当に、私の想像を凌駕してくれますね」
ん? どういうことだ、ライの雰囲気がまた変わった?
無邪気な子どものような声色で語り掛けてくる。
「まさかこんな風に育ってくれるとは、驚きです」
「自分のお陰みてーな言い方はやめろ」
「正直、今の私は勇者様よりも貴方に興味があります」
「……だからどうした、仲間にでもなりたくなったか?」
「けど、素直に従うつもりはありません、テストしましょう」
「テスト……ぐッ!?」
会話に気を取られているとライは反対の腕を掴んできた。
腕から熱が染み渡り、直ぐに元の感覚が戻ってくる。
痛みはない……が、身体に違和感があった。
「能力が……使えない?」
「魔力の流れを見出すアイテムを使わせてもらいました」
ステータスを見ることも、淫魔の力も使えない。
というよりも上手く発動できないというか。
「レックやカットルのように魔力操作が上手なら対策できるのですが、やはりその能力は付け焼き刃のようですね」
「クソ、最初からこれが狙いか。意地でもステータスを見られたくないようだな」
「違いますよ、本番はこれからです、ふふ」
そういうと、ライは無能になった俺の前に立つ。
拳を前に構え来たるべき攻撃に備えた。
完全に失敗した、最初から手の平の上で転がされていたのだ。
何とかしてここから逃げる、もしくは拳一つで戦うか。
どちらにしろ勝率が低い。絶望的な状況だ。
「苦虫をすり潰した顔、素敵です」
「……」
「ですが、そんな相棒に大サービス♡」
「えッ……な、んで」
警戒する俺に対し、ライは予想外の行動に出た。
なんと自らローブを脱ぎ去り、裸体を晒したのだ。
淫魔の力は人間に対して絶大な効果を発揮する。
勿論、対策することは可能だがメメの存在を知らないとなると俺が淫魔の力を使えることも知らない筈。
リスクが高いか? しかし、ここで動かなければ……どうする。
「まだ何か作戦を考えているのですね、貴方は」
「……そうだ、お前の言う通り紛れもない好機だからな」
「隠すつもりはないと」
「そっちこそ、そろそろ目的を言っても良い頃だろう?」
「私は質問しに来ただけ、でも……これからの予定くらいは伝えておきましょうか」
「俺をどうやって殺すか教えてくれるのか」
「あ、あははは、あははッ」
俺の言葉に彼女のは不自然に笑う。
表情は見えないが、こんな笑い方今まで聞いたことがない。
まるで悪魔のように邪悪で、含みのある。
背中から伝わる雰囲気は冷たく、そして鋭い。
「貴方を殺す方法なんて、簡単過ぎて教えるまでもないですよ」
「どういう意味だ」
「私が考えているのはそれから。だって、あの4人を勇者様の下に戻すわけにはいかないでしょう?」
「……アイツらをどうする気だ」
「そうですね。皆、いい身体をしているでしょう?」
「お前、まさか……」
「賢者会って知っているでしょう?」
「あぁ、当然だ。賢者達の叡智を集めたギルド直下の団体だろう」
俺達が集めた情報というのは全てそこに報告する義務がある。
そうすることで様々なパーティー間で魔族の情報を共有し攻略を容易するのだ。
実際に知っているのはここまで。
賢者会自体の詳細を知っているのは、各パーティーに配属された賢者だけ。
……けれど、悪い噂は聞いたことがある。
今や賢者会はギルドのお偉いさん方の天下り先。
本物の勇者がいなくなって移行、腐敗の一途を辿っているとか。
「彼処の大賢者の人達、とっても意地悪なのですよ。本当に欲しい情報は隠してしまう」
「……だから?」
「少し賄賂を差し出せば、気に入ってただけるかと思いまして」
「お前、自分の仲間を売るつもりか!」
「カタリナは若い人に人気が出るでしょう? レックとカットルはマニアなお爺様達に、カーラは……一番の中古商品ですし、特殊なプレイでも受けてもらいますか」
「テメェッ!!」
「おっとっと、あっとっと」
仲間を仲間と思わない言動に怒りが吹き上がり、立ち上がった。
同時にライも立ち上がり、ピタリと背中を合わせる。
何が何でも俺にステータスを見せないつもりだ。
「自分の仲間をなんだと思ってんだ!」
「言えた立場じゃないでしょう? ケイオスだって駒にしているじゃないですか」
「違う! 俺は……ぐッ、違う!!」
「あ~でも、そうだそうだ、よく考えれば貴方を逃がして上げても面白いかも」
「引き渡せと言うのか、あの4人を」
「自己保身に走り生きがいを失った男の末路、面白そうですよね?」
コイツ、コイツ、コイツ!!
自分の利益と暇つぶしの為に、仲間を売るって言うのか。
駄目だ、絶対に俺が負けるわけにはいかない。
再確認させられた、退路はない、戻れば全員が不幸になる。
……いや、もう一つ選択肢はある。
カーラの言う通り、逃げるのだ。
道のりは険しいだろうが、それは今も同じこと。
落ち着け、怒りは判断力を鈍らせる。
選択肢を増やし最善策を探せ、今までやってきたように──
「あッ、でも特別にカーラだけは上げましょう。あんな奴隷育ちの売女、汚いし、やっぱりい~らない」
「──ッ!! この、クズが!!」
その言葉が一気に血を沸騰させる。
許せない、俺のカーラをそんな風に言うなんて。
俺は背中を付けたまま、ライの腕を握りしめる。
同時に、淫魔の術式を発動した。
レック&カットル戦の途中、新しく手に入れた力『能力解剖《スキルライティング》』。
ステータスをチェックすると同時に、どのような術式で能力が発動するか見えるようになった。
自身で可能な範囲であれば、同じように発動させることができる。
今、俺に備わっているのは『淫夢』『淫紋』。メメの能力だ。
「お前をここで堕とす! 覚悟しろ!」
「堕とす? いきなり腕を掴んで口説くつもりでしょうか?」
「今に分かるさ」
淫夢を発動させればこっちの物だ。
流石のライも夢の中では俺に服従せざるを得ない。
それからゆっくりとステータスを確認し、攻略していけばいい。
さぁ、堕ちろ、夢の中へ……淫夢へ。
「……ッ、何故だ……」
発動、しない!? 夢の世界へ行くことができない。
違う、発動はしていると思う。感覚で分かる。
けれど、この女を淫夢の中へ引っ張っていくことができないのだ。
どういうことだ、メメの事は知らないはず。
俺が淫魔の力を使って仲間に引き入れていることも。
対策されている可能性は低いのに、どうして。
「へぇ、ケイオスは新しい力を使えるようになったのですね。これは淫魔ですか」
「どうして……どうして効かないッ!」
「さぁ、何故でしょうね。貴方こそ、どうして淫魔の術を?」
「それは……」
不味い、こちらの手の内がバレてしまった。
ライの反応を見るに……いや、分からない。
飄々としていて掴むことができない。
これが誘いか本音か、クソ、冷静になれ、まだ終わりじゃない。
「こちらも秘密だ、殺されたって答えるつもりはない」
「ふ、あはッ、ええ~ケイオス……貴方は本当に、私の想像を凌駕してくれますね」
ん? どういうことだ、ライの雰囲気がまた変わった?
無邪気な子どものような声色で語り掛けてくる。
「まさかこんな風に育ってくれるとは、驚きです」
「自分のお陰みてーな言い方はやめろ」
「正直、今の私は勇者様よりも貴方に興味があります」
「……だからどうした、仲間にでもなりたくなったか?」
「けど、素直に従うつもりはありません、テストしましょう」
「テスト……ぐッ!?」
会話に気を取られているとライは反対の腕を掴んできた。
腕から熱が染み渡り、直ぐに元の感覚が戻ってくる。
痛みはない……が、身体に違和感があった。
「能力が……使えない?」
「魔力の流れを見出すアイテムを使わせてもらいました」
ステータスを見ることも、淫魔の力も使えない。
というよりも上手く発動できないというか。
「レックやカットルのように魔力操作が上手なら対策できるのですが、やはりその能力は付け焼き刃のようですね」
「クソ、最初からこれが狙いか。意地でもステータスを見られたくないようだな」
「違いますよ、本番はこれからです、ふふ」
そういうと、ライは無能になった俺の前に立つ。
拳を前に構え来たるべき攻撃に備えた。
完全に失敗した、最初から手の平の上で転がされていたのだ。
何とかしてここから逃げる、もしくは拳一つで戦うか。
どちらにしろ勝率が低い。絶望的な状況だ。
「苦虫をすり潰した顔、素敵です」
「……」
「ですが、そんな相棒に大サービス♡」
「えッ……な、んで」
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