【R18】NTR魔王の復讐劇~勇者に蹂躙されたので、パーティーの女全員寝取って絶望させます~

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第一章『格闘家編』

さよならオーガの国

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「というわけで、学者殿たちの意見を元に、この国の政治は二つに分けることにした!」

 語り合い、肉体を重ね合った翌朝、議会の幹部が集まる中でネロは肩を組む。

「このジャマルがオーガ種側の代表だ。私と同じ立場だと思って欲しい!」
「えええええええっ!? わ、わたくしですかっ!?」

 お飾り最高権力者の突然の発言に驚愕する議会員たち、満面の笑みで悪意なく報告するネロ、その場の誰よりも驚き、顔を真緑にするジャマル。

「ネロ殿ぉ? 確かにわたくしは|政(まつりごと)の経験もございますが、規模感が違うというか」
「でもキミの統治していた村は最も強いオーガ種に溢れていたじゃないか!」
「それは土地が湿潤だったおかげで!」
「人間とも共存できていたではないかっ!」
「わたくしの手がいらないほど協力出来ていたというか、むしろわたくしがあまり使い物にならないからで!」

 ネロの体を掴んでゆするジャマル。
 外見には不動のネロを支えに、空中で不恰好な腕立て伏せをしているようにしか見えない。
 心配になる光景に、アルカにこっそり話しかける。

「ジャマルって子は大丈夫なの?」
「あれでもオーガ種の中では最強ですよ。私ともネロとも、個別で繋がりを作ってますし」
「それにしたってあの慌てようじゃ」
「腹を括ると凄いんですよ。蘇生魔術を他者に使えるよう調整するのも大きく貢献してくれましたし」
「そんなしっかり協力してくれたんだ……」
「戦争中に出会えていれば、もう少し抵抗できたかもって思える逸材です。まあ当時は村を守るために全力だったようですが」

 アルカがこんなに褒めるとは、ドルバ達以外で見たことがない。
 復活に加えてネロと戦う力もわけてくれた辺り、非常に協力的なところも踏まえて、今後とも頼りにはなるだろう。

「むりでございますってぇ、ネロ殿ぉ」
「キミならやれるさ! 私でも折らなかったそのツノは飾りかい?」
「飾りじゃないけど重くて肩は凝りますからぁ」
「それは胸に立派なものをぶら下げてるからだろう!」
「こっちとは凝るところが違うんでございます!」

 本当に大丈夫だろうか。
 それは議会の面々も同じようで、さっきまで企みが崩れた悪い顔をしていた彼等が、今では普通に不安の表情を浮かべている。

「代表、急な変革は危険では」
「だがのんびりと時間を待っていられるほど余裕でも無いからな、一昨日この二人を襲ったオーガ達を見て、抑圧による共存は限界と悟った」

 議会員を言いくるめる言葉は、僕とアルカで台本を作っておいた。
 あくまで僕たちの説得ではなく、本人の気づきのみとしなければ、人間側に不要な軋轢が生まれかねないからだ。

「しかしそんなことをして民はどう思うか」
「あ、そこに関してはわたくしに提案が」

 ネロの襟首を掴んだまま手を上げるジャマル。
 彼女は胸元……というよりサラシを巻いた胸の谷間から太い巻物を取り出すと、議会員の前に広げる。

「詳細はここに記してございまするが、まず手始めにこの都を中心に、オーガ種によるオーガ種を取り締まるための警察組織を作ります」
「オーガ種に治安維持を任せると言うのか」
「ネロ殿の代行を、大勢人間を雇ってやるよりは楽でございましょう」
「確かにオーガのほうが力は強いが、従うのか」
「そこはこれまで通り、ネロ殿の威光を傘にさせてもらいまする」

 これまでのジャマルの様子とは違う、しっかりとした説明。
 それもオーガ種を雇う人間側から見たリスクを、人間側の都合で掻い潜っている。

 しかし、この説明だけでは明確な穴がある。
 彼女の実力を図りがてら、意地悪だが質問してみよう。

「人間側はどうなるかな。ネロがトップなのは良いとして、突然オーガ種が国営に関わるのは不安だよ」
「国の成り立ちもあります故、完全な緩和は難しいでしょう。本来は文明と共に進化する価値観ではございまするが、今回は応急手段を使いまする」
「応急手段?」
「世界に不安を抱く者達は、歴史において常に秘密結社のようなものを作ります。そこを利用し、名声とさせていただきます」
「魔王を倒した勇者様達のように!?」

 議会員の一人が、聞き捨てならないことを叫ぶ。
 例え話とはわかるけれども嫌だなぁ。

「その通りでございまする」

 君も君で肯定しないでくれよ。

「ただ違うところは、その中核を担うのは恐らく人間の、残念ながら議会員の者になるでしょう。この場にいるか、いないかはさておき」
「我々を疑うというのか」
「政とはそういうものです。世界が不都合に変われば、また都合の良いものに戻したくなる。為政者にとって安寧ほど甘い蜜はありませぬ」
「そんなの、疑心暗鬼を産むだけだ」
「この程度で惑う信頼を信頼とは呼びませぬ。それにこのような政争で利用されるのは、いつだって弱い民でございまする故」

 茶化せないほどに、刺さる話に変わり始めた。
 叶わない現実と、それでも向かいたい理想の天秤も見つめ、均衡を予測して未来を見ている。
 アルカの言うとおり、これまでとは毛色が違う逸材だ。

「警察組織による施行から結社の誕生まで、長い時間はかからないでしょう。しかし衝突を含め、民の信頼を得る、こちらは半年以上はかかりまする」
「しかし、それで代表の望む国政に切り替えられるのならば、良いのではないか?」

 一人の議会員が呟くが、既に睨み合いは始まっている。
 真面目に国の為を思う者もいるだろうが、彼等の下で、ネロの無知を利用した、オーガ種の弾圧に等しい日々は行われていたのだ。

 しかしそれも、ネロという最強の抑止力兼暴力装置の下で蓋がされている。
 身動き一つ取れない、完全な拮抗状態だ。

「わかってくれただろう、ジャマルの優秀さを」
「……はい。では代表の決定は、後ほど本会議で報告致します」

 広げられた巻物を手に取った一人の議会員が、他大勢を引き連れて部屋を出ていく。
 見送る僕達、扉が閉まり足音が遠のくと、ネロはジャマルの肩に手をかけ告げる。

「じゃあ、この国は任せた」
「……? 私とネロ殿を代表に運営するのでは?」
「表向きはね! 私はしばらくこの二人の手伝いをしようと思う!」
「ゑ?」

 人生で一番、素っ頓狂な声を聞いた。

「なんの冗談ですネロ殿? 役割が逆転しておられまするよ?」
「大丈夫、二人にも話はつけた!」
「嘘でございますよね!? ねぇ魔王様!?」
「適材適所を考えたら、今はこっちにいてくれたほうが良いかなって。必要になったらすぐに来るから」
「さすがにわたくしもそんな都合の良い女ではありませぬよ!?」

 僕の発言に、ある意味当然な返答が来る。
 すかさずアルカは僕に肘をついて寄りかかり、だらけた態度で追撃する。

「でもジャマルのほうが政治も向いてますし」
「あ、アルカ様までっ。ここまであなたの差金ですかっ!」
「次の目的地はネロのほうが向いているという理由ですので、また力を借りに来る時までに房中術に磨きかけておいてくださいね」
「……な、なぜそれを」
「私の味方になって隠し事ができるのはアークス様だけですよ」

 こうしてジャマルの納得が中途半端なうちに、オーガの国での目的は果たされた。
 ……房中術って、なんだろう。

 *

 議会員達への宣誓を終え、僕たちはネロの部屋に訪れる。
 目的は一つ、次の国へ行く転移魔術のためだ。

「確保できる広い部屋といったら、私の部屋しかなかったものでね」
「……凄い匂いですね。どれだけ乱れたんですか」
「僕は一回しかイかなかったよ」
「じゃあこの匂いは」
「仕方ないだろう! こんなに私が弱いなんて知らなかったんだ!」

 顔を赤らめるネロに、アルカはジトっとした情念の視線を送る。
 ……ちょっとエロいな、段階を踏んでいればこのシチュエーションだけでイケる気がする。

 だが別にここからセックスに移行することはなく、準備のために全員で不必要な物を部屋の隅に寄せる。
 転移に巻き込まないための措置だ。

「ところでアルカ、次はどこに行くの?」
「前に言っていた二つ目、魔械城です。今は機械族の国ということになっていますが」
「いきなり? 久しぶりに帰れて嬉しいけど」

 魔械城とは、かつて僕たちが戦いの拠点としていた場所であり、生物が一切生息していない広大な荒野全土に作った巨大城砦だ。
 城自体がアルカの研究機関兼、機械族の創造される場所になっている。
 そして何より、アルカが命を落とした場所だ。

「大丈夫ですよ、私が復活した場所でもありますから」
「そうなんだ、それなら」
「待て。機械族の国ということは、治めているのは盗賊のはず。正直に言って、彼女にはあまり良い印象は無いが」

 基本人当たりの良いネロが、異様に警戒している。
 最強の彼女が言うなんて、厄介なのだろうか。
 疑問が解決しないうちに、周囲に光が集まってくる。

「正直、ネロさんがここまで協力的じゃなかったら、変えようと思っていました」
「私が?」
「はい。現状、あなた以上の抑止力はいませんから」

 僕とネロの手を取るアルカ。
 次の瞬間、視界は真っ白に包まれた。

 *

「残念だったね。アンタの構築した魔械城のシステムは、82%掌握した」

 視界が晴れるより早く、子供っぽく、しかし低い声が聞こえる。

 視界が晴れ、鉄で覆われた箱のような部屋にたどり着く。
 部屋の一面には、壁を埋め尽くすほど設置された制御盤と投影魔術による映像が、青白い光を放っている。
 暗い光を背に立つのは、二つ分のシルエット。

 片方は決戦の日に見た鷹の視線を持つ、猫耳のような帽子を目深に被り大きな椅子に腰掛ける、やたら厚着の少女。

「ようこそ、ボクの城へ。アンタ達に紹介してあげるよ……いや、もう知ってるか」

 もう一人。青い一対の巻き角と濃紺の髪、群青色の肌と腰から生えた黒い翼、尻尾。
 メタル装飾で輝く似合わない純白のコートを纏い、奇妙な赤黒い首輪を装着し、背中に大剣を背負った、黄金色の瞳を輝かす青年。

「ドルバ、どうしてそこに……!?」

 少女の横で静かに佇む彼の姿に、驚嘆する。
 だがドルバは返答せず、こちらに鋭い視線を向け告げる。

「アークス……テメェ、どこに目ェ付けてんだ」
「はっ!?」
「見るべきはオレじゃなくて、足元のアルカだろうが」

 指摘され、息を呑み、視線を下げる。
 そこにはドルバと同じ首輪をつけられ、地面に倒れ伏せたアルカの、苦しそうな姿。

「ッ、ヒュ……ヒュッ……ケホ……」
「アルカッ! お前たち、何をしたッ!」
「約束を果たしてもらっただけ。戻って来たら人質になるっていう、献身的な約束の……ね」

 地を這うような低い声で答えてくる少女。
 彼女からは、哀しみ以外の一切の感情を、感じ取れなかった。
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