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第一章『格闘家編』
格闘家を堕とせ
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夜も更け、擬態を解いてそらをとび目指すのは、街の中心にあるネロの活動拠点。
最も道幅が広い街道に面した最上階の一室が、夜更けにも関わらず一部屋だけ明るい。
恐らくここだろう、あたりをつけて窓をノックし、呼びかける。
「ネロさん、起きていますか?」
少し時間を置き、カーテンが開く。
窓から覗く古めかしく荘厳な室内に、昼間とは印象の違う、女性的で可愛らしさのあるネグリジェ姿のネロが、伏目がちに立っていた。
「お互い眠れないようですし、少し話しま——」
言いかけの言葉を潰すように、窓は無慈悲に閉まる。
「ちょ、ネロさん!? ネロさん!」
呼びかけながら再び窓をノックする。
暫くすると今度は勢いよく開き、ネロが飛び出してくる。
「今何時だと思ってるんだ!」
「あ、ごめん。近所迷惑だよね」
「この辺りは私以外住んでいないけれど、でも見られたらどうする……その、淫魔と間違えられたら」
「まあ実際淫魔の力しか使えないし」
「そういうのはいい! 全く……入れ」
不機嫌なネロに促され、窓から室内に入っていく。
部屋の荘厳さとは裏腹に、家具は大きなベッド以外かなり簡素にまとめられている。
そして部屋中には、異様に甘ったるい粘り気のある匂いが立ち込めていた。
「残念だが、客人をもてなすお茶なんかはない。水でいいか」
「気にしなくていいのに」
「そうもいかんだろう」
水差しから陶器の器に水を注ぎ、渡してくるネロ。
それに一口唇をつけていると、彼女は大きなベッドに腰掛け、自分の横を手でポンポンと叩く。
「まあ、座れ。私も話したいことがある」
「ありがとうございます」
「あとその、もう敬語はいい。既にたまに崩れているし」
「なら改めて。ありがとう、我儘を聞いてくれて」
腰掛けながら感謝を述べるが、返事はない。
言葉には表せない表情でもじもじと指遊びをする彼女は、間を置いて語りかけてくる。
「キミの作戦は完璧だった。いつの間にかかけられていた感覚増大で、目を瞑った瞬間にキミの気配が闘技場全体から感じた」
「うまくいっていたようですね」
「催淫に魅了、完璧なタイミングだった。敢えて言うなら、増大した感覚にすぐに適応して、キミの気配を絞り込めたら」
「まあ結局負けちゃいましたけどね」
「……ダーリンくん」
オチをつけるように告げると、ネロは不服さを隠さずに返してくる。
「どうしてトドメを刺さなかった? あの尾なら、命を奪えていたかもしれないぞ」
「必要ないから」
「キミの目的は復讐だろ、なら私は殺されても仕方ない立場のはず」
目を合わせてくれることはない。
恥ずかしがっているというより、単純に疑問が拭えないのだろう。
「違うよ。僕の目的は変わらず、魔族から迫害を無くすことだから」
「じゃあどうしてここに来たんだ。勇者に宿った『天使の加護』を消すために、私たちを殺そうというのではないのか?」
「ちょっと違うかな。もう一度勇者と戦わなきゃいけないのは、通過点として必要だからだし」
「でも加護を無くすには、私達をどうにかしなければ」
ぐるぐると話題が回り始める。
僕にとっては本題に近いが、それより先に話したいことがある。
「ネロ。確かに僕は別の目的でここに来たけど、最初がこの国で良かったと思う」
「どうして」
「君の正義が一線を超える前に止められたから」
「……私は殺しだけはしない」
「君自身はね。でも、君の正義が誰かを殺すかも、既に殺しているかもわからない」
訝しんだ表情を崩さないネロに、準備しておいた情報を投げつける。
「この国のオーガ種の人口推移を見たことはあるかな」
「あるさ、何度も。この国のトップとして当然」
「そのうちの自殺者数は」
「……」
「年齢推移は」
「…………っ!」
正直、ずるいことをしてしまった。
ネタバラシのように、表情をほぐして続ける。
「大丈夫、そこまでパッと出せる政治のトップはそう簡単にいないから」
「そんなことはどうでもいい! あったのか、変化はッ!」
「……微量にね。誤差の範囲ではあるだろうけれど」
答えるが、返事はない。
たとえ誤差だとしても、過ちを犯してしまったかもしれないと言う事実が許せないのだろう。
そんな彼女の反応を見て、僕は息をついた。
「よかった、やっぱり君は一線を超えていないんだ」
「私は、あいつらを追い込んでしまったかもしれないんだっ!」
「そうやって、気づけば思いやれるよね」
「でもッ!」
頑固な彼女の精神が、閾値に達して悲鳴を上げる。
実際、彼女は僕の言葉を止めたのに、そこから続く意見を言わない。
「難しいよね、自分の意見を通すって」
「……認めたくなかった、私もその見落としを知っていたはずなのに」
それは、例え一対一の個人でも、国や同じ志を持つ者を背負う立場でも、変わらない苦悩だ。
「ただ僕は、人間が正解だと思っている迫害を許せなくて、変えるために戦うことになった」
「それで大勢死んで、キミも一度は死んだんだろう」
「だからキミには、踏みとどまってほしいんだ」
「どうして」
再び尋ねられる。
だが、その「どうして」が僕の願いに向けたものでは無いことはわかる。
なら答えるのは簡単だ。
「僕の場合、その線を超えてしまいそうになったんだ」
「今の印象じゃ、そんな冷徹には見えない」
「止めてもらえたからね、仲間たちに。おかげで自分の醜悪さに気づけたよ」
どこまでも反則的な説得だ。
今の文明レベルじゃどうしようもない、ロジックエラーな議題。
それに漬け込んだネロの信念への揺さぶり。
〆に身の上を利用した同情誘い。
アルカは彼女をちょろいと言ったが、とんだ見落としだ。
自分の正しさに雁字搦めにされた相手には、全力全開の、当たるかもわからない感情論に訴えかけるより有効策は無いのだから。
「一度は自軍にも敵軍にも死者が多いから、命を軽視しようとした。そんな男が、好きな子を大切にできると思う?」
「まさか、ハニーちゃんを誘えなかったのは」
「……本当に、どこまでも情けないよ」
実際は長い付き合いなだけあって、探せばチャンスはいくらでもあった。
だが決定的に手を引いてしまったのは、戦争が本格化し結果的に心が最も近づいたのに、自らのその心を疑ってしまったから。
「復活して、アルカと体を重ねられたのは奇跡だった。君に同じ轍を踏んでほしく無いと思うくらい、まだ自分を許せていないから」
「……だけどどうすれば良いのかわからない。自分の考えは正しいと思っている」
「そのままでいいよ。それで自分の正しさを力で他に強要しなければ、流れる血は減るんじゃ無いかな」
「他の、間違っている奴らは」
「合わない他者は全部悪って繋げたら、ひとりぼっちになっちゃうよ。みんな違うんだから」
「それは嫌だな。この国のみんなは、人もオーガもいい奴らだから」
はにかみながら涙ぐむネロ。
国への愛を皮切りに、彼女は自分に気づきだす。
「私は寂しかったんだ。自分と違う他者に、変に距離を作ってしまって。誰より強くて、誰より他人と違うのに……じゃあどうすれば」
「付き合うよ、寂しさを埋めるための関係構築くらい」
「……それなら、甘えようかな」
安心したように笑ったネロは、そのまま僕の肩に頭を寄せてきた。
……うまくいった、のか?
後半は真面目に話しすぎて、ネロを堕とすという目的をほぼ忘れていた。
自分の膝に手を置いたまま、流れる長い沈黙。
不意にネロの手が僕の足に置かれ、ぎゅむっとつねられる。
「痛゛ッ」
「す、すまん! 強すぎた!」
「大丈夫……どうしたの」
「いや、そのだな……」
頬をかいた彼女は、視線を逸らし顔を赤ながら呟く。
「据え膳、だぞ」
「……ちょっと、待ってくれないかな」
わからない……アルカの時もそうだったけど、どうしてうまくいったのかわからない。
そうですか、で押し倒す。は絶対違う。
既に関係構築が終わっているアルカと、これからのネロじゃ、あまりに違いすぎる……!
脳内の苦悩はどれだけ時間を食ったのかわからない。
そのせいでネロはため息をついてしまう。
だが続けて、彼女はより顔を赤らめながら続ける。
「殺さないなら、するしかないだろう。『天使の加護』の契約は、私達七人の処女を繋ぎとしているのだから」
「え、そうなの?」
「そうだぞ。完全解除の条件は『全員の処女喪失』と『勇者の絶望』だと、聖女様が話していた」
明かされる意外な真実に、思わず感心してしまう。
解除条件を推理しきれていなかったアルカだが、奇しくも作戦が正攻法になっているとは思わなかった。
「それに……キミから仕掛けてきたんじゃないか」
「えっ?」
「忘れたのか、私と戦っている時」
言われて記憶を巻き戻す。
戦闘中は必死で、どう動いたかは正直曖昧にしか覚えていない。
感覚増大でダメージと最後の撹乱。
そこに導くため、魅了や催淫で……ん?
「…………キミのせいだぞ。知ってることを頼りに、お、オナニーというものをしてみたが、ぜんぜん治らないじゃないか」
「じゃあこの、部屋に残ってる生臭いなかに甘酸っぱさのある香りは」
「言うなぁっ! 匂いで余計切なくなるから、滅多に使わない香水で誤魔化したんだっ!」
「へ、へぇ……」
カミングアウトしなくてもいい事を、ボロボロと口にしていく。
香水で誤魔化そうとするほど、エロい匂いが充満した部屋で、あんな真面目な話をしていたのか……なんかすごく興奮してきたな。
「ま、魔王……その、大きくなってきてるぞ」
「ごめん、今までのシチュエーションが反転して、一気にエロさが増したからつい」
「何がつい、だ。全く」
さっき足をつねった手を、大きくなった僕の股間に沿わせ、ぎこちなく撫でるネロ。
徐々に呼吸を荒げながら、彼女はささやく。
「寂しさを埋める手伝い、してくれるんだよな」
「……うん」
「このままじゃ、切なくて寂しすぎて、一人では眠れそうにない」
「じゃあ、付き合うよ」
「……感謝するよ」
ネロの言葉を聞き届け、全神経を集中し、不快な思いをさせないように、彼女をゆっくりとベッドに押し倒した。
最も道幅が広い街道に面した最上階の一室が、夜更けにも関わらず一部屋だけ明るい。
恐らくここだろう、あたりをつけて窓をノックし、呼びかける。
「ネロさん、起きていますか?」
少し時間を置き、カーテンが開く。
窓から覗く古めかしく荘厳な室内に、昼間とは印象の違う、女性的で可愛らしさのあるネグリジェ姿のネロが、伏目がちに立っていた。
「お互い眠れないようですし、少し話しま——」
言いかけの言葉を潰すように、窓は無慈悲に閉まる。
「ちょ、ネロさん!? ネロさん!」
呼びかけながら再び窓をノックする。
暫くすると今度は勢いよく開き、ネロが飛び出してくる。
「今何時だと思ってるんだ!」
「あ、ごめん。近所迷惑だよね」
「この辺りは私以外住んでいないけれど、でも見られたらどうする……その、淫魔と間違えられたら」
「まあ実際淫魔の力しか使えないし」
「そういうのはいい! 全く……入れ」
不機嫌なネロに促され、窓から室内に入っていく。
部屋の荘厳さとは裏腹に、家具は大きなベッド以外かなり簡素にまとめられている。
そして部屋中には、異様に甘ったるい粘り気のある匂いが立ち込めていた。
「残念だが、客人をもてなすお茶なんかはない。水でいいか」
「気にしなくていいのに」
「そうもいかんだろう」
水差しから陶器の器に水を注ぎ、渡してくるネロ。
それに一口唇をつけていると、彼女は大きなベッドに腰掛け、自分の横を手でポンポンと叩く。
「まあ、座れ。私も話したいことがある」
「ありがとうございます」
「あとその、もう敬語はいい。既にたまに崩れているし」
「なら改めて。ありがとう、我儘を聞いてくれて」
腰掛けながら感謝を述べるが、返事はない。
言葉には表せない表情でもじもじと指遊びをする彼女は、間を置いて語りかけてくる。
「キミの作戦は完璧だった。いつの間にかかけられていた感覚増大で、目を瞑った瞬間にキミの気配が闘技場全体から感じた」
「うまくいっていたようですね」
「催淫に魅了、完璧なタイミングだった。敢えて言うなら、増大した感覚にすぐに適応して、キミの気配を絞り込めたら」
「まあ結局負けちゃいましたけどね」
「……ダーリンくん」
オチをつけるように告げると、ネロは不服さを隠さずに返してくる。
「どうしてトドメを刺さなかった? あの尾なら、命を奪えていたかもしれないぞ」
「必要ないから」
「キミの目的は復讐だろ、なら私は殺されても仕方ない立場のはず」
目を合わせてくれることはない。
恥ずかしがっているというより、単純に疑問が拭えないのだろう。
「違うよ。僕の目的は変わらず、魔族から迫害を無くすことだから」
「じゃあどうしてここに来たんだ。勇者に宿った『天使の加護』を消すために、私たちを殺そうというのではないのか?」
「ちょっと違うかな。もう一度勇者と戦わなきゃいけないのは、通過点として必要だからだし」
「でも加護を無くすには、私達をどうにかしなければ」
ぐるぐると話題が回り始める。
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「ネロ。確かに僕は別の目的でここに来たけど、最初がこの国で良かったと思う」
「どうして」
「君の正義が一線を超える前に止められたから」
「……私は殺しだけはしない」
「君自身はね。でも、君の正義が誰かを殺すかも、既に殺しているかもわからない」
訝しんだ表情を崩さないネロに、準備しておいた情報を投げつける。
「この国のオーガ種の人口推移を見たことはあるかな」
「あるさ、何度も。この国のトップとして当然」
「そのうちの自殺者数は」
「……」
「年齢推移は」
「…………っ!」
正直、ずるいことをしてしまった。
ネタバラシのように、表情をほぐして続ける。
「大丈夫、そこまでパッと出せる政治のトップはそう簡単にいないから」
「そんなことはどうでもいい! あったのか、変化はッ!」
「……微量にね。誤差の範囲ではあるだろうけれど」
答えるが、返事はない。
たとえ誤差だとしても、過ちを犯してしまったかもしれないと言う事実が許せないのだろう。
そんな彼女の反応を見て、僕は息をついた。
「よかった、やっぱり君は一線を超えていないんだ」
「私は、あいつらを追い込んでしまったかもしれないんだっ!」
「そうやって、気づけば思いやれるよね」
「でもッ!」
頑固な彼女の精神が、閾値に達して悲鳴を上げる。
実際、彼女は僕の言葉を止めたのに、そこから続く意見を言わない。
「難しいよね、自分の意見を通すって」
「……認めたくなかった、私もその見落としを知っていたはずなのに」
それは、例え一対一の個人でも、国や同じ志を持つ者を背負う立場でも、変わらない苦悩だ。
「ただ僕は、人間が正解だと思っている迫害を許せなくて、変えるために戦うことになった」
「それで大勢死んで、キミも一度は死んだんだろう」
「だからキミには、踏みとどまってほしいんだ」
「どうして」
再び尋ねられる。
だが、その「どうして」が僕の願いに向けたものでは無いことはわかる。
なら答えるのは簡単だ。
「僕の場合、その線を超えてしまいそうになったんだ」
「今の印象じゃ、そんな冷徹には見えない」
「止めてもらえたからね、仲間たちに。おかげで自分の醜悪さに気づけたよ」
どこまでも反則的な説得だ。
今の文明レベルじゃどうしようもない、ロジックエラーな議題。
それに漬け込んだネロの信念への揺さぶり。
〆に身の上を利用した同情誘い。
アルカは彼女をちょろいと言ったが、とんだ見落としだ。
自分の正しさに雁字搦めにされた相手には、全力全開の、当たるかもわからない感情論に訴えかけるより有効策は無いのだから。
「一度は自軍にも敵軍にも死者が多いから、命を軽視しようとした。そんな男が、好きな子を大切にできると思う?」
「まさか、ハニーちゃんを誘えなかったのは」
「……本当に、どこまでも情けないよ」
実際は長い付き合いなだけあって、探せばチャンスはいくらでもあった。
だが決定的に手を引いてしまったのは、戦争が本格化し結果的に心が最も近づいたのに、自らのその心を疑ってしまったから。
「復活して、アルカと体を重ねられたのは奇跡だった。君に同じ轍を踏んでほしく無いと思うくらい、まだ自分を許せていないから」
「……だけどどうすれば良いのかわからない。自分の考えは正しいと思っている」
「そのままでいいよ。それで自分の正しさを力で他に強要しなければ、流れる血は減るんじゃ無いかな」
「他の、間違っている奴らは」
「合わない他者は全部悪って繋げたら、ひとりぼっちになっちゃうよ。みんな違うんだから」
「それは嫌だな。この国のみんなは、人もオーガもいい奴らだから」
はにかみながら涙ぐむネロ。
国への愛を皮切りに、彼女は自分に気づきだす。
「私は寂しかったんだ。自分と違う他者に、変に距離を作ってしまって。誰より強くて、誰より他人と違うのに……じゃあどうすれば」
「付き合うよ、寂しさを埋めるための関係構築くらい」
「……それなら、甘えようかな」
安心したように笑ったネロは、そのまま僕の肩に頭を寄せてきた。
……うまくいった、のか?
後半は真面目に話しすぎて、ネロを堕とすという目的をほぼ忘れていた。
自分の膝に手を置いたまま、流れる長い沈黙。
不意にネロの手が僕の足に置かれ、ぎゅむっとつねられる。
「痛゛ッ」
「す、すまん! 強すぎた!」
「大丈夫……どうしたの」
「いや、そのだな……」
頬をかいた彼女は、視線を逸らし顔を赤ながら呟く。
「据え膳、だぞ」
「……ちょっと、待ってくれないかな」
わからない……アルカの時もそうだったけど、どうしてうまくいったのかわからない。
そうですか、で押し倒す。は絶対違う。
既に関係構築が終わっているアルカと、これからのネロじゃ、あまりに違いすぎる……!
脳内の苦悩はどれだけ時間を食ったのかわからない。
そのせいでネロはため息をついてしまう。
だが続けて、彼女はより顔を赤らめながら続ける。
「殺さないなら、するしかないだろう。『天使の加護』の契約は、私達七人の処女を繋ぎとしているのだから」
「え、そうなの?」
「そうだぞ。完全解除の条件は『全員の処女喪失』と『勇者の絶望』だと、聖女様が話していた」
明かされる意外な真実に、思わず感心してしまう。
解除条件を推理しきれていなかったアルカだが、奇しくも作戦が正攻法になっているとは思わなかった。
「それに……キミから仕掛けてきたんじゃないか」
「えっ?」
「忘れたのか、私と戦っている時」
言われて記憶を巻き戻す。
戦闘中は必死で、どう動いたかは正直曖昧にしか覚えていない。
感覚増大でダメージと最後の撹乱。
そこに導くため、魅了や催淫で……ん?
「…………キミのせいだぞ。知ってることを頼りに、お、オナニーというものをしてみたが、ぜんぜん治らないじゃないか」
「じゃあこの、部屋に残ってる生臭いなかに甘酸っぱさのある香りは」
「言うなぁっ! 匂いで余計切なくなるから、滅多に使わない香水で誤魔化したんだっ!」
「へ、へぇ……」
カミングアウトしなくてもいい事を、ボロボロと口にしていく。
香水で誤魔化そうとするほど、エロい匂いが充満した部屋で、あんな真面目な話をしていたのか……なんかすごく興奮してきたな。
「ま、魔王……その、大きくなってきてるぞ」
「ごめん、今までのシチュエーションが反転して、一気にエロさが増したからつい」
「何がつい、だ。全く」
さっき足をつねった手を、大きくなった僕の股間に沿わせ、ぎこちなく撫でるネロ。
徐々に呼吸を荒げながら、彼女はささやく。
「寂しさを埋める手伝い、してくれるんだよな」
「……うん」
「このままじゃ、切なくて寂しすぎて、一人では眠れそうにない」
「じゃあ、付き合うよ」
「……感謝するよ」
ネロの言葉を聞き届け、全神経を集中し、不快な思いをさせないように、彼女をゆっくりとベッドに押し倒した。
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