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◇第1章

【48】アレクセイとの謁見 - 対処 /《アレクセイ視点》

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「それでは……いかが致しましょう? 私がクランシュタイン邸へ潜入してきましょうか?」
『いや……クランシュタイン家当主は勘がいいし、それに神が相手となるとお前の隠密魔法もさすがにすぐ気づかれてしまう可能性が高い』


 部屋に入ってきた彼はすぐ天井に視線をやっていたし、きっとはじめからテディーに気づいていたはずだ。


(それをクランシュタイン嬢に伝えるような素振りはなかったけれど……)


 彼女らの関係性がいまいちよくわからないが、今は話を進めよう。


『ま、オツキサマを探るなら、同じオツキサマが適任だよね』
「……ねえ、それってもしかして、ワタシに探りに行けって言ってるの?」


 今日も僕の文字をずっと追っていたらしい。

 暗がりから狐耳としっぽをはやした艶やかな金髪の女性がだるそうに現れた。
 紫色の瞳がじっと見つめてきたため、次の文字を映し出す。


『やあ、クロエ。ずっと隠れてさせてしまってごめんね』
「別にいいわよ。ワタシ、面倒事はキライだし、ノイン様にも会いたくなかったし……」
『あれ? クロエはノインのこと知っているの?』
「え!? べっ別に!? 厄災の神ってことは知ってるけど……それ以外は別にっ!?」


 明らかな動揺。わかりやすくて本当に助かる。
 まあ、二人は同族の神様ってことになるから互いを知っていても、そう不思議なことではないか。


(けれど……『ノイン様』か……階級的には彼の方が上なのかな?)


 そんなことを考えながら彼女に頼む。


『そう。なら、別にいいんだけど。それよりお願いできないかな? クロエ』
「イヤよ。そんなめんどくさいこと」
『どうしても?』
「イヤったらイ・ヤ! それにどうせ今からこの子にも別の仕事頼むんでしょう? ワタシがいなくなったらアレクセイの側に誰もいなくなっちゃうじゃない! ワタシはアレクセイを守るためにここにいるわ」
『大丈夫だよ。もうすぐあと二人のうち、どっちかは帰ってくるだろうし』


 微笑んでみるが、ツンとそっぽを向かれてしまう。


「でもイヤよ。ワタシはアレクセイの側にいたいの!」
『でも……君がやってくれないと僕困っちゃうんだけどな……頼れるの、クロエしかいないんだけどなぁ』


 必死に瞳で彼女に訴える。
 顔を背けていた彼女だったが、チラリとこちらを見ると途端に変な声を上げる。


「うっ……その顔は卑怯よ!」


 あ、もう少し粘ればいけそうだ。


『クロエがどうしても行きたくないっていうなら……心苦しいけどテディーに頼むしか……』
「……あーもうっ! わかったわよ! アレクセイの鬼! 悪魔! 顔かっこよすぎぃい~~!!」


 大きな声を上げながら彼女は再び暗がりに消えた。


『ふう……クロエが行ってくれたからテディーには別の仕事を頼もうかな』
「クロエ様もよく毎回引き受けてくださいますね」
『ま、クロエは僕の顔に弱いからね』


 僕がそう返すと、テディーは呆れたように小さく息を吐いた。


「……相変わらず不思議な神様でいらっしゃいますね」
『ふふ。でもこういうときに扱いやすくて助かるよ。じゃあ……とりあえずテディーには今日馬車に細工をした者の処理を頼むよ。目星くらいはついてるんだろう?』
「はい。お任せください。それでは一度行って参ります」
『うん、お願いね。あっ! 今日の彼女の映像、もう一回流してから行ってくれる?』


 テディーは軽く返事をし、天井にそれを映し出し再生してから部屋を後にした。
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