国王になりたいだなんて言ってないby主

らいち

文字の大きさ
上 下
59 / 83
様々な問題

見習士官ケリー

しおりを挟む
 ゲームセンターの後、一行は行き先が無くなってしまった。
 ファミレスも、百貨店も、クェーサーを見るなり退店するよう言われてしまったのだ。仕方なくコンビニで軽食を買い、4人は肩を落とした。

「人もあやかしも同じ反応かよ、いいじゃねぇかロボットが店に入ったって」
「まぁ店側の対応も分からなくはないよ、クェーサーは良くも悪くも目立つし、トラブルに繋がりかねないしね」
「すみません、私のせいでご迷惑を」
「クェーサーは何も悪くないじゃろう。謝る必要はないぞ」

 サヨリヒメはクェーサーを撫で、おにぎりの封を開けた。
 御堂と救も同様に、軽食に手を付けた。クェーサーはそれを眺めるしか出来ない。

「見慣れたもんだけど、本当に人とあやかしって共存してるんだな。街を見渡す限り、あやかしと人が半々くらいで歩いてら。なんだって急にあやかしが見えるようになったんだか」
「羽山の者達は、わらわ達を認知したからの。わらわ達の擬態は、あやかしの存在を認知している者には通じぬのじゃ」
「じゃあ今、私と先輩の親を見たら、本当の姿が分かるって事か」

 御堂と救は人とあやかしのハーフだ。それを教えられた時、多少は驚いたものの、2人ともすんなりと受け入れてしまった。

「親があやかしと知っても、落ち着いているのですね」
「んーまぁ、親は親だしな。ガキの頃ならともかく、30手前になって聞いても動じやしないさ」
「むしろ自分のルーツを知るいいきっかけになったよ。この天才的な頭脳があやかし由来ならば納得だ」
「強いのですね」
「まぁ、この程度なんて可愛い位の目に遭い続けたからね。それに比べれば軽いさ」

 羽山工業の社員たちも、2人がハーフだと知っても「あっそ」程度の反応しかなかった。羽山のおおらかな社風もあるのだろうが、懐の深い者達である。

「あの、ちょっといいですか?」

 子供連れの主婦が声をかけてきた。男の子はキラキラした目でクェーサーを見上げ、そわそわしている。
「この子と写真を撮ってもいいですか? あと、もしよければTwitterに上げたいんですけど」
「構いません。ボク、おいで」

 クェーサーは男の子を抱き上げた。ちょっとしたサービスでヒーローっぽいポーズを取ってあげると、彼は興奮した様子でお礼を言ってくれた。

「物凄く喜んでたな、よかったじゃねぇか」
「彼の服がヒーローシリーズでしたから、その着ぐるみと勘違いしたのでしょう。喜んでくれたのなら幸いです」
「行動はいいけど、発言は気を付けようね。着ぐるみは夢壊すよ」
「気を付けます。それで、どうでしょうか。私は彼の心に、寄り添えたでしょうか」
「出来たと思うぞ。わらわ達が保証する、自信を持て」

 サヨリヒメから太鼓判を押され、嬉しくはある。一部出禁はあったものの、人やあやかし達からもそれなりに受け入れられただろう。
 それなのに、疎外感がぬぐえない。
 むしろ時間が経つごとに、皆との距離が離れていくような気がした。
 なぜ自分はこんなにも孤独を感じている、機械の手を握りしめ、クェーサーはかぶりを振った。

「……体が、重いです。出力、大幅に低下」
「おっと、稼働限界か。そろそろ羽山に戻らないと」

 クェーサーのバッテリーは、羽山工業でなければ充電できない。一行は大急ぎでバスへ向かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

主役の聖女は死にました

F.conoe
ファンタジー
聖女と一緒に召喚された私。私は聖女じゃないのに、聖女とされた。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

因果応報以上の罰を

下菊みこと
ファンタジー
ざまぁというか行き過ぎた報復があります、ご注意下さい。 どこを取っても救いのない話。 ご都合主義の…バッドエンド?ビターエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

処理中です...