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私だけの♡
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結局あの後ご飯を食べる時間が無かったので、昼休みが終わる直前に売店で買ったおにぎりを5時間目の休み時間に頬張っている。元木さんが買ってくれたおかずセットを一緒に突きながら。
「アレー? 篠原さん、元木さんに乗り換えたんじゃなかったの?」
「はあ? まさか! 私はいつでも翔くん一筋よ」
久しぶりに私が翔くんと一緒にいるのを見て、並木さんたちがぞろぞろとやって来た。そして揶揄ってるのか本気なのか、とんでもないことを私に言う。
「ああ、そうだ。みんなに言っておかなくちゃ」
お腹を満たして一息ついたんだろう。お茶をごくごく飲んだ後、翔くんが顔を上げてみんなの方を向いた。
みんなもその言葉に、視線を一斉に翔くんに向けた。
「俺、香子と付き合うことにしたから。な?」
「うん!」
「ええええぇぇぇ~っ!?」
つんざく悲鳴が教室中に響いた。
そして『どういうこと?』というような非難の視線が私に集中する。
「香子のことが好きなんだって、やっと気づいたんだ。だからもう帰りも香子だけと一緒だし、遊びに行くのも香子だけだ」
「嘘……」
キッパリ宣言した翔くんに、みんなは呆然とした表情になった。
ちょっぴり申し訳ない気もしたけど、やっぱり自分の彼氏が別の女の子と遊びに行ったりするのは嫌だから、翔くんの宣言は素直にうれしかった。
そうしてあの日の宣言通り、翔くんは私とだけ一緒に帰るようになった。
当たり前のように一緒にいられるこの関係が嬉しい。
「……なあ、香子。お前元木さんとよく一緒にいた時、どこ行ってたんだよ」
「え?」
ちょっぴり不貞腐れたような声にびっくりして翔くんを見ると、なんだか剥れて拗ねた表情をしている。
何? 今になって。
……もしかして、実はヤキモチ焼いてくれていたとか?
「香子?」
「あ、うん。大したとこに行ってないよ。みんな犬絡みだから」
「……へ?」
「実はね……」
素直になってくれた翔くんのためにも、私も素直に今までのことを包み隠さずに全部話した。
翔くんの彼女になりたくて、ヤキモチ焼いて欲しくて翔くんの傍に行かなくなったこと。そしてそれに全然反応してくれない翔くんに落ち込んでいた時に、元木さんが心配して元気づけようと、あの学校で預かっていた犬を見に連れて行ってくれたこと。
そして私が翔くん一筋だという事に気が付いていたから、自分の弱みだと思い込んでいた犬好きのこともさらけ出すことが出来たんだという事も。
私の説明を聞いていくうちに、翔くんの表情はバツの悪そうな顔に変化していった。
「……ごめんな。本をただすと俺のせいだな」
「…………」
『うん』とも『ううん』とも言えなくて、ちょっと笑って誤魔化した。
だって翔くんが悪いとは言えない。もともと私の片思いだったんだから。
「実は俺も……、香子が俺の所に来なくなってから、ずっとモヤモヤしていた」
「……え?」
初めて聞かされる事実に、驚いて翔くんを見上げた。
翔くんは苦笑して頭を掻いている。
「香子は俺の傍にいるのが当たり前だと思っていたのに、ちっとも俺の傍に来なくなって……、しかも平然としてるように俺には見えてたから。……気になってイライラしたりしてたのに、なんていうか……癪に触って、しかも元木さんとよくいるもんだからあっちに浮気したのかと……」
ボソボソ話す姿はいつもの自信満々の翔くんとは別人のようだ。
だけど、そうさせているのは私なんだよね。
「大好きだよ。ずっとずっとこれからは一緒にいてね」
目いっぱいの笑顔でそう言うと、翔くんは太陽のように明るく笑ってくれた。
「おう、俺も大好きだ。ずっと傍にいろ」
それは長年追い求めていた、私だけの完璧な王子様そのものの笑顔だった。
「アレー? 篠原さん、元木さんに乗り換えたんじゃなかったの?」
「はあ? まさか! 私はいつでも翔くん一筋よ」
久しぶりに私が翔くんと一緒にいるのを見て、並木さんたちがぞろぞろとやって来た。そして揶揄ってるのか本気なのか、とんでもないことを私に言う。
「ああ、そうだ。みんなに言っておかなくちゃ」
お腹を満たして一息ついたんだろう。お茶をごくごく飲んだ後、翔くんが顔を上げてみんなの方を向いた。
みんなもその言葉に、視線を一斉に翔くんに向けた。
「俺、香子と付き合うことにしたから。な?」
「うん!」
「ええええぇぇぇ~っ!?」
つんざく悲鳴が教室中に響いた。
そして『どういうこと?』というような非難の視線が私に集中する。
「香子のことが好きなんだって、やっと気づいたんだ。だからもう帰りも香子だけと一緒だし、遊びに行くのも香子だけだ」
「嘘……」
キッパリ宣言した翔くんに、みんなは呆然とした表情になった。
ちょっぴり申し訳ない気もしたけど、やっぱり自分の彼氏が別の女の子と遊びに行ったりするのは嫌だから、翔くんの宣言は素直にうれしかった。
そうしてあの日の宣言通り、翔くんは私とだけ一緒に帰るようになった。
当たり前のように一緒にいられるこの関係が嬉しい。
「……なあ、香子。お前元木さんとよく一緒にいた時、どこ行ってたんだよ」
「え?」
ちょっぴり不貞腐れたような声にびっくりして翔くんを見ると、なんだか剥れて拗ねた表情をしている。
何? 今になって。
……もしかして、実はヤキモチ焼いてくれていたとか?
「香子?」
「あ、うん。大したとこに行ってないよ。みんな犬絡みだから」
「……へ?」
「実はね……」
素直になってくれた翔くんのためにも、私も素直に今までのことを包み隠さずに全部話した。
翔くんの彼女になりたくて、ヤキモチ焼いて欲しくて翔くんの傍に行かなくなったこと。そしてそれに全然反応してくれない翔くんに落ち込んでいた時に、元木さんが心配して元気づけようと、あの学校で預かっていた犬を見に連れて行ってくれたこと。
そして私が翔くん一筋だという事に気が付いていたから、自分の弱みだと思い込んでいた犬好きのこともさらけ出すことが出来たんだという事も。
私の説明を聞いていくうちに、翔くんの表情はバツの悪そうな顔に変化していった。
「……ごめんな。本をただすと俺のせいだな」
「…………」
『うん』とも『ううん』とも言えなくて、ちょっと笑って誤魔化した。
だって翔くんが悪いとは言えない。もともと私の片思いだったんだから。
「実は俺も……、香子が俺の所に来なくなってから、ずっとモヤモヤしていた」
「……え?」
初めて聞かされる事実に、驚いて翔くんを見上げた。
翔くんは苦笑して頭を掻いている。
「香子は俺の傍にいるのが当たり前だと思っていたのに、ちっとも俺の傍に来なくなって……、しかも平然としてるように俺には見えてたから。……気になってイライラしたりしてたのに、なんていうか……癪に触って、しかも元木さんとよくいるもんだからあっちに浮気したのかと……」
ボソボソ話す姿はいつもの自信満々の翔くんとは別人のようだ。
だけど、そうさせているのは私なんだよね。
「大好きだよ。ずっとずっとこれからは一緒にいてね」
目いっぱいの笑顔でそう言うと、翔くんは太陽のように明るく笑ってくれた。
「おう、俺も大好きだ。ずっと傍にいろ」
それは長年追い求めていた、私だけの完璧な王子様そのものの笑顔だった。
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