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第三章
ますます混乱する心 3
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高科さんの足音が近づいて来た。そしてどうやら私がソファに丸まって寝ていることに気が付いたようで、すぐ傍で足を止める。
高科さんは動く気配がない。どうやら私の事をじっと真上から見ているようだ。
ウソ寝がバレないかと、バクバクと心臓がうるさくなる。それこそ息を潜めて神経を研ぎ澄ませていると、高科さんの気配が少し近づいた。そして溜息が聞こえたかと思ったら、また遠ざかって行く気配。
じっとりと濡れた手のひらの気持ち悪さが気になりかけた頃、また足音が近付いて来た。
「……!!」
ふわりと私の体の上を、暖かく柔らかな物が覆った。毛布だ。
……私のために、私のために取りに行って来てくれたの?
また唇がわなわなと震え出した。だけどそれはさっきのソレとは違い、温かく嬉しいものが湧き上って生じる、幸せな思いから来るものだった。
それでもやっぱり起き上がるのは拙いような気がして。体が震えないように涙がこぼれ落ちないように必死で耐えて、私はタヌキ寝入りを決め込んだ。
そんな私の頭上に、不意に暖かな感触が乗っかった。それは優しく慈しむように、私の頭を何度も何度も往復する。
高科さん……、高科さん、高科さん!
感極まって飛び起きて、名前を呼んで甘えて抱きつきたかった。
だけどもし本当に私がそうしたら、拒絶されそうな気がして怖くて……、結局はずっとタヌキ寝入りのままで押し通すしかなかった。
そしてその内、私の頭を撫でる手が離れていき、足音が遠ざかって行く。そして階段を上る音が聞こえた。
必死でこらえていた涙が、次から次へと堰を切ったように溢れ出した。
変わってなんてない。高科さんは、優しいままだよ。
……どうしたらいいのか、もう本当に分からない。
私は混乱した頭のまま、高科さんが掛けてくれた毛布に顔をうずめ、しばらく動き出すことが出来なかった。
高科さんは動く気配がない。どうやら私の事をじっと真上から見ているようだ。
ウソ寝がバレないかと、バクバクと心臓がうるさくなる。それこそ息を潜めて神経を研ぎ澄ませていると、高科さんの気配が少し近づいた。そして溜息が聞こえたかと思ったら、また遠ざかって行く気配。
じっとりと濡れた手のひらの気持ち悪さが気になりかけた頃、また足音が近付いて来た。
「……!!」
ふわりと私の体の上を、暖かく柔らかな物が覆った。毛布だ。
……私のために、私のために取りに行って来てくれたの?
また唇がわなわなと震え出した。だけどそれはさっきのソレとは違い、温かく嬉しいものが湧き上って生じる、幸せな思いから来るものだった。
それでもやっぱり起き上がるのは拙いような気がして。体が震えないように涙がこぼれ落ちないように必死で耐えて、私はタヌキ寝入りを決め込んだ。
そんな私の頭上に、不意に暖かな感触が乗っかった。それは優しく慈しむように、私の頭を何度も何度も往復する。
高科さん……、高科さん、高科さん!
感極まって飛び起きて、名前を呼んで甘えて抱きつきたかった。
だけどもし本当に私がそうしたら、拒絶されそうな気がして怖くて……、結局はずっとタヌキ寝入りのままで押し通すしかなかった。
そしてその内、私の頭を撫でる手が離れていき、足音が遠ざかって行く。そして階段を上る音が聞こえた。
必死でこらえていた涙が、次から次へと堰を切ったように溢れ出した。
変わってなんてない。高科さんは、優しいままだよ。
……どうしたらいいのか、もう本当に分からない。
私は混乱した頭のまま、高科さんが掛けてくれた毛布に顔をうずめ、しばらく動き出すことが出来なかった。
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